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27:無為無策

ムラマサ達が虚無の脅威を報告し終えた後、wikiでは……

27:無為無策


その夜、カナリは時間の許す限りマジホリをプレイし続け、打ち合わせ通りにアクト4の魔王城内までポータルを取り終えた。

が、彼女の目的は、打倒コウヤである。ここからが本番と言っていい。

彼女のレベルは現在23。コウヤのレベル28に追いつくのはそう難しい事ではない。


(フハハハハ! どうよ! ちょっと本気を出せばこんなもんよ!)


母に隠れて布団の中でノートPCを起動し、サブクエストを全て終わらせ、宝部屋で経験値と装備を荒稼ぎ。

レベル30まで上げた後、満足して眠りに就いた。




その頃、マジホリwikiに激震が走っていた。

wiki管理人であるマジメイジの手で、wikiTOPに大文字で虚無出現の警告が掲載されていたのだ。


彼は調査隊の五人……いや、四人が戻った後、彼らが就寝している間、メンテ明けの火曜朝から早速単身で第四層の調査に出向き、193階で虚無と遭遇していたのだ。

ソーサラーの「瞬間転移」を駆使し、脆い後衛キャラであるにも関わらず、単身くまなく193階を探索し、階段が消滅したままである事を確認。事態の深刻さに気付き、193階~192階間の階段に虚無が辿り着く前に撤退。TOP画面編集に踏み切ったのだ。


これで、総勢200名いるかいないか分からない小さなコミュニティではあったが、少なくともwikiに常駐しているプレイヤーの全てがこの恐るべき謎の脅威の存在を知るに至ったのだ。掲示板は活況を見せ始め、虚無スレのレス数も既に500を越えていた。


昨日の今日で、まだムラマサ達の動揺は収まらない。

カベに出したメールに返事は無く、キャラクターデリートによって受けた心の傷の深さが伺える。

ムラマサ達は本日の調査隊の編成を諦め、野次馬の集まり始めたスレッド内に何か名案は無いかと、逐一書き込みをチェックし続けた。


が、無為。


皆が皆、無責任でいいかげんな書き込みをするばかりで、何の益も無い。

マジメイジは次の階段の消滅を見届けてから撤退すべきだった、などと勇気ある行動に対する無責任な批判まで出てくる始末。

彼らには、四層の奥深くを探索する事がどれだけ難しいのか分かっていないのか。


自分達だからこそ最低限の調査が実行可能だった訳であり、物見遊山に集まってきた多くのプレイヤーにとっては、そもそも第四層は行く事が出来ない場所だ。

彼らは、最初から自分たちには無関係な話で、そのうちトップランカー達がなんとかしてくれるのだろう、としか思っていなかった。

熟練プレイヤーの間からもこれといった妙案は無く、ムラマサ達は火曜の夜を完全に無駄にしてしまった。


何の希望も無く、ダンジョンが下から順に消滅していくという恐怖。

なぜこの恐ろしさが連中には分からないのか。

ムラマサは憤慨しつつも、自分自身も無策でしかなく、ただ溜め息を付くことしか出来ない。


希望は無い。


カベが何も言って来ないという事は、セーブデータのロールバックは無かったのだろう。

個人間チャットを試してみても、「そのプレイヤーは存在しません」と表示される。


開発者フォーラムはとっくに誰もいなくなっていて、何の動きも無い。

公開されているサーバー管理者のメールアドレスに質問を送ったものの、こちらも返信が無い。


もう出来ることが無い。

完全にお手上げだ。


盛り上がるだけは盛り上がっているので、ポップアップ通知はうるさいくらいに鳴り続けている。

もう設定を非通知に変えてやろうか。


と、一つの書き込みに目が止まる。



511 山田マン ****/**/**(火) 22:43:55.78

 そもそも、管理人は存在しているのか?



まさか、と思うのだが、その一文が頭から離れなくなる。

定期メンテ作業は自動化されていて、無人のままでも実行されるだろう。

サーバーマシンが物理的に故障したり、停電が起きたりしなければ、電源が落とされない限り動き続けるだろう。

安くないであろう維持管理費用をずっと負担してくれている開発チーム一同には感謝するばかりだが、サーバー管理者のメールアドレス以外何も個人情報を開示していないのだから、この疑問を問いただす事は出来ない。


運営費用を出している中核メンバー以外となら連絡は取れないだろうか……?


人脈の多いカベは動けそうもない。

キツネはブログ更新で忙しそうだ。

山田マンは真面目で親切だが、人付き合いが極端に悪い。

ブッチーもあの性格だから、ゲーム外のやり取りを殆ど行わない。

仕事があったり、マジホリ歴が浅かったり、他のランカーにもあまり期待はできそうにない。


(俺がやるしかねーか……)


ムラマサは深く溜め息を付くが、今すぐに取り掛かる事は出来ない。

先日サボッた分、今日は仕事を放置しておく訳にはいかない。


(明日だ、明日……)





そして、『はじめまして マジホリRS始めました』スレッドは誰の目にも留まる事なく、外野が次々立てる虚無関係スレッドに押し流され、画面下部へと追いやられていった。





マジメイジは「RSwikiの管理人」で、「RSサーバーの管理人」ではありません。

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