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「それは···
辛いからじゃないの。
熱でフラフラだから横になってたいのよ。
たぶん、早い時間に目が覚めてこの紙をドアノブに巻きつけてたとか?」
「そんなことしなくってもメールでも送ってくればいいのに」
「頭が回らなかったんでしょ。
熱に浮かされてて」
「実はもう部屋でひっそりとお亡くなりになってたりして···」
「えぇ、変なこと言わないでよ···う〜ん、ちょっと行ってみようか。
安否確認」
ということになった。
とにかく先に寺務所に入って荷物を置いてから。今朝はいつものような静かさはなく慌てた始まりになった。
2人は遊海が住んでる部屋に行ってみることになった。
寺務所のドアを開けたらちょうどパートで働いてる七尾三咲がいた。
寺務所に入るところだったらしい。
「おはようございます。
えっ、どうしたんですか?
どこかに行こうとしてますね?」
「おはよう。
えぇ、その通りよ。
繁多くんが熱があって動けないって。
ちょっと様子を見にいくところ」
寺務長からの説明にちょっとびっくり。
こんな暑い時に風邪?
「夏風邪みたい。
長引くし、意外と重かったりする。
『おまえはもう死んでいる』かもよ」
「怖いこと言わないの」と十津川寺務長に言われると黙ってしまう鳥谷部姉さん。
年下なんだけど遊海にだけは厳しい。
朝の挨拶と今日の予定を訊きにきた七尾さんも一緒に遊海の様子を見にいくことになった。
歩いてすぐの距離なんだけど遊海がどんな生活をしてるのかは知らない。
部屋に向かうのは初めてのこと。
離れには遊海が独りで住んでいる。
元は住職の青木鉄観音が両親と家族で暮らしていた。
その両親も引退して鉄観音が住職になると東京から離れてしまった。
千葉県勝浦市に移住。
鉄観音住職も結婚を機に総完寺から離れてしまった。
長い間、誰も住んでなかった離れで暮らすことになったのが遊海だった。
玄関、何足かの靴が置かれている。
靴を脱いで正面にある部屋に遊海がいるはず。
「繁多くん、起きてる?」と寺務長が呼びかけた。
返事はない。
「寝てる?」と京都がなぜか小声。
「どうします?入りますか?」と問いかけているのが七尾さん。
「確認はしておきましょう。
開けてみるわ」




