第7話 【恋をしたい人魚】
「ねぇねぇ知ってる?」
「なに?」
「ミルキーのこと。」
「ミルキーがどうしたん?」
「昨日、500歳の誕生日だったでしょう?プレゼントに貰った物が人間の書物だったんだって。」
「珍しいもの貰ったわね。こんな深海に人間の物なんてほとんど手に入らないのに。」
「その書物がね。恋の物語だったんだって。」
「恋って何?」
「知らないの?人間の世界では、私達人魚とは違って恋愛をして愛を育んで子孫を残しているのよ。」
「ああ。交尾のこと?」
「まぁ…そうだね。」
「私達は不老不死だから交尾とかしないものね。」
「人魚には必要ないからね。でもミルキーは書物を読んで“恋をしたい!!”って言って魔女の元に行ったのよ。」
「嘘でしょう!?」
「本当よ。書物に感化されて人間になって恋愛するって息巻いてたわ。」
「人間の世界なんて争いだらけで物騒なのに…」
「ミルキーはまだ500歳しか生きてない子供だからね。誰もが一度は地上に憧れる時期が来るから仕方ないんじゃない?」
「それでも魔女に頼んで本当に地上に出る人魚なんて300年ぐらいぶりじゃない?」
「アルが300年前に地上に出てたわね。人間に見つかってすぐに帰ってきたけど。」
「ミルキーもすぐ帰ってくるわよ。人間世界なんていいことないんだから。」
「そうね。ほっておきましょう。」
「人魚が死ぬことはないんだから。」
妾はミルキー
500歳の誕生日に恋愛物語の書物を貰った
人間という生き物は恋愛というものをするようだ
男を愛して
男に愛される努力をして
少しずつ仲良くなって
愛の告白をして
2人で愛を育む
なんて素敵なことだろうか
私もかっこいい男と恋をしたい
好きってどんな感情なのだろう
恋ってどんな感情なのだろう
知りたい
恋をしてみたい!!
妾は深海に住む魔女ネイラの元に来てお願いする
「魔女ネイラ。頼む。妾を人間にしてくれ!」
「人間に?なんで?」
「恋をしてみたいから!」
「最近の人魚は馬鹿だねぇ。恋なんて醜い感情しない方がいいわよ?」
「これを見て!ここに恋は素晴らしいって書いてあるわ!」
「物語だからよ。フィクションなら綺麗事ばかりだもの。現実の恋愛なんて醜いものよ。愛するが故に人を殺したりするんだから。」
「でも恋をして子孫を残すのでしょう?」
「まぁそうね。」
「じゃあみんな素敵な恋愛をしてるってことじゃないの?」
「うーん…そうかもしれないけど。」
「ほらほら!やっぱり私、人間になりたいの!お願い!魔女ネイラ!私を人間にしてよ!」
「私の力でも人間にすることは出来ないわよ。」
「えぇ?そうなの?使えない魔女だなぁ。」
「失礼ね。完全に人間にすることは出来ないけど、人間みたいな姿には変えられるわよ。」
「本当に!?じゃあ足が生えて人間のフリをすることが出来るのね!」
「そう。そしてもう一ついいことを教えてあげるわ。」
「何?」
「人魚は恋をすると人間になれるのよ。私の魔法とは関係なく、人魚はそういう生き物なの。」
「そんな話初めて聞いたわ。」
「実際に人間と恋をして人間になったやつもいる。」
「本当!?すごーーーい!」
「ただ、失恋すると人魚は泡になって死ぬのよ。」
「失恋?」
「好きな人との恋が叶わなかった時に人魚は死ぬのよ。」
「不老不死なのに?」
「人魚にとって恋とは生死を賭けた特別なものなの。失恋して泡になって死んだ人魚も知っているわ。」
「可哀想ね。」
「本当に恋をするつもりなの?危険よ?」
「当たり前よ!恋を知らずに生きていくなんて嫌よ!」
「そう…ならこれを持って行きなさい。」
と魔女ネイラは短剣を私に渡した
「短剣?何これ。」
「もしも失恋した時、この短剣で好きになった男を殺しなさい。そうすれば泡になって死ぬことはないわ。」
「え!そうなの!?」
「うん。泡になって死ぬ前に好きになった相手を殺せば死なない。」
「なーんだ!簡単じゃん!失恋したらこの短剣で殺して、また次の男と恋愛すればいいんでしょう?」
「そうね…でも殺せなくて泡になった人魚はたくさんいる。気をつけて。」
「みんな短剣を持っていなかったの?」
「全員待たせていたわ。失恋した人魚は死ぬとわかっているのに好きになった男を殺せなかったのよ。」
「どうして?」
「わからない。」
「馬鹿ね。殺して次の男を探せばいいだけなのに。」
「恋って危険なのよ。本当に行くの?」
「短剣まで用意してくれたのにまだ言うの?当たり前でしょう?この短剣がある限り私は死なないんだから!」
「わかったわ。じゃあ人間の姿になる魔法をかけるわよ。」
魔女ネイラは妾のヒレに魔法をかけると
キラキラと光り妾のヒレが瞬く間に足へと変貌した
「おお!凄いぞ!流石じゃ!!」
「死なないようにね。ミルキー。気をつけて。」
「わかってるって!素敵な恋をして人間になってやるわよ!!」
足をバタバタと動いて泳ぐ
どんどん海面へと向かう
海面に来るのは200年ぶりかな
当たりを見ると、大きな船が見えた
船の上には人間がいると聞いたことがある
妾は船へと近づき、船に侵入することが出来た
上から船の様子を覗いてみると、どうやら人間というのは体に布を纏う習慣があるようだ
妾は何もなくて裸だ
これでは目立ってしまう
誰かから布を貰わないと
「えっ…」
船上から覗いている妾を見つけた女がいた
「おい。お前。妾に布を渡せ。」
「えっ…布…?服のこと?誰かに追い剥ぎされたの?大丈夫?」
「早く寄越せ。」
「えっと…ちょっと待ってて。」
「もうよい。お前の布でいい。」
「え?」
妾は女の首を噛んでミイラ状態にした
そして女が来ていた布を奪う
「ふむ。なかなかいい布じゃ。ありがとう。」
妾が女が着ていた布を体に纏う
人間は可愛い布を着ておしゃれじゃの
ミイラ化してしまった女は海へと投げた
海水でもしかしたら体が元に戻って奇跡的に死なないかもしれないが、ほぼ死んだものだろう
まぁ女が1人死んだところで人間界には何も影響ないから大丈夫だろう
「妾の恋の相手はどこにおるのかの!楽しみじゃ!」
綺麗な布を纏って妾は人間がたくさん集まっている場所へと行く
走る
走る
走る
走るということはなんて爽快なことだろうか
楽しい!!!
絶対に恋をして人間になってやるぞ!!




