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第5話 【普通の警察官】

俺は渡来貴之

48歳

大学在学中、夢も希望もなく適当に就職活動をしていたがことごとく失敗

友人に一緒に警察官を目指さないかと誘われて警察採用試験を受け合格

まさか受かると思っていなかったが、これも何かの縁かと思いそのまま友人と警察学校へと入校

交番勤務をゆるーく勤務することになった

正義感のカケラもない俺が警察なんて務まるのか不安だったが

警察に必要なのは正義ではなく忠誠心であること

上下関係の激しい世界であり、上の決定を文句なく従う俺は案外警察には向いていたようだ

人の手本になるような要素など俺には全くないが、警察の下っ端として働くには使いやすい駒である

俺自身には正義感などなく

上の言うことを聞くだけのお仕事

警察官を目指している者にとっては夢も希望もない話で申し訳ないが、実際の現場なんてそんなものである

俺は町の平和を見守り、パトロールで駐禁を探したり、酔っ払いの相手をすることが主な仕事であった

しかし、そんな平穏な警察人生は突如として終わり

激動に巻き込まれることになった

怪盗マジカル

突如として東京の街に1日前に現れた怪盗

ありとあらゆるお宝を奪い、世間を騒がせている

最初の方は上のお偉いさん方が怪盗マジカルを捕まえるチームを作成して対応していたが

どんどん規模がでかくなっていき

遂に今日は俺のような下っ端まで駆り出されることになった

秘宝ネメシスを奪いに豪華客船パーティに怪盗マジカルが来る

俺達警察はこれまで全敗中だ

怪盗マジカルは狙ったお宝を全て奪い、逃走している

無能な警察とレッテルを貼られてしまっており

警察の立場が危うくなっている

絶対に今回こそは捕まえると上のお偉いさん方は意気込んでおり

この辺りに住んでいる警察はほとんど出勤することになった

「まさか生きている間に怪盗を捕まえる任務をするのんて思いもしませんでしたよ。渡来さん。」

と俺に話しかけてくるのは同じ交番勤務で後輩の坂下三郎君だ

坂下君は28歳な若い青年だ

交番に来る厄介な人にも優しく諭して話す警察の鏡のような誠実な男だ

「怪盗なんざアニメの中の話だと思ってたな。」

「実際に現れると厄介ですね。俺、アニメに出てくる怪盗は好きだったのに嫌いになっちゃいそう。」

「休日返上で働かされてるからな。」

「そうではなくて!お宝を奪うなんてただの強盗なのに、世間からは英雄扱い。怪盗マジカルは大悪党なのに民衆の支持が高いなんておかしいです。」

「世間からすれば怪盗はかっこよくみえるんだろ。」

「それでも!みんなが世論に流されすぎです!怪盗マジカルは大悪党ですよ?早く捕まえないと被害がもっと大きくなっていくのに。」

「みんな騒ぎたいだけなんだろ。気にするな。」

「怪盗マジカルの思い通りにはさせません。絶対に秘宝ネメシスは守ってみせます。」

「相変わらず正義に溢れているねぇ。」

「警察ですから。当然です。」

「まぁ俺達は下っ端だから秘宝ネメシスの警護なんて大役任されてないけどな。怪盗が現れた時に観客がパニックにならないように声掛けと安全な場所に誘導するだけだ。」

「俺達だって警察です!隙があれば怪盗マジカルを捕まえましょう。」

「隙なんてあれば上のお偉いさんがとっくに捕まえてるよ。」

「キャリア組なんて信用ならないです。隙があっても見逃してるに決まってます。」

「そんなことないと思うけどなぁ。」

「怪盗マジカルは捕まえることか出来なくても、秘宝ネメシスだけでも守りきりましょうね!」

「俺達の仕事は怪盗ではなく、乗員の安全確保だ。」

「…そうですね。市民を守ることが俺達の仕事です。」

「そうそう。与えられた任務を全うしろ。」

「わかってますよ…」

少し不服そうに坂下君は呟く

「まぁ今日は俺の娘も来ているんだ。あまりかっこ悪いところは見せないように働かないとな。」

「娘さんが!?こんな危険な場所にどうして…」

「怪盗マジカルを見たいそうだ。」

「えぇ…ミーハーじゃないすか。親としてやめなさいと言うべきでは?」

「まぁ…怪盗なんて一生に一度かもしれんからな…」

「相変わらず娘さんに甘いんだから。」

「大事な1人娘だからな。お前も娘が出来たらわかるさ。」

「でも渡来さんは溺愛しすぎですよ。そんなに甘々に育てるからこのみちゃんがファザコンになっちゃったんですよ。」

渡来このみ。俺の一人娘。無花果高校2年生。

平凡な女の子だが、心優しい自慢の娘だ

パパが1番かっこいいと言う

男の見る目がなさすぎて不安になる

このみには誰よりも幸せになって欲しいのに…

「俺なんか何の取り柄もない冴えないおっさんなのにな。何がいいんだか…」

「そんなに甘々に育てると恋人になった男は大変ですよ?渡来さんより優しくないってこのみちゃんは選り好みするようになってしまいますよ。」

「俺よりも優しい男なんてごまんといるだろ。」

「絶対いないですって!このみちゃんの為を思うならもう少し子離れした方がいいですよ!」

「う…うむ…」

年下に子育てのことで説教をされてしまった情けない

しかし、1人娘は目に入れても痛くないほど可愛いものだ

俺のような冴えない男に捕まらないようにと

名門の無花果高校学校へ入学させた

無花果高校学校の生徒なら優秀な人が多いから安心してこのみを任せられる

かっこいい彼氏でも作って青春を謳歌して欲しいが

このみからは色恋野話を聞くことはない

今日のパーティも金持ちの御曹司がたくさんいる

このみが見初められて恋人を作ってくれないだろうか

このみには幸せになって欲しい

「このみにはかっこいい彼氏でも捕まえて幸せになって欲しいと思っているのに、恋愛には全く興味がないようなんだ…。漫画を読むことが趣味で友達と漫画の話ばかりしているらしい。」

「へぇ。いいじゃないですか。青春で。」

「そうだけど…親として心配だ。若い頃に恋愛を経験しないと将来悪い男に騙されたりするんじゃ…」

「心配しすぎですって。このみちゃんはしっかり者ですから大丈夫ですよ。恋人がいなくても幸せに暮らしていけますよ。」

「俺は老害だから結婚して幸せに暮らすことが女にとって1番幸せなんじゃないかって思ってしまう。」

「いやいや!そんな偏見よくないです!今の時代結婚しても苦労することが多いですからね。独身謳歌する幸せだって最高ですよ。」

「確かに俺の嫁は苦労ばかりかけているからな…給料もそんなに高くないのに文句言わずに一緒にいてくれて感謝しかないよ。」

「渡来さん奥さんも大事にしてますよね。尊敬します。」

「そんなもん当たり前だろ。俺のような冴えない男に嫁いでくれたんだ。感謝しかないよ。」

「らぶらぶで羨ましいっす。」

「ラブラブではないが…」

「何言ってるですか。毎日、手の込んだ愛妻弁当持ってきてるくせに。」

「あれは嫁の料理が上手いだけだ。」

「料理が上手いだけで毎日手の込んだ愛妻弁当しませんって。愛されてるんですよ。渡来さんは。」

「そうだと嬉しいが。」

「あ。そろそろ始まるみたいですよ。主催者の五十嵐承太郎の挨拶が。」

「うむ。そろそろ配置について準備するか。」

「はい!!」




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