第4話【愛を失った復讐者】
無花果高等学校 2年生
真田姑桃
私のことを語るならば
5年前の出来事は必須だ
今よりも5年前に時を遡って話そう
私は12歳の普通の女の子だった
その日は家族で秋葉原に出掛けていた
初夏の6月
家のクーラーが1台故障したので、新しいクーラーを探していた
とはいってもクーラーを本気で探していたのは両親であり
私とお姉ちゃんは秋葉原の町をうろうろ歩いて楽しんでいた
「胡桃〜。見て!携帯の扇風機が売ってるわよ。欲しいなー。」
真田雛乃
当時16歳
人懐っこくて明るい性格をしていて
とても優しい
私の自慢の姉だ
お姉ちゃんが声を荒立てて怒った姿なんてみたことない
ずっとずっと優しい
大好きなお姉ちゃん
5つ歳上の少しだけ歳の離れたお姉ちゃん
いつも頭を撫でて可愛がってくれるお姉ちゃん
少しシスコン気味で私はお姉ちゃんにべったりだった
私はお友達と仲良くすることも苦手で
思ったことをすぐに口にしてしまう性格が
人を傷つけてしまうことあったようで
悪気はないのだが
人と関わることやコミュニケーションが苦手だった
そんな私をいつも慰めてくれたのもお姉ちゃんだ
“胡桃は素直でいい子だからいいんだよ。胡桃は何も悪くない”
と頭を撫でてくれる
不安な時にいつも寄り添ってくれたお姉ちゃん
大好き
「小さいのに結構風力があるね。涼しい。」
お姉ちゃんが持っていた携帯扇風機は小さいのに物凄い勢いで風をおこす優れたものだった
「これ欲しいな〜。パパ買ってくれるかな?」
「いつ使うの?」
「今日みたいに外にお出かけした時だよ!」
「お姉ちゃん最近、部活でほとんど出かける機会なんてないじゃない。」
「そうだけど…」
「使う機会があまりないから買ってくれないと思う。」
「ちぇー。欲しかったのにぃ。」
「わかんないよ?一応おねだりしてみたら?」
「私が言っても買ってくれなさそう。胡桃が言ってよ!」
「私が?」
「そうそう。胡桃がおねだりすることなんて少ないからちょっと可愛く微笑んでパパにおねだりすればイチコロよ。」
「やだよ…恥ずかしい…」
「照れた顔も可愛い♡ちょっとは我儘言ってもいいんだよ?胡桃。」
「そうは言っても物欲はあまりないから。」
「お姉ちゃんは欲しいものだらけなのに。携帯扇風機でしょ。日焼け止めでしょ。リップクリームでしょ。他にもたくさん!!」
「日焼け止めとリップクリームは買ってくれるよ。探しに行こう。」
「友達に勧められたいいものがあるのよ!探しに行くわよ!」
私はお姉ちゃんに手を引かれてドラッグストアへと2人で向かった
両親はお姉ちゃんがLINEで連絡したので、後で合流することになった
大勢の人が利用するスクランブル交差点
私達は手を繋いでたわいもない雑談を交わしながら歩いていた
キャーーーーーーー
と急に大声が上がった
私とお姉ちゃんは驚いて振り返る
ナイフを持った男が
通行人の女性を刺して
女性は血だらけになって…
頭が混乱して声が出せなくて体も動かなくて硬直した
ナイフを持った男が
私に向かって
ナイフを…
「危ない!!!」
お姉ちゃんが目の前に現れて
私に抱きついた
そして
お姉ちゃんが
血だらけに
なって
ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
そこから先は覚えていない
私を庇って抱きしめたお姉ちゃんは無差別殺人犯に殺された
私の大好きなお姉ちゃん
この世で1番優しく善良で死ぬべき人ではなかったのに
許せない
許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない
この世界の全てが許せない
私のお姉ちゃんを奪ったこの世界の理が許せない
この世界の神様も許せない
この世界の悪魔も許せない
この世界の人間共も許せない
私は目の前でお姉ちゃんを殺されたショックで
夜もまともに眠れなくなり
錯乱状態になることが多くなった
奇声をあげて
暴れて
壊れてしまった
私は精神科に通うことになった
“貴方のお姉さんが天国で見守っている”
“お姉さんは貴方の幸せを願っている”
“お姉さんの為にも幸せになる努力をしていこう”
そんなことを言われた
確かにそうなのだろう
お姉ちゃんは私の幸せを願ってくれている
私には不幸になってほしくないはずだ
命をかけて守った妹だ
幸せになって欲しいと思っているだろう
でも…
でもごめんなさい
私はどうしてもこの世界が憎いです
お姉ちゃんを奪ったこの世の全てが憎いです
憎くて憎くて憎くて仕方がないです
幸せになることが最大の弔いになることはわかっています
でも無理なんです
幸せになんてなれません
この憎しみを忘れて生きることなんて出来ません
辛くてしんどくて死にたくなるような絶望を
私は忘れることなんて出来ません
目の前でお姉ちゃんが刺された絶望を
私は一生抱えて生きていくのでしょう
“憎しみや辛さは時間が経てば穏やかに収まっていきます。大丈夫です。ちゃんと幸せになれますよ。”
精神科の先生が言う
時間が経てば憎しみが減る?
馬鹿言わないでよ
一生消えてたまるかよ
辛くてしんどくて死にたくなるけれど
この気持ちを忘れて生きていくなんて
それこそ出来ないよ
私のお姉ちゃんを奪ったこの世界へと憎しみと怒りは
絶対に忘れてやるもんか
この気持ちを抱えて私はこの世界に復讐をする
私からお姉ちゃんを奪ったこの世界全ての人類に
私は復讐する
生涯かけてこの世界を呪ってやる
そして今現在
私は怪盗マジカルを作り上げてこの世界に復讐をしている
この世の全ての悪を成敗する
怪盗マジカル
金品財宝を盗み、この世を嘲笑う
殺すことだけは絶対にタブーとしている
殺すことだけは絶対にしない
だって私の姉は殺されたのだから
同じ土俵まで堕ちることはしたくないから
次のお宝は秘宝ネメシス
豪華客船で秘宝ネメシスのお披露目パーティの中、怪盗マジカルが華麗に秘宝ネメシスを奪っていく
派手でインパクトがあって
完全無敵な怪盗マジカルに仕上げなくては
私は怪盗マジカルが活躍出来るように
怪盗マジカルの武器である傘に色んなものを仕掛けていく
お姉ちゃんが死んでから
私はお姉ちゃんにお墓に一度も手を合わせていない
きっと姉不幸な私を
お姉ちゃんは許してくれないだろうから
世界一の大悪党を作り上げてこの世に復讐をしている私を
お姉ちゃんは許してくれないだろう
それでも私は止められない
私はきっとお姉ちゃんと同じ天国には行けないだろう
私が地獄に堕ちるその時まで
私はこの世界に復讐し続ける




