表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
3/11

第3話 【悲恋の怪盗】

無花果高等学校 2年生 九条姫華

生徒会副会長

体操オリンピック選抜選手

九条グループの1人娘

敷かれたレールを歩いていれば

平和で輝かしい未来が待っている

未来に何も不安もない

人生イージーゲームだった

ほんの1年前までは


体操部の部活が終わり、私は女子寮へと戻る

無花果高等学校は全寮制であり、生徒達は全員寮に住む決まりだ

私は女子寮の部屋に帰り扉を開ける

「おかえりなさい。姫ちゃん。首をながーーくして待っていたよ。」

そう声を掛けてくるのは1年の時から同室である

真田胡桃 2年生

ピンク髪のギャルでありながら他人と馴れ合うことを嫌っている

無花果高等学校で友人と呼べる人間は私しかいない

こんな見た目だが、成績優秀者であり、毎回テストで生徒会長の北条奏多君と首位争いをしている

髪色が派手なだけで、生活態度は大人しいので先生達も胡桃の髪色については放置されている

「ただいま。」

「さぁさぁ!今回の怪盗マジカルの作戦だよ。失敗した場合等のパターンも考えてあるから作戦は30通りある。全て頭に叩き込んで動けるようにしておくように。」

「あまりにも多くない?」

「今回の豪華客船には私達の敵が多いからね。全員が怪盗マジカルを捕らえようと各自で作戦を立てているに違いない。相手にするのは警察と優等生の探偵さんだけではないのだ。今回の盗みが今までで1番の大仕事だと思っていい。これぐらいはリスク管理しないとね。」

「私が失敗するわけないじゃない。」

「もちろん姫ちゃんのことは信頼しているよ。姫ちゃんはこの世で1番の大悪党の怪盗だ。」

「褒められている気がしないわね。」

「姫ちゃんだからこそ怪盗マジカルは完成したんだ。この世の全ての悪を嘲笑ってやろうじゃないか。」

怪盗マジカル

今最も世界中で注目されている怪盗

その正体こそがこの私

九条姫華だ

怪盗マジカルは胡桃が指示を出して私が実行犯

2人で作り上げた怪盗だ

「今回の豪華客船の乗員が決まったよ。主催者の五十嵐承太郎も何を考えているかわからないし、鉱物学者の七瀬隼人は手段を選ばず秘宝ネメシスを奪ってくるつもりだろうけど…1番厄介な奴は橘直人ね。」

「橘直人?誰なのその人。」

「あら。裏社会では有名人だけど知らないのね。橘直人は革命家。裏社会に蔓延る薬や売春を殲滅させている世直しが趣味の変態よ。」

「危険なことに首を突っ込む人なのね。いつ死んでもおかしくないわよ。」

「2年前に出所して、その後革命家グループ“トランスペアレント”を結成。その後、裏社会を殲滅する活動をしている革命家のリーダーよ。」

「出所?犯罪を犯していたの?それなのに世直し?」

「橘直人は私の幼馴染なの。5年前、私がやった犯罪を庇って少年院に入ったの。」

「え?どうして?なんで胡桃の犯罪を被ったりしたの?」

「直人兄ちゃんは私のことが好きだったの。だから利用させて貰っただけ。」

「…。」

「だからさ。私は恨まれてると思うんだよ。好意を利用して罪を着せたからね。怪盗マジカルは私が関わっていると考えて接触してくる可能性が高いわ。」

「酷い女ね。本当に。」

「知らなかったの?」

「いいえ。誰よりも知っているわ。」

「とにかく。一切無視していいから。相手にすると厄介だもの。」

「強いから?」

「アハハ!怪盗マジカルより弱い人なんて存在しないわ。構ってちゃんには無視することが1番効くからね。」

「幼馴染だったのでしょう?大事な人じゃないの?」

「大事な人はお姉ちゃんだけ。」

「…そう。」

「あーー!楽しみだわ!!世界中に怪盗マジカルが恐れられる最強の怪盗だと知らしめるのよ!!私は怪盗マジカルの武器である傘の仕込みをしなくちゃね。仕込んでいる時が1番楽しいんだから!この傘で大勢の人間が阿鼻叫喚して地獄に落ちると思うと堪らないわ!!」

「あまり詰め込みすぎないでよね。重くなりすぎたら機能性が低くなるから。」

「ケチなこと言わないでよね。体操オリンピック選抜選手ならこれぐらい片手でぶん回せるでしょう?出来る限り詰め込んで仕込んであげるからね!」

「いらない機能も詰め込みすぎなのよ…」

怪盗マジカルは傘が武器だ

盾にもなるし、傘から突風や、催眠霧を出す等の攻撃も出来る

そして何より驚くべきことは空を飛べるのだ

傘を開き、風に乗り空を飛ぶことが出来る

胡桃の発明した謎の技術で

無花果高等学校で私も成績が優秀者だけど、胡桃は天才の域だ

謎の技術で最強の武器を作り上げた

怪盗の衣装も胡桃の手作りだ

魔法少女のような黒のふんわりとした大きなレースの衣装は機能性のカケラもないけれど

怪盗は派手で話題性がないとダメだからダサい衣装は着せられないとの理由でこの衣装になった

胡桃の理想の怪盗を私は実行犯として演じている

何故こんなことをしているかって?

始めは…ただの好奇心だった

敷かれたレールの輝かしい未来しかなかった私にとって

怪盗という悪党をやる話は魅力的に感じた

少しワルになってみたかった

本当にただそれだけだった

まずくなったり、飽きたらいつでも辞めていいからと胡桃に誘われたから

軽い気持ちで

すぐに辞めると思って

怪盗マジカルになった

思いの外、怪盗マジカルの活動は楽しかった

漫画や、アニメのような存在に自分がなれることに気持ちが昂った

世の中が怪盗マジカルに魅力されていることが気分がよかった

どんどん怪盗マジカルの活動は派手になっていった

最初は公園の時計だったけれど、

骨董品

美術品

どんどんお宝と言われる物を盗むようになっていった

捕まれば大悪党として後戻り出来ないところまで来てしまった

途中で辞めようと何度も考えた

それでも

どうしても

やめられなかった

「みてみて!傘のこのボタンを押すとトランプが飛び出すのよ!怪盗ぽくていいと思わない!?」

無邪気に胡桃は傘の仕込みをしている

胡桃は本来こんなに笑う女の子ではない

いつも静かで無口で孤高だ

無花果高等学校では誰かと会話するところを見たことがない

この世の全てを憎み恨んでいる

誰にも心を許さない

それが真田胡桃だ

「そうね。怪盗らしくてかっこいいかも。」

「でしょでしょー!?」

胡桃がこんなにもはしゃいで楽しくしているのは私の前だけ

私にだけ

私だけが胡桃の笑顔を知っている

この気持ちが何か名前をつけてしまえば

後戻り出来なくなる

そう思って見て見ぬふりをした

自分の気持ちに蓋をした

しかし気持ちは膨らむばかりで

今はもう引き返せないところまで来てしまった

胡桃のことを独り占めしたい

笑顔も泣き顔も怒った顔も寝顔も

全て全て私のものにしたい

そう願うようになってしまった

私にだけに傾けられる笑顔に

私は虜になった

絶対に実ることのないこの気持ちを

どこにぶつけることも出来ずに

私は胡桃の為に怪盗を演じ続ける

怪盗マジカルは胡桃を虜にした

怪盗マジカルの存在が胡桃にとって最高のおもちゃなのだ

私は胡桃のおもちゃになり続ける

私の場所は誰にも譲らない

私以上に胡桃のことを楽しませる存在なんていない

怪盗マジカルは胡桃の為に

胡桃の復讐の為に

私は演じ続ける

胡桃を愛しているから



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ