第36話 後日談
時は経ち、秘宝ネメシスお披露目パーティから3日か過ぎた
世間は未だに興奮が冷め止まず、話題は怪盗マジカルと秘宝ネメシスで持ちきりだ
無花果高等学校でもみんなの話はあの日のことばかり
僕も未だあの日の衝撃から抜け出せなくなっている
放課後になり、いつも通りに僕は生徒会室へと入る
「はろはろ。北条君。本日も雑用日和ね。」
と九条さんが言う
「雑用日和ってなんだよ。」
「いい天気ねってことよ。」
「なんか嫌な表現だな。」
「あら?そう?気持ちよく雑用が出来ると言う意味があっていいじゃない。」
「生徒会の仕事を雑用呼びするな。」
「雑用じゃない。」
「無花果高等学校を支える立派な仕事だ。」
「無花果高等学校を支える立派な雑用ね。」
「生徒会なんてそんなものさ。革命でもするつもりなのか?」
「北条君が革命するなら喜んでついていくわよ。」
「残念だったな。僕は保守派だ。」
「つまんないのー。」
「なぁ…秘宝ネメシスは誰が持っているんだ?」
秘宝ネメシスお披露目パーティで、九条さんは僕に怪盗マジカルであると正体を明かした
僕にならいつでも捕まえて欲しいと言われているが
好きな女の子を牢獄送りにはしたくない
生徒会室に鍵をして僕達は怪盗マジカルの話をよくするようになった
「何回聞かれても言えませーん。だいたい所有者の五十嵐が怪盗マジカルに盗みを依頼したのよ?秘宝ネメシスの破滅の力を恐れてね。だから盗んだことで全員ハッピーエンドなの。」
「次の所有者が危険な目にあうだろう?」
「たぶん大丈夫な人に渡したわよ。」
「あの嵐を止めたのは秘宝ネメシスだと九条さんは話したじゃないか。僕達を守る為に秘宝ネメシスの力を使って破滅するかもしれないんだぞ?ほっとけないよ。」
「たぶん上手くやるわよ。」
「死ぬかもしれないのに…そんな曖昧な感じで大丈夫かよ。」
「うるさいなー。お得意の名推理で見つけたら?探偵ならさー。」
「推理するより本人を理詰めした方が効率的だろう?」
「嫌な探偵だな。」
「光栄だよ。」
僕達は生徒会の仕事をしながらいつものように話す
「私が怪盗マジカルだって知っているのに警察に突き出さないなんてもはや北条君も共犯者みたいなものよね。」
「バカを言うな。極悪な犯罪に手を染めたつもりはない。」
「その極悪犯罪者を野放しにしているのは罪じゃないの?」
「…誰も知らなければ罪じゃない。」
「あらあら。北条君のような正義感の強い人なら日々罪悪感に苛まれて苦しいんじゃないの?苦しみから解放されたいなら…今すぐに私を警察に突き出すべきなんじゃないかしら?」
九条さんは僕の頬を触りながら僕の目を見つめて言う
妖艶で美しい
「怪盗マジカルは僕と恋人になれたら幸せになれるのにと言った。今、怪盗マジカルを誑かしてある極悪人ではなく僕を好きになればよかったのにと。」
「…。」
「僕が九条さんの恋人になれば、怪盗マジカルは必要なくなる。そうだろう?」
「バカね。そんなことができたらとっくにそうしてると何度も言ってる。」
「僕は絶対に諦めないよ。今、九条さんを誑かして怪盗マジカルにさせたそいつを許せない。絶対に負けないよ。僕が1番かっこよくて1番魅力的だと証明する。九条さんが僕のことを好きになってくれるようにする。」
「諦めた方がいいんじゃない?ただの当て馬ポジよ?」
「そんなことはない。僕は九条さんを極悪人から助けるヒーローだ。」
僕は真っ直ぐ目を見つめて伝える
誠実にこの想いが届くように
「本当かなぁ?」
「本当さ。九条さんは何も心配しなくてもいい。必ず惚れさせてみせるよ。」
「それはそれは楽しみだわ。」
少し嬉しそうに九条さんは微笑んだ
「秘宝ネメシスも心配だけど、人魚もどうなったのかわからないから心配だよ。」
人魚はあの日から行方不明になっている
「海に帰ったんじゃないの?」
「それならいいけど。」
「あんなこわい生命体二度と会いたくないわ。」
「殺されそうになったんだろう?」
「人を襲うことに善も悪もない感じだったわよ。」
「恐ろしいな…」
秘宝ネメシスお披露目パーティは実は行方不明者が1人いる
27歳の若い女性はいまだに見つかっていない
人質が取られたり、怪盗マジカルが現れたり、人魚が出たり、嵐が来たりハプニングの連続だったが怪我人も少なく行方不明になった女性以外は無事に帰ることが出来ている
秘宝ネメシスお披露目パーティで何かあったのか
帰り道でなにかあったのかはわからない
でも…
「おそらく人魚に殺されているよね。その女性。」
「おそらくね。」
「だって行方不明者の特徴のドレスが人魚が来ていたドレスと同じだったのだろう?」
「うん。殺して奪ったとしか思えない。」
「そうか…これ以上被害を増やすことないように人魚は捕まえたいけどな。」
「絶対海に帰した方が平和よ。あんな生命体が陸にが上がったらそれこそ破滅するわよ。日本が。」
「それはそうかもしれないが…行方不明者の遺族がそれでは可哀想じゃないか。」
「人魚を捕まえて裁判させるの?全員殺されて終わるわよ。」
「人間の住む場所にはいない方がいいか…」
「絶対そうよ。遺族は可哀想だけれど2次災害が必ず起こる。深海の奥底で人魚は生きて貰うべきよ。」
「たしかにそうかもしれないね。」
「それに人魚がいたら私の愛する人が目移りしちゃうから嫌なの。」
「人魚が好きなのか?そいつは。」
「人魚というか悪が好きなのよ。この世の全てを憎んでいるからね。この世界を破滅させられる人魚に心奪われて怪盗マジカルなんて捨てられるかもね。」
「なんでそんな極悪人が好きなんだよ。」
「わかってないなぁ。女の子はちょっとワルに憧れるものなのよ。」
「理解不能だ。」
「だからモテないのよ。」
「うぐっ…しかし、ちょっとワルどころか極悪人そのものだと思うけど。」
「それはまぁそうね。」
「嫌いになったりしないのか?」
「まさか。毎日惚れ直してるわよ。」
「…わざと傷つくこと言ってる?」
「この程度で折れるようじゃ私に惚れさせるなんて無理でしょう?」
「諦めないよ。でもそれとは別に傷つくのは当たり前だろう!?」
「アハハ!ごめんごめん!」
「僕も毎日惚れ直して貰えるように頑張るよ。」
「ちょっとワルになってみたら?」
「えぇ!?うーむ…ワルに?難しいなぁ…」
と僕が腕組みをして真剣に悩んでいると
ケラケラと九条さんは笑った
「優等生の北条君には無理かー!」
「そんなことはない!九条さんを惚れさせることに必要ならちょっとわるいことしてみるよ!」
「たとえば?」
「えっ…こっそり九条さんへとプレゼントを無花果高等学校に持ち込むとか?」
無花果高等学校は私物の持ち物を持ち込み禁止されている
「ぶ!アハハハハハハハ!!可愛いワルさだね!!」
と九条さんは大笑いした
「そんなにおかしいくないだろう!?」
「おかしいわよ。どこまでも誠実で真面目で素直ね。」
「褒めてるのか?」
「どうかな。そういう所が大好きなはずなのに、どうして好きになるのは悪い人なんだろうね。」
「理不尽だな。そんなやつに負けるなんて。」
「恋は理屈じゃないのよ。」
「それは…そうだな。」
「なに?心当たりあるー?」
「当たり前だ。今、まさに九条さんに恋をしているからな。理屈じゃ解決できないことだらけさ。」
「アハハ!確かに!!」
怪盗マジカルは今後も活動するのだろう
僕は怪盗マジカルをやめさせる為に
自分を磨いて九条さんが僕を選んでくれるように
日々努力するだけだ




