第34話 ヒーロー
怪盗マジカルから秘宝ネメシスを受け取ってから
素直に持ち主の五十嵐さんに渡すべきなのか
でも五十嵐さんは秘宝ネメシスを所有することで災いが起こると予想したからこそ怪盗マジカルに盗むように依頼したわけだし
戻ってきたらありがた迷惑すぎるよな…
でもそんなこと俺は知ったこっちゃないし
知らぬ存ぜぬで返してもいいんだけど
俺が秘宝ネメシスを返却したせいで五十嵐さんが破滅するような目に遭ったら後味悪すぎるしな…
俺の友人である鉱物学者の七瀬隼人君ことはやぴーに譲ったら大喜びするだろうけど
あの奇人変人に秘宝ネメシスを渡したりしたら喜んで願いを叶えて破滅する
絶対にそうだ予言出来る
俺が配信者になって有名になってからも態度が変わらず友人として接してくれている唯一のリア友といってもいいはやぴーを破滅させるのは心苦しい
はやぴーは生きることよりも秘宝ネメシスに破滅させられる方が喜ぶと思うけれど友人としては死んで欲しくない
俺が所有者になって秘宝ネメシスを手に入れた配信をするべきか?
配信者としてはこんな面白い代物を配信したい気持ちは山々なのだが
危険が伴うことが多すぎる
秘宝ネメシスを狙っている人は世界中にいる
願いも叶う石なんて手段を選ばずに盗ろうとする輩がわんさかいるだろうし
友人のはやぴーなんて血眼になって奪いに来るに決まっている
うーん…
「どうしよう…これ…」
と俺が秘宝ネメシスに呟くと
【このみ!このみがいい!このみに渡してくれ!】
と秘宝ネメシスが話す
「うわああああああああああ!喋ったああああああああああああああああああ!!」
【うるさい!何度も同じリアクションをするな!】
「いや…何回経験しても慣れないよ…」
【これだから凡人は】
そりゃあ高尚な秘宝ネメシスからすれば俺は凡人のつまらない人間なのだろう…
「えっと…このみって?」
【この世で1番面白い女じゃ!】
「この世で1番面白い女!?」
配信者としては1番気になるワードが出てきた
「その…このみちゃん?ってどこにいるの?」
【この船のどこかにおる】
「もうちょっとなんかわからないの?何歳ぐらいとか特徴的な見た目とか。」
【子供じゃったの。おおきな三つ編みをしておった。愛いやつじゃったの〜。】
子供!?
世界一の面白い女というからお茶目な叔母様とかだと思ったのに
「このみちゃんはなんで世界一面白いんだよ。」
【秘宝ネメシスを手にしても全く臆することなく話し相手になってくれた!こんなことは初めてじゃ!】
子供ならありえそうな話だな…
「このみちゃんは秘宝ネメシスを手に入れたの?危なすぎないか?」
【人魚の恋人から貰っておった】
人魚の恋人…?
ますます意味がわからん
そんな催しがあったのか?
人質として監禁されていたから全く何があったのかわからない
「それで?このみちゃんが気に入ったんだ。」
【そうじゃ!このみに所有者になって欲しかったのに!このみは持ち主に返すと聞かんのじゃ!宇宙で唯一の喋る石の所有者になれるなんて光栄なことなのに!欲がない所も愛いやつだった…】
持ち主に返そうとするなんてなんて良い子なんだこのみちゃん
「でも子供には秘宝ネメシスは荷が重いから流石に所有者にはさせられないかな。」
【ええ!?私はただのお喋りな石で無害なのに!?】
「願いを叶えると所有者を破滅させる石なんだろう?」
【そんなものは知らん。災害が起こるといつも私のせいにされていただけじゃ。私にはそんな力はない。】
「ええ?願いを叶えることも?破滅させることも?」
【そんな力はない】
えぇ…
預言がして破滅させると伝承されているぐらいだから
何かしら力はあるだろ…
ピカッ
と窓の外から光が差した
ゴロゴロと雷が落ち、嵐が来ていた
「うわああああああああああああああ!!」
なんだこれ!?
さっきまで晴れていたのに!?
いきなり大嵐になるなんて!!
こんなことありえるのか?
「た…祟りだ!!秘宝ネメシスの破滅の力だああああああああああああああああ!!」
【勝手に私のせいにするな。】
「でも!こんなのおかしいよ!急に嵐がくるなんて…人智を超えた力が作用しているしか考えられない!」
【知らんわ。私にそんな力はない。海は天候が変わりやすいだろうが】
「いやいやいや!おかしいだろう!?絶対に!!自然災害じゃないって!これ!!」
こんなことをしている暇はない!
避難!避難しないと!!
俺は秘宝ネメシスをポケットに入れて避難場所へと走った
監禁事件があったからなのか一般客は全員避難済みだった
俺は避難場所へと合流して警察の指示に従う
一般客は突然の嵐にパニック状態だ
こんな大嵐に飲まれたら絶対にただでは済まないことは誰でもわかる
運良く生き残れるか死ぬかだ
家族や恋人が手を取り涙を流して震えている
生き残れるかどうかわからない恐怖と
僅かに残された希望を信じて
もしかしたら…
秘宝ネメシスに願いを叶える力が本当にあるのなら
この嵐を止められるかもしれない
願いを叶えたら破滅する力も作用する
それでも
ここで野垂れ死ぬなんてごめんだ
俺は避難場所を飛び出し、屋上デッキに行く
大嵐で屋上デッキは立つことも困難だ
柱に抱きつき秘宝ネメシスを天に掲げて俺は願う
「秘宝ネメシス!!この大嵐を止めてくれ!!」
と俺が叫ぶと
秘宝ネメシスは赤く赤く光り輝き
大嵐は一瞬で去っていき
元の穏やかな天気に戻った
「はぁ…はぁ…」
本当に…秘宝ネメシスは…願いを叶える石なんだ…
凄い…
助かった…
【え!?嘘!?私にこんな力が!?凄いぞ!!】
と秘宝ネメシスは喜んでいた
こんな凄い力があるのになんで今知ったみたいな反応なんだよ…
これから俺は破滅するんだろうか
まぁ…ここの船の人は救ったんだし
情状酌量の余地ぐらいくれよ神様




