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第33話 完璧主義

配信者のぱっくんに秘宝ネメシスを渡したので、私の怪盗の任務は完了だ

怪盗マジカルとしての仕事が終了したので、私は怪盗の衣装を脱いで九条姫華に戻った

九条姫華としてパーティに参加したのだから、帰りにいなくなっては事件になってしまう

私はずっとVIP部屋でくつろいでいることになっているからVIP部屋に戻ろうとすると


ピカッ


と外で雷が鳴りドゴゴゴゴゴンと雷が落ちた

その後すぐに風が荒れて大雨になり

海は大荒れになった

「あー…秘宝ネメシスの破滅の力?」

このタイミングで発動するなんて運が悪い

これでは怪盗マジカルの傘でも飛んで逃げることは出来ない

豪華客船はこんな大嵐に呑まれて大量に死人が出るだろう

「秘宝ネメシスの破滅の力かな?大嵐になっちゃったよ。胡桃ちゃん。」

と私は怪盗の変身は解いたが、インカムでは胡桃とまだ話せる状態だから胡桃に状況を話した

『そう。大変だね。』

「この大嵐を止める方法ある?」

『秘宝ネメシスに願えば叶うかもね。』

「秘宝ネメシスが起こした災害なのに?」

『いたちごっこだねぇ。』

「私、死ぬかも。」

『そうだねぇ。』

「他に言うことないの?死ぬかもしれないだよ?」

『いやはや。姫華ちゃんの活躍はお見事だったよ。怪盗マジカルは最高傑作だった。私がこの世に生きてきて怪盗マジカル以上の逸材には会えないと思うよ。』

「それはどうも。」

『怪盗マジカルは伝説として語り継いでいくと約束するよ。じゃあね。伝説の怪盗マジカル。愛してるよ姫華ちゃん。湿っぽい最期の別れとは苦手なんだ。インカムはもう切らせてもらうね。』

と言って胡桃はブツっとインカムの通信を切った

「…あっけなー。」

こんなにもあっけなく私の一生は終わるのか

胡桃と出会ってから毎日が刺激的で苦しくも楽しい毎日を過ごすことが出来ていたけれど

私の恋心を利用されて結局簡単に捨てられてしまったな

最期に愛してるよと言ってくれたのは胡桃なりの最期の情けのようなものだろう

愛して等いないくせに

「私も…愛してるよ胡桃。」

もう既に通信は切られてしまっているので向こうには聞こえていないが私は言葉にした

こんなこと何の意味もないけれど

本当に好きだった

自分の人生を棒に振っても構わないから胡桃の役に立ちたかった

お姉さんを失った胡桃を笑顔に出来るなら

大悪党にでも何でもやった

それで胡桃の心が晴れるなら

私の役目はそれだけでよかった

愛されたいなんて烏滸がましいこと思ってなんかいない

世の中に絶望した胡桃の支えに少しでもなりたかった

涙が頬をつたう

「あはは…失恋…しちゃったな…」

見返りを求めていたわけではないけれど

少しでも情が私に対してあるかもしれないと思っていた

死ぬかもしれない友人に対して泣いてくれるとか?

そんなことを期待していたのかな…

胡桃は私に対して本当にただの復讐できる道具でしかなかったのだろう

胡桃の心を動かせるのはお姉さんだけ

私なんかは全然ダメだった

少しは心を動かせる相手になれるかなと思っていたけれど

役不足だったな

ぐすっぐすっと泣いていると

「九条さん!!」

と大きな声でノックもなしに北条君が入ってきた

「…何?」

私は泣いている状態を見られたので不機嫌に答えた

「いやっ…あの…ごめん!!まだ避難していないようだったからここに来たんだ!大嵐でこの船は沈むかもしれない。早く避難して…」

「私はいいや。ここにいる。」

「何言ってるんだ!?避難しないと死ぬぞ!?」

「もういいの。この部屋の救命胴衣は他の人に使ってあげて。私はここにいる。」

「船が沈んだら死んでしまうんだぞ!?」

「救える命は限られている。私のことは後回しにしていいわよ。」

「そんなこと出来ないよ!今すぐに救命胴衣を着て避難を…」

「いや。」

「そんな我儘を言っている場合じゃない!早く!」

「我儘じゃないことぐらいわかっているでしょう?」

「死ぬつもりか?」

「そうよ。」

「なんで!?」

「そんなこと察しつくでしょう?」

「わからないよ!いいから早く…」

「白々しいわね。私が怪盗マジカルだって気づいているくせに。」

「なっ…!!」

「私が死にたがる理由なんてそれで十分でしょう?わかったなら早く出て行って。」

「どうして…」

「もういいの。疲れたの。生き残っても牢屋に行く人生なんてごめんだからね。」

「九条さんはわざと僕が気づくように痕跡を残していたよね。どうして?」

「…。」

「僕に捕まえて欲しかったんだろう?」

「どうせ捕まるなら同級生に花を持たせようと思っただけよ。」

ぐいっと北条君は私の手を引っ張り無理矢理走り出す

「僕は!怪盗マジカルを捕まえたら好きな女の子に告白するんだ!!」

「何それ…今関係ないでしょう?」

「あるよ!こんな所で死なれたら怪盗マジカルは野放しだ!僕の告白も出来なくなる!」

「そんなの…」

今、告白しているようなものじゃないか

「僕は完璧主義者なんだ!怪盗マジカルを捕まえて!好きな女の子に惚れさせて!九条さんの想い人なんてきれいさっぱり忘れさせてみせる!」

「バカなの…?それが出来たらそうしてた!何度何度何度も何度も北条君を好きになればよかったのにって…」

「まだ負けてない!諦めない!死なせない!!絶対にこんなところで死んでたまるか!!早く走れ!!」

と北条君は私の手を引き全力で走る

私は北条君の手を振り解き

北条君より前をバク宙して先に駆け出す

「そんなんじゃ一生捕まえられないよ?」

と私は笑って言う

「僕は頭脳派なんだ。必ず捕まえるよ。」

と北条君は不敵に笑った

私達は救命ボートがある避難場所へと走った


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