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第32話 ヒーローではないけれど

海が急に大嵐になった

先程まで穏やかな風が吹いていたのに

ここまで急に大荒れするなんて天変地異とか言いようがない

この大嵐に飲まれればこの豪華客船は沈み

大量に死人が出ることだろう

こんな嵐が急にくるなんて

秘宝ネメシスの災いか

あるいは人魚が起こしたものなのか…

私が嵐を眺めて考え事をしていると

急にズボッと私に救命胴衣をパパが着せた

「わっ!」

驚いて声をあげる

「ぼーっとしている暇はない!早く避難するぞ!」

とパパは私の手を取り避難場所へと向かう

怪盗マジカルや革命家グループの人質騒動、それに人魚が現れたこともあり一般客はほとんどもう既に避難場所へと集められているのは不幸中の幸いだ

避難場所にパパが私を送り届けた後、パパが私に言う

「このみ。愛してる。このみが幸せに生きてくれたら俺はそれ以上何も望まない。絶対に危険なことはするな。必ず生き残ること。いいな?」

「パパは?」

「俺は警察だ。一般市民を守ることが俺の仕事だ。1人でも多くの人の命を救わなければいけない。」

「死なないよね?」

「…ごめん。このみ。約束は出来ない。」

「そうだよね…。パパはそういうと思った。」

「ごめんな。こんなパパでごめん。絶対に死なないと約束出来るかっこいいパパでいたかったけどな…俺はそんなに強くないから。」

「あのね。パパ。パパが1番強くてかっこいいよ。私は色んな人を見てきたから知っている。パパの強さを。私が我儘言ってパパに絶対に死んで欲しくない。一緒に逃げようとお願いしたらきっとパパは生きてくれることわかってる。でもさ…パパは強くてかっこいいからたくさんの人を救いたいんでしょう?だから止めないよ。」

「仕事だからだよ。本当はこのみと一緒に避難したいけど…」

「わかってる。大好きだよ。パパ。たくさんの人を救ってあげて。」

「…最後ぐらい甘えさせてあげたかったのにな。不甲斐ない父親でごめん。」

「何言ってるの。また、会える。お家で待ってるから。お仕事頑張って。」

「そうだな。ありがとう。」

「いってらっしゃい。」

「いってくる。」

パパはそう言ってまだ避難が終わっていない乗客を救いに行ってしまった

「さてと…」

どうしようか

この嵐はおそらく秘宝ネメシスか人魚の仕業だ

人魚の方はルイくんと仲良くやってるはずだが、喧嘩でもして嵐を起こすような事態にでもなったかもしれない

秘宝ネメシスの方はおそらく今は怪盗マジカルの手に渡っている

怪盗マジカルや、北条奏多君が秘宝ネメシスの預言の力を使ったとは考えにくい

おそらく秘宝ネメシスの預言の力を使ったのは所有者の五十嵐承太郎だろう

災いが秘宝ネメシスによりものではないのなら

秘宝ネメシスの預言の力を利用してこの嵐を止めることは可能かもしれない

どうせ野垂れ死ぬならば

生き残る可能性のあるものを利用しよう

怪盗マジカルはこの大嵐の中、傘で飛んで逃走することは不可能だ

それならこの豪華客船に潜んでいる

怪盗マジカルもとい

九条姫華が

九条さんは秘宝ネメシスの披露パーティに招待されていたので、堂々と豪華客船に入っていた

秘宝ネメシスが手に入った後、怪盗マジカルの姿のままでいるわけがない

今はただの九条姫華のはず

どこかで避難している九条さんを見つけ出して秘宝ネメシスを譲ってもらうしかない

私は怪盗マジカルの正体を知っている

そして…九条さんの想い人が真田胡桃であることも知っている

脅迫の交渉材料としては十分すぎる情報のはず

物語の役者になることは避けたかったが、ここで大量に人が死ぬのは夢見が悪すぎる

私はヒーローになる器ではない

それでもここで傍観して死を待つほどモブではないようだ

まぁパパの子だからかな

怪盗マジカルは秘宝ネメシスを北条君の部屋で奪った後、革命家グループの人質達を助けに3階まで登っている

それなら…九条さんの避難場所は屋上デッキ近くかな

私は九条さんを探しに屋上デッキへと向かった

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