第12話 人質配信
「ついてねぇ…」
俺は10名の人質に運悪く選ばれてしまった
これでは怪盗マジカルも映せないどころか
豪華客船で何が起こっているかもわからない
最悪だ…
“人質とか本当にやばくね?”
“この豪華客船には警察がいるんだからすぐに対応して解放されるよ。”
“でも警察は怪盗マジカルを捕まえなければいけないし、寧ろこの展開はありがたいのでは?”
「あの…橘直人さん?は何者なのですか?どうしてこんなことを?」
と俺は橘直人に話しかける
「俺はこの世の悪を殲滅することを目的としている革命家transparentのリーダーだよ。」
「それは大層大きな夢ですね…それなら怪盗マジカルと同じ目標なので手を取り合って活動出来るのでは?何故こんな敵対するようなことを?」
「敵対するつもりはない。ただ怪盗マジカルに会いたい。それだけだ。」
「会う為に俺達を誘拐したと?」
「そうだ。」
「しょうもねぇーーー!!早く解放しろ!!なんで俺は怪盗マジカルの厄介ファンの巻き込まれ事故を喰らわないといけないんだよ!!」
「そういうわけにはいかない。人質としてぱっくんには働いて貰う。」
「は?俺を狙って誘拐したのか?」
「当たり前だ。」
「この様子も生配信されているが?犯罪を生放送されてもいいのか?」
「寧ろ生放送して欲しいからぱっくんを攫ったんだよ。俺達は人質に全く危害を加えなかったと証明出来るからね。」
「危害を加えないとわかっているなら俺は強行突破させて部屋から出るけど。」
「それだけはダメ。それにぱっくんにとっても悪い話ではないだろう?怪盗マジカルが助けにくれば近くで会えるんだよ。」
「怪盗マジカルが人質を助けるなんてことをするか?怪盗マジカルの目的は秘宝ネメシスを奪うことだけだろう?俺達のことなんて助けにくると思えないけど。」
「でも助けなければ民衆からの支持は落ちるだろう?俺は人質に危害を加えないと宣言しているけれど、怪盗マジカルはそれを知らない。人質が殺されるかもしれない状況で見放すようなことをすれば民衆からの支持は落ちてただの悪党として扱われる。それは怪盗マジカルにとって致命的なのではないか?」
「怪盗マジカルが民衆の支持を気にして宝を奪っているとは思えないけど。」
「この世の悪を嘲笑う。これが怪盗マジカルのキャッチフレーズだ。怪盗マジカルは民衆もとい弱者の味方であるべきなんだ。」
「人質を助けない怪盗マジカルは悪になるってことか。」
「そうだ。正義の名の下に活動が出来ないのは痛手だろう?だから怪盗マジカルは必ず会いにくるよ。俺にね。」
「本当かなぁ…。」
どうして必ず会いに来るなんて自信があるのだろうか
怪盗マジカルのことは俺は何でも知っていますという
古参特有の気持ち悪さというか
そういうものを感じる
絶対全然怪盗マジカルのことなんて知らないくせに
怪盗マジカルのことなんて謎だらけで誰も素性はわからないのに
何故俺は怪盗マジカルのことは全てお見通しですよみたいな態度なのだろうか
「キャーーーーーーー♡ルイくんかっこいいーーーー♡♡♡」
桜田瑠衣のアイドルステージが始まったようで、ここまで大盛り上がりの声が人質の部屋まで漏れている
「いいなぁ…俺もルイくんのアイドルステージ見たかったのに…」
「そんなに好きだったのか?」
「えっと…曲は“沼っていいんですよ”しか知らないけど…」
「全国民が知ってる曲しか知らねーくそにわかじゃねえかよ。」
「それでも今!1番日本で輝いていて人気なアイドルステージは見てみたかったのに!!」
「今度桜田瑠衣のライブチケット取ってやるよ。」
「別にいらねぇ。」
「なんでだよ!見たいんじゃねぇのかよ!!」
「今ここにいるから見たいんだよ。俺は部屋からほんんど出ない引き篭もりなんだ。人混み多くて大変な場所はなるべく行きたくない。」
「今日は来たのに?」
「そりゃあ怪盗マジカルがいるからだよ!!五十嵐承太郎に何故か豪華客船に招待されたから来るしかないでしょ!?」
「俺も何故か招待された。どういう人選してるんだろうか。混沌とさせることが目的としか思えない。」
「怪盗マジカルを捕まえる作戦なのかも。」
「ちなみに怪盗マジカルは今、雲隠れしている。秘宝ネメシスもスモーク後もあってまだ盗まれていないようだ。」
「えぇーー!それなら会場に戻してよ!まだまだ怪盗マジカルが会場で大暴れする可能性があるのに!」
「どうだろう。怪盗マジカルは秘宝ネメシスよりも人質の救出を優先させるんじゃないかな。」
「いや…絶対秘宝ネメシス優先させるだろ…」
よく見ると人質にされた人はおっさんばかりだ
10人のおっさんが秘宝ネメシスよりも優先されるわけないのに
橘直人は何故そんなにも怪盗マジカルが善人のように見えているのだろうか
ただの悪党だと俺は思うけど
厄介ファンって本当に盲目だな




