第13話 【不幸なトップアイドル】
才能は開花したし
努力は報われたし
名声も手に入れたし
富だって多く手に入った
日本だけではなく、世界的なトップアイドルになった
トップアイドルはみんな輝いていて
みんな幸せだと思っていた
人を幸せにするアイドルという仕事に誇りを持っていて
幸せな人生を歩んでいるんだと
そう思っていたのに
現実はそう上手くいかない
アイドルオーディションを勝ち抜きCheckmateの歌担当として俺はデビューした
オーディションの様子からネットで話題になっていた俺達はデビュー後も人気ですぐにトップアイドルの仲間入りをした
Checkmateの5人で支え合ってトップアイドルとして走り続けると信じていた
それなのに現実は残酷だった
人よりも歌だけは上手かった俺はCheckmateの曲のほとんどの歌割りを歌うことになり
他の4人はバックコーラスのようになってしまった
俺達は5人のアイドルグループだったのに
“ルイのワンマングループ”
“ルイ以外はパッとしない”
“他の4人はルイの引き立て役”
等世間の評価は酷い言われようだった
俺はそんなことを言われるのが嫌で
俺だけ歌割りが多いのはやめてほしいとプロデューサーに訴えたが
「何故だ?」
「え?」
「何故ルイの歌割りを減らすんだ?」
「だって俺達は5人でCheckmateだ。俺だけじゃなくて他のメンバーにも魅力がある。俺だけ歌割りが多いのはおかしい。」
「おかしくないさ。確かに他の4人だって魅力はある。でもルイ。それはお前の足元にも及ばない。お前は正真正銘の完璧なアイドル。歌もダンスもルックスも完璧だ。ルイが中心のアイドルグループになるのは当たり前だろう?」
「他のメンバーだって頑張っているんだ!他のメンバーをバックコーラス扱いするのはおかしいだろ!!」
「ルイの隣で歌わせて本当に大丈夫か?」
「当たり前だ。」
「無理だよ。ルイ。実力差がありすぎる。ルイの隣で歌わせるなんて罰ゲームだよ。ルイの比べたら下手くそすぎて聞けないね。」
「そんなこと…!!」
「そんなことあるんだよ。ルイの隣で歌うなんて申し訳ないけど他のメンバーには荷が重いよ。」
「じゃあ俺が歌わずに他のメンバーにスポットライトを当てる曲にすれば…」
「そんなこと誰が望んでいる?世間はルイの歌声を求めているのに何故そんなことをする必要がある?」
「だってこのままでは他のメンバーが…あまりにも可哀想だよ。俺と一緒に毎回必死に練習しているのにこんな扱いあんまりだ。」
「仲良しこよしでアイドルはやれないんだ。オーディションで勝ち上がったならわかっているだろう?」
「…。」
「ルイが活躍すればメンバーも喜ぶさ。ルイは前だけ向いて走り続ければいい。」
そう言われて走り続けたが
他のメンバーとの溝は深まるばかりで
妬みや嫉妬で押し潰されそうになった
限界が来て俺はCheckmadeを抜けることにした
2年間活動し、卒業した後のCheckmateは俺が抜けてからは人気が低迷し結局解散することになった
もっとメンバー達と上手く話し合っていれば
こんな結末にはならなかったのだろうか
今更後悔しても遅いけれど
ソロとして活動することになり
俺はソロアーティストとして続けている
アイドルという肩書きを捨てて
アーティストに転身したことは
恋愛が出来るということだ
18歳になり成人した俺は
大人の世界に誘われることが多くなった
あからさまなハニートラップの誘惑
権力者が金で牛耳っていて
下の者を奴隷のような扱いをしている現場
枕営業をして芸能界を成り上がるタレント達
気持ち悪い悪意の中でこの業界は成り立っていたことを知る
アイドルで子供だった俺は事務所に守られていたんだと実感した
夢を売る仕事をしていたと信じていたけれど
現実はそうではなくて
大勢の汚い大人達の金儲けの道具として
俺は選ばれただけなのだと
偉い人の掌で俺は転がされてるだけの存在なのだと
現実を知ることになる
やめたい
逃げ出したい
何度もそう思ったが
桜田瑠衣という人間は日本中に知られており
どこに逃げても俺は指を刺される存在になる
危険な目に遭う可能性も高い
どこに逃げることも出来ずに
俺は偉い人の傀儡として今日も働かされている
夢を売って
人を幸せにしていると信じていたのに
金を搾取する亡者でしかない
桜田瑠衣という偶像を利用して
金を搾取しているだけだ
やめる勇気もなく
ただ惰性で仕事をしている
疲れた
誰か俺を終わらせてくれ
豪華客船での秘宝ネメシスの披露パーティに招待された
ただの会社の案件は普通は断るが
怪盗マジカルに逢えるかもしれない
俺は怪盗マジカルに逢いたくて秘宝ネメシスの披露パーティに参加することにした
豪華客船は大勢の人達が招待されており豪華な催しだった
秘宝ネメシスが披露されたと同時に
「この世の悪を嘲笑う。怪盗マジカル参上。」
と怪盗マジカルがシャンデリアの上にを現した
「美しい…」
魔法少女のような黒のドレスにレインボーの傘
一目で心が奪われた
こんなに胸が昂るのは何年ぶりだろうか
怪盗マジカルと仲良くなりたい
怪盗マジカルに逢いたい
世界中の人間を魅力して堂々と活躍している怪盗マジカルに憧れた
怪盗マジカルがスモークを焚いたその時に革命家グループが人を誘拐して人質を取った
怪盗マジカルに出逢う為だけに
豪華客船の会場は混乱し、パニック状態になっている
「さあ。行こうか。」
と俺はマネージャーに声をかける
「本当にこんな混乱状態の中歌うのですか?」
「今歌うことが今回の仕事だろう?」
「そうですが…」
「安心しろ。俺は桜田瑠衣。この世の全ての人間を虜にする男だ。」
「どうしたのですか?今日はやけに気合が入ってますね。珍しい。」
「怪盗マジカルに逢えたからね。テンションが上がっちゃったよ。」
「それはそれは良かった。最近元気なかったですからね。」
「時間だ。行くぞ。」
俺がステージに上がると
キャアアアアアアアアアアアア!!
と黄色い声援が飛んできた
「1秒俺に時間をくれ。不安も何もかも忘れるぐらいに1秒で虜にしてやるよ。」
ステージに上がりスポットライトを浴びれば
俺は無敵だ
誰もが振り向き魅了する
革命家も警察も怪盗マジカルでさえ
絶対虜にしてやるよ
怪盗マジカル
どうか俺を見つけてくれ
弱者の味方なら
俺をどうか救ってくれ




