47、因果
「気に入りか?」
「ぐえ、も、森の子よ。妖精付きの」
「だからなんだ」
紅茶を調達しに行ったシオン。
白狐を迎えに行ったエマ。
アルトが情報収集に励んでいたその裏で、ふたりは村の中を探索していた。
だが、この村で1番美味しい茶葉は、長の部屋にある。そうしてシオンは長の家へと戻っていた。
エマも同様。
音沙汰のない彼女を心配した白狐が、長の家の裏にいると小耳に挟んだので慌ててUターンしていた。
「犯人は現場に戻る」
「まだやってない」
ゲラゲラと笑いながら小屋へと戻り、メロンに会う茶葉を選んでいたところだった。勇者が乱入してきたのは。
勇者の懇願を尻目にあれでもない、これでもない、と紅茶を飲みあさる。10箱目を開封した段階で遠い目をしたデイビットに紅茶を振る舞っていると、槍表に挙げられるのだからたまったものではない。
勇者は適当にあしらった。
だが、そこで珍しい者を見つけた。
キラリとエマの瞳が輝く。
“森の子“だ。
かわいそうで、かわいらしい、愛しい憎しい、出来損ない。
「波長があうの。きっとまた長生きできないんだわ」
「エマが気にかけることか?」
「当然でしょ」
あんたは気にしなさすぎだ、とシオンの肩を小突く。仮にもそっちの管轄でしょうに。まったくもう。
「シオンがそんなだから、みんな…..うん?どうした?」
ついつい、と袖を引かれる。
視線を下げれば、白狐がジッとこちらを見上げて首を振る。どしたどした。
「や」
「なにが?」
「人間、や」
「え、森の子のこと?なんでそんなに嫌われてるの・・・?」
「や」
この場で人間といえば、エマと勇者一行だが、会話の流れ的に森の子を嫌がっているのだろう。
我儘が言えるまでに回復したことを喜ぶべきか、否か。
「うん、まあ、もう会うことはないだろうから。いっか」
「ここもや」
「イヤイヤ期かな?」
子どもの成長は早いと聞くが、爆速すぎやしないかい。出会ってまだ1年も経っていないのにイヤイヤ期なんて。お母さん寂しい、と白狐の顎をこねくり回す。
「メロン食べたら行こうね」
「なま」
「なま....?メロンは生だよ?」
「生ハムメロンの話ではないか?」
「やだ、高級思考」
おちおちおち、と顎を撫で頭を撫で今後の算段を立てていく。
白狐にとってこの村は害悪でしかないので連れていくつもりだったが、ご本人から催促されるとは。
嫌われたもんだな、とデイビットをチラリと見る。
「そういうことだから」
「そう、いう.....?」
「メロン食べたら出てく」
「え?!」
ほら、喜べよ。
念願の時だぞ、と声をかけるとデイビットが素っ頓狂な声を上げた。周りも驚いたようで彼を凝視している。長として失言に気づく様子もなく、デイビッドは「もう少し様子を見ては」と、エマに詰め寄る。
「本人が嫌だって言うから」
「だ、だが、その.....そうだ勇者!勇者と旅立ちが重なるのは、あまり気持ちの良いものではないだろう?」
「そうだよ!もう少しゆっくりして行きなって!」
「寂しいです」
「カエラを助けてもらったお礼もまだできてない!もう少し居てよぉ!」
「助けたの勇者じゃん」
「あいつはただ吠えていただけです」
「ねー!ねー!いいじゃん。あと1日だけ!3日だけぇ」
「増やすな増やすな」
デイビッドの声を皮切りに、ロッティたちが寂しいと騒ぎ出す。エマの手を取り嫌だ嫌だと振り回す。
妹が黙っていないぞ。
脅しても駄目なら躾直すと腕を上下に回す。それでいいのかお姉ちゃん。
「送迎会!送迎会しよう!」
「いいな、そうしよう!」
「は?」
「そうと決まれば食事だ!」
「いや、いいって」
「コナーちゃん、食糧庫へダッシュ」
「はい、姉様」
どうせ周りが喧しいのだから、さっさと村を出たいエマの思考とは裏腹にすいすいと話が進む。まるで流れるプールでも泳いでいるかのよう。
姿を消したコナーに続いて、デイビッドまで動くのだから止めようがない。
はぁ、とため息をひとつ。
「側近の子がまたうるさいよ」
「ルイは黙らせる」
「えー?本当でござるかー?」
数日前の嫌悪はどこへやら。
大手を降り始めた長に、エマは意味がわからないと首を傾げた。
最近の若者の情緒はジェットコースターみたいだ。
「そういえば親方どこ行った?」
「青少年の教育に悪いゆえ、ここからは大人になったらな」
「え、こわっ」
おお、盗賊よ死んでしまうとは情けない。
いつも、いいね・ブックマーク・評価ありがとうございます!
気にいりましたら、ブックマーク・いいね・下の⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎評価をよろしくお願いします!




