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堕落聖女と変態魔王  作者: 竹輪
〜邂逅編〜
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44、現実



結論から言えば、

ルークの情報収集は上手くいかなかった。


誰もが否定した。

誰もが首を振った。

長は勿論、訪ねる獣人たちはルークの話すら聞こうとはしなかった。



「命の恩人になにも感じないのか!?」


「そもそも、お前たちのせいだろう!」



村に入れたのは人間で、村の結界を破壊したのも人間だ。ならば癒すのは当然で、感謝を望むなど烏滸がましい。獣人(かれら)の言い分は一貫して変わらなかった。

予想はしていたがこれほどとは。

根強い略奪の歴史は、世代を超えても憎悪となって降り積もったままだ。

流れない、流れることはない。

それが実体験でなくとも。



「......レオくん」


「.........」


「レオくんなら」


「...........」


「どうしてなにも言ってくれないの?」



レオくんはなにも言わなかった。

デイビッドの腰にしがみ付いて、その腹に顔を埋めていた。

怒りに濡れた桃色が向けられる。

ルークが言葉を詰まらせる。

恐怖からではない。その瞳があまりに悲痛な色をしていたからだ。



「被害者ぶるのは止めて、今すぐに村から消えてくれ」


「そんな言い方」 


「人間が獣人を殺した。その事実に代わりは無い、違うか」


「襲ったのは盗賊で、俺たちは関係ないと何度も」


「誰のせいで!っ、誰のせいで、レオがひとりになったと思っている」


「ーーっ!?」



レオくんがひとりに。

殺されたのか、盗賊に。

紡ごうとした言葉が喉の奥でつかえて、口だけがはくはくと動いた。

レオくんはまだ幼い。あまりにも早すぎる別れに、ルークは拳を握った。

すまない。

掠れた声が吐き出される。

声も聞きたくないのだろう。レオくんはデイビットの服の中へと顔を埋めてしまう。

ルークは心臓を抑えた。

胸が痛い。喉が詰まる。でも、それでも



「理解したか。それなら、さっさと荷物をまとめて村から」


「だとしても、」


「お前まだ」


「だとしても、お願いだ。情報が欲しい」


「ーーっ!いい加減に!」


「大切な子なんだ!」



喉が張り裂けそうだった。

自分の言葉がどれだけ身勝手に聴こえるか、ルークは理解しているつもりだ。それでも、サラを見捨てるわけにはいかなかった。



「頼む。彼女を、サラを助けたいんだ」



ルークはゆっくりと頭を下げた。

個人の罪を種族で償えなんて、理不尽極まりない言い分だと思う。だがそれを被害者にいうのは違う。



「お願いだ。ただ助けたいだけなんだ。

聖女喰いの情報さえ貰えれば、俺たちはすぐに村を離れる。だから頼む。サラを助けるために、知っていることを教えて欲しい」



理不尽な目に遭ったのは被害者とその家族だ。傷付いた家族に追い討ちをかけるのは違うと、ルークは言葉を飲み込み頭を下げる。

彼らに示せる誠意は、それしか持っていなかった。だがーー



「はっ、」



ーーー返って来たのは嘲笑。


思わず漏れたであろうその声は、次第に大きくなってルークに降り注いだ。



「あ、はは、はっははは!は、はは....はぁ....」



笑っていたのはディビッドだ。

唇を噛み締める。



「情に訴えるかければ絆されると?本気で思っているなら滑稽だな」


「..............っ!」


「お前の言葉は軽い。軽すぎる。直前まで俺たちを罵り嘲っているからだ。言葉に誠意が見えないんだよ」


「罵り....?まて、そんなことは」


「お前はな。だが仲間は違う。お前が助けたいと、大切なんだと吠えた相手は俺たちを見下していたぞ」


「サラが?そんなはずは」


「個体の識別はしていないが、声は常に聞こえていたぞ。獣風情がと罵った声がな」



耳がいいんだ。俺(・)た(・)ち(・)は(・)獣(・)だ(・)か(・)ら(・)な(・)。(・)

自虐を交えた言葉はあまりにも冷たい。

口元は笑っていても、鋭い眼光がルークを突き刺した。



「お仲間がそれだ。お前がそうでないと、誰が信用出来る?」



絶句。

サラが?そんなはずはない。

彼女は確かに王族だが、種族を理由に相手を差別するような性格ではない。

猫を被っていたのか?

本来の気質は王族特有の傲慢の塊で、種族の違いを理由に相手を見下すような下郎と同じだったのか。

あの、サラが?



「ありえない」


「俺にはアレに助ける価値があるとは、到底思えない。悪いが消えてくれ」



戯言だ。

切り捨てられない自分がいた。

サラと出会ってから日は短い。本質を理解するには日が浅すぎた。

心ではそれを否定しても、理性がそれを否定してくれない。



「お帰りだ」



言葉に詰まるルークにデイビッドは話は終わりだと、護衛を動かす。

両腕を拘束される。

強制的に退出させる気か。



「待ってくれ!まだ話は」


「終わっただろう。即答できない。それが答えだ。さっさと出て行け」


「離せ、この....」



まずい。このままでは本当になんの情報も得られないまま、追い出されてしまう。なにか、なにか手は。

カチリ。食器の音を耳が拾う。視線を滑られせば、奥の席に美しい金色が



「エマちゃん!」


「...........え?わたし?」



優雅に紅茶を嗜む少女が、訝しげな顔をしてルークを見た。



















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