↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
堕落聖女と変態魔王  作者: 竹輪
〜邂逅編〜
94/117

43、虚空


「サラ!」



叫んだ時にはもう遅い。

異変に気がつき、走り出した時にはもう骸骨は空間に吸い込まれていた。

伸ばした手はサラを掴むことなく、虚空を掻いて落ちた。カラリと彼女の杖が地面を転がる。



「くそっ」



サラが吸い込まれた場所に手をかざす。

なにもない。

獣人村の門のように魔法で隠されているわけではない。ただ存在しない。



「空間移転か」



決まった場所に移動するポータルとは違い、望む場所へと移動できる特異の魔法。

強力ゆえに禁書に封じられたはずの魔法がなぜ。



「聖女喰いです」


「アルト」


「小屋にいた聖女は根こそぎ持って行かれた。盗賊連中も半数も残ってません」


「盗賊も?」



聖女喰いは聖女だけを狙うはず。

訝しげな顔をするルークにアルトは、ただ「焼かれた」とだけ答える。



「他は」


「縄が切れてる連中は逃げたと思いますよ。腰が抜けてなければですけど」


「そっか、うん」



仲間でなければ用はない。

虚空に手を伸ばす。

あるはずの物を探して空間に手を添えるが、精霊たちは応えない。対極の属性ゆえか、それとも熟練度の低さゆえか。

焦る気持ちをグッと堪える。

ゆっくりと手を下ろした。

解析・分析はふたりとも専門外。同属性の熟練者であればと思うが、獣人は総じて魔法が不得手。あとは、あとは



「エマちゃんか」



協力は絶望的だ。



「聖女喰いの行く先に検討は?」


「ひとつだけ」


「ならそこに.....いや当てずっぽうで行くのは、盗賊から情報は?引き出せない?」


「ルーク」


「盗賊の根城は?近くにないかな、地図とか情報があればそれで....あ、探知!アルト確か探知魔法が」


「ルーク!」


「ーーっ」


「落ち着いてください。焦りは禁物だって、あんたも分かってるでしょ」


「だって!だって.......っ、目の前で消えたんだ。手を伸ばしてくれたのに、俺はそれを掴むことすら......」


「ルークが悪い訳じゃないでしょう」


「だとしても、勇者なら助けなきゃ。あの時、ちゃんと手を取ってサラだけでも」


「ルーク」


「.......ごめん」



ごめん。

深く息を吐く。顔を覆って、深く。

聖女喰いの情報は極端に少ない。居場所もそうだが、捕らえた聖女をどうするのか。それすら情報が無い。

名の通り食べるのか。売るのか。それとも、他の娯楽に消費されるのか

サラの顔が脳裏をよぎる。

温室育ちのお姫様が、耐えられる環境ではないと焦りすぎた。



「ごめん、それは言ったら駄目だった。冷静になるから、ちょっと待ってね」



吸って、吐いて、下を向く。

転がったサラの杖を拾い上げ握りしめる。

いま、不安なのは攫われたサラだ。外にいる自分が冷静さを掻いてどうする。

吸って、吐いて、上を向く。

狭まっていた視界が少しだけ広がる。



「はぁ.......盗賊から情報引き出せそう?」


「無理だと思いますよ」


「逃げちゃってるか」


「はい、それに、向こうも仲間のことでいっぱいいっぱいみたいなんで」


「そっか半分.....」


「はい、長を連れて早急に脱出でしょうね」


「分かった。彼らは止めておこう。やっぱりテックの所に行って」


「りょーかい。ルークは?」


「俺は獣人たちに聴いてみるよ」


「閉鎖的な連中ですよ?無理じゃないすか?」


「レオくんみたいに外に出てる子も居るみたいだし、長はその辺詳しそうじゃない?」


「そりぁ、まぁ」



アルトが渋るのは、獣人たちが人間に友好的ではないからだ。今回の騒動でそれは顕著になったはずだ。

悪いのは盗賊だが、聖女が居なければ侵入されなかったのも事実。

嫌悪の対象である人間を、獣人たちが区別してくれるとは思えない。



「聞くだけ聴いてみるさ」


「........無理はしないで下さいね」



視線の先をルークが追う。先には騒ぎを聞きつけた獣人たちの姿があった。

壊れた小屋を見て悲鳴や怒声が飛んでいる。聖女を憂う声はない。拾えるのは小屋の破壊と侵入者に対する怒りだけ。

最初から見込みは薄い。

それでも。



「きっと善意に種族は関係ないよ」


「.........」


「傷付いた獣人を癒したのはサラだ。感謝してる子もきっといる....でしょ?」


「.....あんたが、そう言うなら」


「うん」



脳裏に浮かぶのはエマとレオくん。

人族でありながら魔族に手を貸し、悪事を働くエマ。

獣人でありながら敵対している人族に友好的だったレオ。

手を取り合うのに種族は問わない。

ルークは固く杖を握りしめた。

















評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。