↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
堕落聖女と変態魔王  作者: 竹輪
〜邂逅編〜
89/117

38、盲目



「血も涙もない」



去って行く背中に吐き捨てる。

大人をたじろがせる威圧。魔王に見込まれたのも納得の力量だが、反比例して心が狭量過ぎる。

それに聖女を奴隷などと。

偏見は洗脳の影響か。



「それにあの口調、魔王に影響されているのは間違いないね」



洗脳されているのか、否か。

どちらにしろ、仲間に引き入れることは難しいだろう。親御さんには申し訳ないが、家に帰せるのは当分先になりそうだ。



「.......の力、やはり.........奪う者(キリアード)、なら、あの方が.......」


「サラ?」


「怒らせた......いえきっと違う。だって........から、でももし」


「サラ!」


「........っ!」


「どうしたの?考え事?」


「え、いえ」



銀色の瞳が揺れる。

視線は確かに合ったはずなのに、サラの瞳はルークを見てはいなかった。

彼の胸、その奥の奥。入れ物だけになったそれを、銀色は捉えてしまい口を噤む。

この強烈な違和感にルークは気付かない。彼にはサラの反応が悪いことが分かるだけ。



「もしかして、エマちゃんのこと?」


「えっ」


「そっか、サラは子どもに怒られたこととか無いよね。ビックリもするよ」



うんうん、と腕を組みルークは頷く。サラは王宮育ちのお姫様。周りの子どもたちも、さぞ教育が行き届いていたに違いない。

下町の子(クソガキ)どもは総じて生意気で口が悪いのでルークは慣れているが、初体験なら衝撃で硬直しても仕方がない。



「魔王の口調とそっくりだったろう?子どもって覚えたての言葉を意味も分からずに使うから、きっとその延長線だよ」


「...........そうですわね」



忘れがちだがサラは生粋のお姫様だ。

下町育ちのルークたちとは、感じるものも違うのだろう。

気を配ろう、とルークは見当違いな決意を固める。



「大丈夫。接して行くうちに慣れるよ」


「だといいのですが」


「嫌でもね。治療を続けるんだろ?獣人の子どもも似た感じだろうから、村を出る頃には慣れてるさ」


「.....ええ、そうですわね」



表情は変わらずに暗い。

よほど衝撃的だったのか、それとも。

腰元に視線を落とす。

ルークの腰に掛けられた聖剣。鞘に収まったままのそれは、外装以上にボロボロで鉄屑同然だ。ゴウトーで聖女たちから力を注いでもらったとはいえ、全世紀には程遠い。



「聖剣のことなら気にしないで。エマちゃんの協力は魅力的だったけど、仕方ないよ」



ため息混じりに吐いた言葉は、案外軽い音をしていて驚く。

落胆は少ない。

思った以上に自分は、聖剣に頼る気がないのかもしれない。

内心では疑っているのだ。

サラはこれを聖剣だと豪語していたが、残念ながらルークには鉄屑にしか見えない。

力を注げば聖剣に生まれ変わるなんて、夢物語を信じるほど無垢ではない。持ち歩いているのは一種のパフォーマンスで、サラのご機嫌取りに過ぎない。



「聖遺物もまだあるし大丈夫だよ」



元より使う気などないのだから。



「国境付近には優秀な聖女も多いから、そんなに心配しないでよ」



元気出して。

自分も残念だ、悔やまれる。そんな雰囲気を言葉に滲ませて、ルークはサラを慰めた。

相変わらず彼女の反応は薄い。

視線も前までは目を見て話していたのに、今はうろうろと忙しない。



「ええ、ええ、そうですわね。どうにかなりますわよね。きっと」


「うん」


「例え見えなくなろうとも。勇者なのですから、きっと」


「何か言った?」


「いいえ」


「そっか」



最後の言葉は聞き取れなかったが、ルークは深く追求をしなかった。尋問に向かったアルトの様子が気になっていたのだ。

遠い未来よりも目先のこと。

お姫様より親しい旧友のこと。

人の優先順位はいつだって、自分かそれに近しい者のこと。



「アルトの所に行こう。そろそろ何か聞けた頃だ」


「はい」



アルトが向かったのは村の外れにある馬小屋。捕らえた盗賊と聖女は、簡易的に作った檻の中に収容されているはずだ。

別々の檻にしたとはいえ、同じ場所に入れるのは如何なものか。

サラが苦言を呈していたことを思い出す。また気落ちするかもしれない。

恐る恐る隣を伺うと、意外にも冷静な顔つきをしていた。

ほっ、と息を吐き出す。



「出来れば、聖遺物の情報を引き出してくれてると良いんだけど」



ぽつりと呟いたのは願望。

面倒ごとは避けたい内心が漏れて、馬小屋へと向かう空へと消えた。





いつも、いいね・ブックマーク・評価ありがとうございます!


初めての方も

気にいりましたら、ブックマーク・いいね・下の⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎評価をよろしくお願いします!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。