27、同類
「俺はかつて奴隷だった。助けてもらったんだ初代聖女様に、命を.....」
あの日の奇跡が未だ瞼の裏にある。
目を瞑れば凄惨な過去と共に、苛烈で美しい救済として消えることは無い。
「なんの話をしている」
「両親と引き裂かれ、奴隷商に虐げられ、悪趣味な人間に身体を暴かれそうになった」
「唐突になんだ」
「人権は無い。それどころか、生き物として扱われない。壊れるまで使われる道具だった。だったんだ」
あの日のお前と同じ。
己も奴隷上がりなのだとデイビッドは告げる。救世主が違うだけで、俺もお前も変わらない。
ルイがデイビッドを慕うように、デイビッドも初代聖女を慕っている。今もなお。未来永劫。なのに。
「助けて貰ったんだ。生き物に戻してくれた......感謝してもしきれないのに、俺は恩人に気付きもしないで」
後悔が溢れていく。桃色の瞳は涙に揺れ、覆う指先を濡らした。
確信はない。妄言であれと思う。
森での光景が初代聖女様に狂った己の幻覚で、エマは魔王を誑かす悪い人間だと信じたかった。
「魔王様、そうですよね?あの方なのでしょう?」
信じられなかった。
本能が理性を否定する。
例えその先に続く結果が、絶望だとしても本能に抗うことは出来ない。
「初代聖女様なのでしょう?」
カラカラと口が渇く。
ひりつく喉から声を絞り出した。
死にそうな顔をするデイビッドとは裏腹に、シオンは愉快だと口の端を歪める。それが答えだった。
「あ、ぁぁ...やはり」
「なんの話をしている?」
「ルイ、俺たちは取り返しの付かないことをした。もう戻れない」
「デイビッド?」
「思い描いた再会は二度と叶わない。己が手で壊した。壊してしまった」
「よく分からない。説明してくれ」
「エマさんだ」
「人間がどうした」
「初代聖女様なんだよ」
「は?」
「エマさんが初代聖女なんだ」
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