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堕落聖女と変態魔王  作者: 竹輪
〜邂逅編〜
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16、蜂蜜


右手にはハケ、左手に蜂蜜缶を携えてエマは一心不乱に木を汚す。

周辺の木々はすでに黄色に染まり、辺りは甘い匂いが充満していた。


ペタペタ、ぺたぺたた。

また一本、木が蜂蜜に染まる。

トロリと重みで下へと垂れて、蟻たちの餌となっていく。


ペタペタ、ぺぺたった。

甘い蜜を狙う無数の瞳が、こちらを監視していた。




***************



甘いは美味い。美味いは甘い。

甘くて美味しい蜂蜜を生物は求める。

人間も、動物も、虫も。そう虫。カブトムシ。小学生たちのアイドル。不屈にして最強のアイドル的存在の大好物(だった気がする)。彼も蜂蜜の虜だ。

木々に塗りたくっていれば、大量に集まること間違いなし。

完璧。完璧すぎる計画だ。



「しめしめ」



明日になれば、この場所はカブトムシの天国となるだろう。恰好の狩場の完成だ。

だがその中心には大嫌いな人間がいる。

大人たちは口々に言うだろう。



「あの森に近付いたら駄目よ」と。



獲りたい。でも近づけない。こんなに近くにいるのに、近寄ることすらできないなんて。

ジレンマ。不条理が胸を締め付け、網を片手に泣き喚く子どもたち。

中央には、悠々と紅茶を飲む嫌いな存在ランキング殿堂入りの人間。

彼らは地面を叩いて悔しがるだろう。

俺が、俺たちがもっと強かったら。

己の不甲斐なさに涙し嘆くのだ。



「ふ、ふふ、ふふふふふふへへ」



本日15本目の木に蜂蜜を塗りつける。

極上の嫌がらせだぜ。

エマは不敵な笑みを浮かべた。





おかしい。

林檎を食べながらエマは思う。

白い毛皮を背もたれに首を傾げる。

カブトムシって白だっけ。

もふもふで柔くて全長2メートルくらいあって、四つ足でワンと鳴いたっけ。



「わん!」


「カブトムシ......?」


「太郎、オオカミ」


「おおかみ」



太郎くんは狼らしい。

どうりで犬っぽいはずだ。

木 蜂蜜 集まるもの で検索をかけると田舎は“虫“だが都会は“狼“が出てくるらしい。

都会ってすげぇな。



「都会の狼って白なんだ」


「太郎は白」


「へぇ、都会ってすげぇな」



都会の狼は白いらしい。

遺伝子も高級なのか。田舎とは大違いだ。肉ではなく蜂蜜で集まってくるところが、またセレブっぽい。

田舎の狼たちは飢えた獣だが、都会の狼たちは優雅に蜂蜜を嗜むようだ。

現に隣にウサギがいても、鼻の先で突くだけで食べたりしない。

都会は優雅だ。



「りんご、美味い?」


「うん」



ちゃかちゃか足音。

新たに灰色狼がバスケットを咥えてやって来た。

果物をたくさん詰めたバスケットだ。

ゆ、優雅ぁぁあ〜。

灰色狼はエマの近くにそれを置くと、前足で太ももにちょいちょいと触れた。

食べろ、と言うことだろうか。



「ありがとう」


「うっふ」



灰色狼が伏せの体制をとるので、頭を撫でてやる。意外にも毛並みはサラサラで、マドラ思い出した。

あいつ元気かな。

ご飯食べ過ぎてないといいな。



「俺も!」



隣でくつろいでいた男が頭を下げる。

頭上の黒耳が垂れていた。

撫でやすくしてるのかな。

おしおし、と蜜のある黒髪を撫でてやる。パタパタッと尻尾が揺れた。

都会には白い狼もいるし、蜂蜜派だし、バスケットで果物持ってくるし、獣人の男が一緒の群れに入れるらしい。

都会ってすげぇな。

無事に帰れたら、田舎に住むママンにも教えてあげよう。








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続きは今日中に投稿予定です。

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