↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
堕落聖女と変態魔王  作者: 竹輪
〜邂逅編〜
56/117

4、白狐



育児。

それは忍耐力。

育児。

それは気力。

育児。

それは体力。


意思疎通の叶わないやわふわな生物を、いかに理解し不快にさせず成長させるかというミッション。

エマは疲れた顔で思う。

世のお母様方には、頭が上がらないなと。

本物は白狐(これ)の3倍、いや10倍は過酷なミッションを熟しているのだ。

口の端から笑いが漏れる。

ママってすげぇ。




******************





白狐が熱を出した。

魔法は便利だが、身体にかかる負担も大きい。弱った白狐ではなおさら。

はふはふと荒い呼吸、リンゴのように真っ赤な顔から玉のような汗が溢れる。

3時間おきの食事。

定期的な水分補給。

着替えに風呂に薬の調合指示。

床に伏せる小さな身体の世話は、エマの身体には負担が大きかった。

覚悟はしていた。だが予想よりもはるかに重くのしかかる負担は、エマの睡眠を削った。

最近では、食欲不振まで。



「前は飲めたんだけどな」


「串焼きは食べ物だが?」


「飲めるように食べられたってこと」



48本目の串焼きを頬張る。

美味い。 もう一本。

差し出されるがまま49本目を頬張る。その目下には、色濃いクマが居座っていた。



「すこし眠ったらどうだ」


「誰かさんが、お世話できればね」


「余に任せよ!」


「白湯に激辛スパイス入れた奴の自信とは思えないな」



これを完全な善意でやっているから、頭が痛い。キラキラした瞳に疲労が募る。

犯行同期は「汗をかかせるため」。

熱を出した時は汗をかかせた方がいい。

エマの指示に従った結果が、白湯に激辛スパイスを盛るという暴挙。叱ろうにも叱れない。



「本当にいてくれて助かったよ。ありがとうね」



敬服と困惑が混じった複雑な視線を、シオンに向ける少女に感謝を述べる。少女はぶんぶんと首を振ってから、申し訳なさそうに眉を下げる。



「でも、何もできてない」


「あたしも、買い物くらいしか」



瞳にあるのは哀愁。

当初、向けられていた敵意の眼差しは、ここ数日ですっかり色を変えていた。

歯痒いのだろう。

ゆらゆらと色が揺れている。



「そんなことないよ。買い物に食事に、たくさんお世話になってる」


「でも、でも肝心なところはエマさんに任せきりで!本当はわたしたちが、どうにかしないといけなかったのに」


「助けてもらったうえに、世話まで・・・隈が・・・」


「いいよ、適材適所だよ。これに関しては仕方がない。それに好きでやってるから」


「エマさん・・・」


「ごめんなさい。わたしたちが、わたしたちが、いけないのに」


「不信感を持たせたのは、わたしたち。強引にでも救出していれば、そうしたらーーー」



彼女はその先を、言葉にはしなかった。

結果論だと理解しているのだ。

なにを言おうとも、どう悔いようとも、救出できなかった事実が変わることはない。


そうしたら、触れられたのに。


希望は希望でしかない。

ここにあるのは拒まれたという事実と、人間(てき)に頼るしかない己の不甲斐なさだけだ。



白狐を保護して5日目。

未だ同胞は、エマ以外を受け付けない。





いいね、ブックマークいつもありがとうございます!

初めての方は、ぜひポチッとしていって下さいね!



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。