21、日記2
「これはまた......」
「凄いですわね........」
サラが口籠る。
ページを巡るテックも苦い顔をしていた。共に覗き込んでいたアルトですら、眉を顰めている。
悩んでいるのではない。
必死に笑いを噛み殺しているのだ。
「すっごい立派なおじさん構文だね」
「.......っ!ぶはっ!!」
ルークの一言で、アルトついに吹き出した。
ミーから渡された日記は、写しというだけあり紙は綺麗な物だった。これなら破れる心配もないと、テックは意気揚々と日記に手をかけた。
「さてと、なにが書いてある......ん?これは.....うん?すまん、俺には読めない」
「獣人族の言葉ですの?それなら、わたくしが読めますけど.......?なんですの?これ」
「姫様でも読めませんか」
「獣人語ではありませんわね。それに、なんでしょうこれ。読めるのに読めないと申しますか.....暗号でしょうか」
「日記なのに暗号はないでしょ。どれ、オレにも見せてくれます?」
「どうぞ」
「えーと、なになに「聖女様のお目々の色、すっごく綺麗(*´∀`*)!まるで女神様、みたいだヨ(^з^)-☆」」
一文を読んだアルトが黙った。
ゆっくりと顔を上げてルークを見ると、また視線を日記に下げて、またルークを見た。
翡翠の瞳が虚に揺れている。
「「今日は大変だったネ!!聖女様、ホントウに、頑張ってたヨ(*^▽^*)ボクがたくさん、ヨシヨシしてあげたいナ.....なんちゃって(^^)!」」
「アルト」
「「聖女様のために水曜日お休みにしちゃったよ(ハート)」夜はオジサンのために、空けてくれるカナ!?久しぶりのデート」
「アルト!もういい!もういいんだ!」
「で、でも勇者さん読まないと....これを解読しないと聖剣が」
「俺の呼び方まで変わってるじゃん!」
よせよせ、とアルトから日記を取り上げる。
日記には、世にいうおじさん構文と呼ばれるものが並んでいた。
日記から魔力の反応はない。つまり幻覚ではない。あのエルフがこれを書いたのだ。
「な、なにかの呪いですの?」
普段から声を荒げないルークの反応に、サラが只事ではないと感じたのだろう。緊張した面持ちで杖を握りしめている。
「呪いです」
「え?!」
「いや、ある意味そうだけど。呪いじゃない!呪いじゃないから!」
「でも呪いって」
「あ、ある一定の年代のオジサンにしか掛からない流行病みたいなものだから!!」
「オジサンにしか.....流行病、テック!?」
「なんで俺を見るんですか」
「だ、だって、あなたもう」
「まだ26歳ですけど」
「え?」
「え?」
「え?」
え?30歳過ぎじゃないの?
こうしておじさん構文による騒動は幕を閉じた。
テックの心を犠牲にして。
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