20、日記
ゴウトー街に戻った一行。
浮かない表情のサラを連れて、安宿の扉を潜る。
薄暗く狭い室内で4人が立つのは難しい。
サラをベットに座らせて、ルークは丸椅子に腰掛けた。アルトはその隣に、テックは扉の近くで腕を組む。
手早く防音魔法を貼ると、ようやく一息ついた。
「埃っぽいな」
「この街で1番安い宿だからね」
「これが宿.....?物置ではなくて?」
「オブラートにきっつい事を......」
掃除用具入れかと思いましたわ、とサラ。
失礼な、立派なワンルームだぞ。
「どうしてここに?」
「誰が聞いてるか分からないから、防音魔法掛けられる場所に行きたかったんだ。しばらくは我慢して、方針を決めたらすぐに出るから」
「酒場よりはマシでしょ」
「酒場は、少なくとも蜘蛛の巣はありませんのよ」
「実は機嫌悪かったりする?」
「悪くない方が、いらっしゃいますの?」
手は上がらない。
確かに気分は悪かった。
己が犯してもいない罪を責め立てられて、気分の良い人間などいない。サラはともかくルークは特に。
前勇者との間に血縁関係はない。身内でもなければ、親しい友人でもない。まったくの赤の他人なのだから、理不尽としか言いようがなかった。
「妖精もエルフも、人間とは価値観が違うから仕方ないだろう」
そう思うしかない。
「彼らは個じゃなくて種としての意識が強いから。たぶん、顔の区別とかもついてないんじゃないかな」
同じ姿形でも人外。
人間とは根本的に違う生き物だから、その価値観が違うとしても仕方がない。それに不満はあれど文句は言わない。代わりにこちらもアレらに深く関わることはしないと、ルークは決めていた。必要な時に必要なだけ関係を持つ。それだけ。
「ほら、暗い顔してないで。さっさと日記を確認して、ここから出よう」
ルークが手を打った。
自論は別にいい。それよりもやることが山盛りだ。
手短に日記を確認して、早くここを出るとしよう。
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