15、密約
「単刀直入に申し上げます。どうか、聖遺物をこの街に持ち込まないで欲しいのです」
誠実な声色からはおよそ想像も出来ないような願いに、ルークたちは言葉を失った。
回収を急かされるならば理解できる。
だが、その逆を願われるとは想像もしなかった。
困惑する一行の反応を予想していたのか、聖女長は特段焦る様子も無く言葉を続けた。
「今日、この街を見てみてどう思いましたか?」
「抽象的だな」
「違和感がありませんでしたか?」
「特には........」
「魔物を誰がひとりでも見た方は?」
「そう言えば見てないな」
「わたくしも、魔物に襲われた方の治療はしておりませんわね」
「オレも見掛けませんでした」
「俺も」
そういえば、とルークが呟く。
バリケードを築いている最中に魔物は見掛けなかった。
「おかしいと思いませんか?いまこの街には結界が半分しか無いのに、魔物すら見掛けないなんて」
「元々魔物が少ない地域じゃないのか?」
「いいえ、毎日のように魔物が街に降りて来ていました。数は少ないですが、集団で来る時も珍しくありません」
「あ、だから」
昼間、ルークがバリケード作りの手伝いを申し出ると、街人たちはとても喜んでいた。
なんでも、猫の手も借りたい状況らしい。
魔物の気配も無いし、そう急ぐことはないだろうに。心配性だなとその時は思ったが、元々魔物の出現率が多いのなら納得がいく。結界が半分しか無いいまは好機。魔物たちが逃すとは思えない。
ルークが掻い摘んでつい説明すると、サラが首を傾げた。
「確かに毎日のように姿を見せていた魔物が、突然姿を消したのなら、違和感がありますね」
「でもそれが、街に聖遺物を持ち込まない事とどう関係してるんだ?」
「聖遺物が魔物を呼び寄せているのです!」
落ち着いた雰囲気から一変し、テックの言葉に聖女長が食いつく。飛び掛からん勢いに一歩引いた彼が、落ち着けと彼女を宥めた。
「おいおい、急に大きな声を出すなよ」
「す、すみません」
態度の急変に魔法による洗脳を疑ったのだろう。サラがこっそり浄化の魔法を掛けていたが、やはり変化は見られない。
操られていない。精神汚染もない。
あれが彼女の素の感情だ。
よほど聖遺物に対して恨みが強いのか。
なんにしろ、謎多き代物だ。少しでも情報が得られるなら行幸である。
聖女長が呼吸を整える。
話を促すと、咳払いをひとつ付いて話し始めた。
「順を追ってご説明いたします」
続きは23時頃になります!




