14、内緒話
「あんがとな兄ちゃん!」
街人に手を振ってルークは教会に戻った。
時刻は黄昏時。あたりはすっかり暗くなり、長い影が後ろからゆらゆらと付いてくる。
思ったよりもバリケード作りが難航した。
手際の悪い彼らのペースに合わせたのは、悪手だったかもしれない。夕飯には間に合うだろうか。腹の虫に急かされて、ルークは足を速めた。
ようやく教会に辿り着くと、テックが鳩を飛ばしていた。
「テックさん」
「ん、ルークじゃないか」
「鳩ですか?」
「おお、王様にな。サンタフの所業をびっっっちり書いてやった」
「それはそれは」
降格かな。降格だといいな。
笑って王都へ旅立つ鳩を見送る。
「枢機卿に対しての罰ってどんな感じ?」
「減俸が基本だが、流石に今回はそれ以上の厳罰が下るとは思うぞ」
「そっか」
左遷されればいいのに。
舌打ちと共に聞こえて来た女性の声に振り返れば、白いフードを目深かに被った少女が去っていった。聖女だ。
テックと顔を見合わせて頷く。
サンタフの支持率はすでに奈落。
認識を擦り合わせ、ふたりは教会へと戻った。
**********
「それじゃあ、報告を聴こうかな」
日も完全に落ちた時刻、報告会としてルークの部屋に仲間たちは集まっていた。各員がそれぞれの場所で得られた情報を報告していると、コンコンと扉を叩く音が聞こえた。
テックが柄に手をかける。
アルトも袖に手を忍ばせていた。
報告会のことはメンバー以外に告げていない。つまり、夜更けにルークの部屋を訪れる不埒者がいるということ。
教会はまだ結界内だが、魔族が入り込んだ可能性も否定できない。
緊張した面持ちでルークは口を開いた。
「どちらさまですか?」
「やぶ遅くに申し訳ありません。聖女長です。内密のお話があります」
「聖女長?」
こんな時間に話とは、緊急だろうか。
視線を寄越すサラにルークが頷く。
念の為にテックに扉を開けさせると、そこには聖女長が深刻な面持ちで立っていた。
テックの姿に目を見開いて驚く。
「出直した方がよろしいでしょうか」
「俺に用事が?」
「いえ、皆様にお話があってきたのですが.....」
「緊急か?」
「はい」
「聴こう」
緊急だと言うくせに、慌てた素振りを見せない彼女を不思議に思いながらも話を促す。
だが、目を伏せるだけ。
これは本格的に怪しい。やはり聖女長は誰かに操られているのではないか。
疑念を抱き始めた頃、ようやく彼女は口を開いた。固く、緊張した声だった。
「部屋にお邪魔してもよろしいでしょうか。ここでは誰が聞き耳を立てているか分からなくて」
「......いいよ、入って」
「ありがとうございます」
ほっと胸を撫で下ろす。
試しに解除魔法を掛けてみたが、変化は見られない。
緊張していただけか。
問題ない、とサラたちに視線を送った。
テックは柄から手を離したが、アルトは警戒姿勢を崩さずにいる。そんな様子に気付いた様子のない聖女長は、蝋燭を棚に置くと深々と頭を下げた。
「まずは感謝を、それと謝罪を」
「謝罪?」
「単刀直入に申し上げます。どうか、聖遺物をこの街に持ち込まないで欲しいのです」
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