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第十六話 「阪堂の計らい」
阪堂はいち早く視聴覚室を出て、部室へと向かうと
ブルペンにいる一輝の存在に気付いた。
「あいつ・・・」
マウンドからホームベースを眺める一輝に
「おい、そこで何してるんだ。」
腕組みをした阪堂が尋ねた。
「虎さん・・・」
阪堂は後輩の中で一輝にのみ
下の名で呼ぶことを許していた。
阪堂は、一輝がやっていたホームベースに視線を向けると
転がっているボールが視界に入った。
おもむろにボールを手に取り、一輝に対して
「お前の球を見せてみろ」
と打席に入る。
阪堂の目は、何かに迷っている一輝を導くような先輩としての優しさがあった。
一輝は
「分かりました」
と一言告げて、目を閉じる。
止まない雨音を感じながら、
風で木がなびくさまを感じながら、
打席に立つ阪堂の覇気を感じながら、
一輝は、その一瞬に身をゆだね
一球を投じた。
阪堂は一輝の球を見て
瞬間的ながら感じてしまった。
「 恐ろしい 」 と。




