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可能性

レオンの遺体を公民館へ運び終えた頃には、夜はすでに明けていた。


外では朝日が昇り始めていたが、公民館の中だけは冷たく重い空気に包まれている。


残された九人は、それぞれ距離を取るように椅子へ腰を下ろしていた。


誰も口を開かない。


誰も隣に座る人間を信用していなかった。


長い沈黙を破ったのは、ヴィクターだった。


「……これで九人になった。」


深く息を吐く。


「また一人、守れなかった。」


その声には隠しきれない疲労と後悔が滲んでいた。


しかし、その言葉を遮るように椅子を引く音が響く。


ガタンッ。


立ち上がったのはイーサンだった。


「……もう限界だ。」


鋭い視線で全員を見渡す。


「やっぱり怪しい奴から縛るべきだ!!」


その怒鳴り声が公民館中へ響き渡る。


ヘイズは深くため息をついた。


「……またその話か。」


「当たり前だろ!」


イーサンは勢いよく振り向く。


「何もしなかった結果がこれだ!」


「毎日誰かが死んでるんだぞ!」


ヴィクターが静かに尋ねる。


「……誰を縛る。」


その一言で空気がさらに重くなる。


ミアが驚いた表情で口を開いた。


「ほ、本気で言ってるの?」


イーサンは迷うことなく答えた。


「昨日、納屋にいなかった奴らだ。」


その瞬間、公民館の空気が一変する。


クレアが首を傾げた。


「納屋……?」


カイが静かに説明する。


「昨夜、人狼の正体を暴くため、四人で納屋から村を見張っていた。」


昨夜、納屋にいたのは――


イーサン。


ヘイズ。


カイ。


アレックス。


四人は朝まで一緒にいた。


互いに証人がいる。


つまり、自由に動けた可能性があるのは――


ライアン。


ヴィクター。


クレア。


ノア。


ミア。


この五人だった。


イーサンは五人を一人ずつ睨みつける。


「この中に……レオンを殺した奴がいる。」


ミアの顔が青ざめた。


「わ、私じゃない……。」


ノアも静かに首を横へ振る。


「僕も違う。」


クレアは何も言わず俯いている。


ライアンはまっすぐイーサンを見つめ返した。


「証拠は?」


「ねぇよ。」


イーサンは即答した。


「でも可能性は高い。」


ライアンは静かに言い返す。


「また可能性だけで人を縛るつもりか。」


「じゃあ他に方法があるのか!!」


怒鳴り声が公民館中へ響く。


ヘイズは立ち上がり、イーサンの肩を掴んだ。


「落ち着け。」


「離せ!」


「冷静になれ!」


「冷静でいられるか!!」


二人の間に険悪な空気が流れる。


誰も止めようとしない。


その時だった。


カイが静かに口を開く。


「……一つだけ。」


全員の視線が集まる。


カイは腕を組んだまま、ゆっくりと話し始めた。


「レオンの死は、今までと違う。」


ヴィクターが眉をひそめる。


「何が違う?」


カイは静かに答えた。


「傷だ。」


「ソフィアも、るんも。」


「二人とも喉を噛み裂かれて殺されていた。」


「だが、レオンは違う。」


公民館は静まり返る。


カイは写真を見つめながら続けた。


「胸には一本の深い刺し傷。」


「首には浅い切り傷。」


「人狼の殺し方とは明らかに違う。」


誰も言葉を発しなかった。


今、この村には――


人狼とは別に、人を殺した”誰か”がいる可能性が浮かび上がっていた。

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