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包囲網

立ち上がったのはイーサンだった。


「……もう限界だ。」


重苦しい空気を切り裂くように、その声が公民館へ響く。


「あと何人死ねば分かる?」


「ソフィアが死んだ。」


「オスカーも死んだ。」


「……次は誰だ。」


イーサンは勢いよく机を叩いた。


ドンッ!!


「やっぱり怪しい奴から縛るべきだ!!」


その怒鳴り声に、公民館がざわつく。


ノアは顔をしかめながら口を開いた。


「縛るって……誰を?」


イーサンは迷わず一人へ視線を向ける。


「ライアン。」


ライアンは黙ったままイーサンを見つめ返した。


「ソフィアは最後までお前を疑っていた。」


「そして、その翌日に殺された。」


「偶然にしては出来すぎてる。」


カイが静かに口を開く。


「だから、それは人狼の誘導かもしれないと言ったはずだ。」


「誘導?」


イーサンは鼻で笑う。


「全部可能性の話だろ。」


「だったら一番怪しい奴を縛るしかねぇ。」


ヴィクターが静かに口を挟んだ。


「……それで違っていたらどうする。」


イーサンは黙る。


ヴィクターは続けた。


「もしライアンを縛り、その夜に人狼がライアンを殺したら。」


「お前がライアンを殺したも同然になる。」


イーサンは何も言い返せなかった。


重い沈黙が流れる。


その時だった。


レオンが静かに口を開く。


「……じゃあ、誰も縛らないのか。」


「昨日あった靴跡から何か分からないのか?」


全員の視線がカイへ向く。


カイは深くため息を吐き答えた。


「できない。」


少し間を置き、首を横に振る。


「……いや、仮に分かったとしても危険だ。」


「これは人狼がわざと残した可能性が高い。」


「みんなの靴を確認したが、一致する者はいなかった。」


誰かが小さく息を呑む。


カイはさらに続ける。


「つまり、人狼は『この村の誰かが正体だ』と俺たちへ思わせたい。」


「疑心暗鬼を利用して、俺たち同士を争わせようとしている。」


誰も反論できなかった。


公民館には重苦しい沈黙だけが残る。


━━━━━━━━━━━━━━


会議が終わり、それぞれ帰ろうとした時だった。


「……ちょっと待って。」


ノアの声が響く。


ヘイズ。


ライアン。


アレックス。


カイ。


レオン。


イーサン。


六人が足を止めた。


ノアは机の上へ一枚の村の地図を広げる。


「僕から提案がある。」


全員が地図を覗き込む。


ノアは村の中央を指差した。


「人狼は毎晩、必ず誰かを襲う。」


「なら逆に、待ち伏せすればいい。」


ヘイズが首を傾げる。


「……待ち伏せ?」


「うん。」


ノアは古びた建物を指差した。


「ここ。」


「村の中央にある古い納屋。」


「ここなら村のほとんどを見渡せる。」


全員が黙って耳を傾ける。


「四人は納屋で待機する。」


「人狼が現れたら、すぐに囲む。」


さらに指を動かす。


「残り二人は、納屋から死角になるレオンさんの家の近くで監視してほしい。」


イーサンは腕を組み、鼻で笑った。


「そんな都合よく現れるか?」


カイは迷いなく答える。


「現れる。」


「ここ半年、人狼は一日も欠かさず誰かを殺している。」


「今夜も必ず現れる。」


静まり返る公民館。


その時、壁にもたれていたアレックスが低い声で言った。


「……悪くない。」


その一言で、張り詰めていた空気がわずかに変わる。


誰もが心のどこかで思っていた。


今夜、人狼を捕まえられるかもしれない。


しかし、その作戦が思いもよらない結末を迎えることを、この時の彼らはまだ知らなかった。

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