疑惑
喉は深く裂かれ、胸には獣の鋭い牙が食い込んだような跡が残されていた。
その場にいた誰もが言葉を失う。
カイは震える手で数珠を強く握り締め、小さく目を閉じる。
「……南無阿弥陀仏。」
アレックスはゆっくりとしゃがみ込み、地面に残る血痕と足跡を見つめた。
しばらく辺りを見回した後、静かに口を開く。
「……これは熊じゃねぇ。」
全員の視線がアレックスへ向く。
「人狼だ。」
誰一人、その言葉を否定する者はいなかった。
残った村人は――11人。
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その日の昼。
生き残った11人は再び公民館へ集められた。
誰も口を開こうとしない。
重苦しい沈黙の中、最初に立ち上がったのはイーサン・カーターだった。
「……昨日、ソフィアは誰を疑っていた?」
誰も答えない。
いや、答えは全員分かっていた。
イーサンはゆっくりとライアンへ視線を向ける。
「ライアン。」
「ソフィアは最後まで、お前を疑っていた。」
その一言で、公民館の空気が凍りつく。
ヘイズも険しい表情でライアンを見る。
クレアは何も言わず視線を逸らした。
ミアは俯いたまま両手を強く握り締めている。
アレックスは壁にもたれ、腕を組んだまま静かに様子を見ていた。
全員の視線を浴びたライアンは、小さく息を呑む。
「……違う。」
「昨日はみんな疑い合っていただろ。」
「その中で、たまたまソフィアが殺されたからって俺が怪しいなんて、おかしい。」
イーサンは一歩前へ出る。
「どう考えても現状、一番怪しいのはお前だ。」
「ソフィアはお前と口論になった。」
「そして翌朝、ソフィアは死んだ。」
「……これを偶然で済ませるつもりか?」
ライアンは拳を握り締める。
「俺じゃない!」
その声が公民館に響く。
レオンは深いため息をつき、ノアは不安そうに周囲を見回した。
その時、カイが静かに口を開く。
「だからと言って、それが証拠になるわけじゃない。」
イーサンは鋭く睨み返す。
「証拠?」
勢いよく机を叩く。
ドンッ!!
「ソフィアは死んだんだぞ!!」
「しかも最後まで疑っていたのはライアンだった!」
「これを偶然で片付けるのか!!」
カイは表情を変えない。
「昨日は黙っていたのに、今日は随分と騒ぐんだな。」
「そんなにライアンを犯人にしたいのか?」
一瞬、公民館が静まり返る。
ライアンはゆっくり立ち上がった。
「……俺じゃない。」
イーサンは即座に返す。
「じゃあ誰だ。」
「……分からない。」
「そんな答えが通るか!」
再び机を叩く。
その音にノアは肩を震わせ、ミアも思わず身を縮めた。
アレックスは壁にもたれたまま、一言も発しない。
ただ全員を静かに見つめていた。
その時、ヴィクターが口を開く。
「……落ち着け。」
しかしイーサンは止まらない。
「村長、あんたは甘い!」
「このままじゃ全員殺される!」
「150人いた村が、もう11人しか残ってないんだ!」
「何もしなければ、この村は全滅する!」
ヴィクターは静かに問いかける。
「……では、どうするべきだと言うんだ。」
イーサンは迷うことなく答えた。
「怪しい奴から縛るべきだ。」
ライアンが睨み返す。
「……俺を縛るっていうのか。」
「ああ。」
イーサンは力強く頷いた。
その時、ノアが震える声で言う。
「もし……違ってたらどうするんだよ。」
「まだライアンだって決まったわけじゃ……」
「黙れ!!」
イーサンの怒鳴り声が、公民館中に響き渡った。




