最初の犠牲者
「それとも認めたかった?」
レオンが静かに口を開く。
「村人が夜になると化け物になるなんて。」
ヘイズは何も言い返せなかった。
公民館に重苦しい沈黙が流れる。
すると今度は、ノアが勢いよく立ち上がった。
「……じゃあ! アレックスさんはどうなんだ!」
全員の視線がアレックスへ向く。
アレックスはゆっくりノアを見る。
「俺?」
「人狼だから、並外れた強さをしてるんじゃないのか!?」
ノアは止まらない。
「熊を素手で倒したとか、他にも色々聞くし……明らかに人間離れしてる!」
アレックスは鼻で笑った。
「俺が人狼なら、お前らはとっくに死んでる。」
誰も言い返せなかった。
その一言だけで部屋は静まり返る。
やがてミアが口を開いた。
「やっぱりライアンが怪しいよ。」
ライアンは机を叩いた。
「なんだと!?」
「すぐに疑いの目を向けてくるお前も怪しいだろ!」
するとヘイズが再び口を開く。
「逆に、ずっと黙ってるカイやイーサン、それにクレアさんも怪しく感じるよ。」
イーサンはため息をつく。
「くだらねぇ話してるからだろ。」
その時だった。
「もうやめろ!!!!」
村長ヴィクターの怒鳴り声が、公民館中に響き渡る。
全員が口を閉じた。
ヴィクターは一人ひとりを見渡し、静かに言った。
「お前達の気持ちはよく分かる。」
「だが、今ここで疑い合ってどうする。」
「根拠のないまま殺し合えば、人狼の思う壺だ。」
誰も返事はしない。
ヴィクターは深く息を吐いた。
「今日はもう帰れ。」
「戸締まりを忘れるな。」
「夜は絶対に外へ出るな。」
少し間を置き、続ける。
「何があってもだ。たとえ誰かの叫び声が聞こえても。」
その一言で会議は終わった。
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皆、それぞれ無言のまま帰路につく。
オスカーは家へ向かいながら、誰かの視線を感じた。
足を止める。
ゆっくりと振り返る。
誰もいない。
風で木々が揺れる音だけが響いていた。
「……気のせいか。」
そう呟くと、オスカーは家へ入り、静かに戸を閉めた。
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夜。
月は雲ひとつない空に浮かんでいた。
村には虫の鳴き声だけが響いている。
午前二時。
突然――
「きゃあああああああああぁぁぁ!!!」
女の悲鳴だった。
村中に響き渡る。
オスカーは飛び起きた。
反射的に窓へ近寄る。
しかし、その手は止まる。
夜に外を見るな。
この半年で、生き残った者達だけが守り続けてきた唯一のルールだった。
悲鳴は数秒で途絶えた。
その後は静寂。
何も聞こえない。
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夜が明ける。
恐る恐る家を出る十二人――
いや、もう十二人ではなかった。
公民館の前でクレアが震える声で言った。
「……ソフィアが……いない。」
全員でソフィアの家へ向かう。
玄関の扉は内側から壊されていた。
壁には鋭い爪痕。
床には大量の血。
そして家の裏庭。
ソフィアの遺体が転がっていた。




