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蒼い瞳の王子アズラルと仮初めの婚約⑪ 罪と告白

挿絵(By みてみん)

⑪ 罪と告白


アズラル様の部屋の扉に手を掛けた瞬間。


「パル!」


背後から声を掛けられた。ドキっとする。

ザーッと全身から血が引く。

グッと一旦目をつぶって振り向くと、アズラル様が立っていた。


「会いに来てくれたのか?」


微かな期待を含んだアズラル様の笑顔。

それ以上に深い疲労の色が全身から滲んでいる。


「……後でまとめて非難を受けるから、今だけ我慢してほしい。

……少しだけ、君に触れさせて」


泣き出すのかと思うような表情で、私に近付いてくる。


(だめ……お願いアズラル様……今はだめ……)


私の願いはむなしく、アズラル様は私に両手を伸ばす。

擦り寄るように。すがるように。

逃げようかと一瞬考えたけれど、足が動かない。


嫌だと拒否すれば、アズラル様は無理強いしないのも分かっている。

なのに私は声も出せなかった。


アズラル様の暖かい大きな手が、私の体を抱き寄せた。

……当然、私が服の下に隠し持っている宝帯が見つからないわけはない。

伸ばされた腕が宝帯にあたって、カチャンと音を立てた。


アズラル様が、目を見張った。私は目を閉じた。


「これは……?」


――――私は、全ての終わりを覚悟した。



「……どうして、持ち出したんだ?」


アズラル様の部屋で、私は、宝帯を前に座っていた。

アズラル様の口調は、低く、落ち着いていた。

けれども責められる以上に、私の胸は剣に刺されているような感覚。


大きく息を吸って、大きく吐いた。

すべて、明かすしかない……。


「父が、領地を賜ってすぐ、領地でいなごが大発生し、作物が全滅しました。

父は、私財を残らず投げ打ちましたが、全く足りませんでした。

そして、その時、目にした即位式の宝帯から、いくつかの宝石を抜き取り、偽物とすり替えて売ったのです。

領民は生き延びましたが、宝石は流れ、散りました。

私は、ここ数年それを集めてきました。買い戻す資金もなく盗みも働きました。

そして、今日、宝帯に戻したのです。アズラル様に精霊の祝福を受ける王となっていただくため、本日中に必要だったのです」


アズラル様は、言葉を失っているようだった。

しばらく考えて口を開いた。


「飢饉の際、こちらに訴えなかったのか? 王宮には非常時の蓄えがあったはずだ」


「……」


私は答えられなかった。父は何度も陳情をしていた。

でも、それはアズラル様のお父様である現王様や、王室を非難することになる。

でも、何も言わないことで、アズラル様は悟ったようだった。


「そうか……」


私は、身を粉にして他人のために尽くす父を心から尊敬していた。

人の命を救うため、犯罪に手を染めた。

もし、私が同じ立場でも、同じことをしたかもしれない。


私が、宝石を返したかった一番の理由は、父の全てを“罪人”として終わらせたくなかったからだと思う。

私は、目を伏せた。


「このために、王宮に入りました。どんな罰でも受ける覚悟はできています」


アズラル様は、ふと、窓の外に目をやった。一瞬、唇を噛んだ。


「もし、この件がなければ、パルは、あれほど私に尽くしてはくれなかったのだろうか?」


「……分かりません」


自分でも分からない。医者助手としての動きだったのか、信頼を得るためだったのか、個人的な感情だったのか。


しばらくの間の後、


「……処罰はしない。……できない。こちらにも大いに落ち度がある。君の父君に盗みを強いたのは政治の責任でもある」


アズラル様は、はっきりと言った。


「え……?」


「それに……惚れ薬で、君の意思を無視して側におこうとした。そんな私に何を言う権利がある? この件は私の胸に収めておく」


アズラル様は落ち着いた瞳で、まっすぐに私を見つめていた。

それから視線を落とし、小さくため息をつくる。


「……一つだけ、願わくば、早く私に相談してほしかった。

私には何でも話すように言いながら……パルは、私をそれほど狭量な男だと思ってたんだな……」


アズラル様は、口惜しそうにつぶやいた。


「そんなことは……」


私が無我夢中でおこなってきたことが最善だったとは思えない。

今になって思えば、もっと良いやり方もあったのかもしれない。

でも、ただの小娘がその時一人でできる最大限だった。


「殿下? いらっしゃいますか?」


ドアをノックする音がした。バタバタと慌ただしい足音がする。


「また、落ち着いたら話そう」


アズラル様は、私に目配せをして、外へと出て行った。

私は、いろいろな思いが巡って、しばらく動けなかった。

最終回まで1話

毎日21時投稿します。よろしくお願いいたします。


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