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蒼い瞳の王子アズラルと仮初めの婚約②王宮潜入の開始

挿絵(By みてみん)

②王宮潜入の開始


その日は家に帰ったけれど、私は殿下の症状が気になっていた。


過呼吸について、父が残した書物を調べる。

やはり、大きなストレスが原因であることが多いようだ。


ムーナ様が知っていたということは、舞踏会に何らかの要因があったのかな。


ストレスを軽くできるとしたら……。

私は、よい香りの白い樹脂と紫の花のオイルを調合した。


父は治療に役立てるために古今東西の文献を読み漁り、土でも草でも片っ端から研究していた。

人が癒される香りにも注目していて、私もそれを学んだ。


香りの調合は自分自身も癒されて楽しい。

火に焚べるお香にすることが多いのだけど、普段使いやすいようにキャンドルにした。


ムーナ様にお手紙を書いて送った。


『リラックス効果が高い薬草で作りました。もしよろしければ、アズラル殿下の治療にお試しください』


王室だから、そう簡単に試してもらえるとは思えない。

でも、父の贖罪と、国家の安寧のために私にお役目があるのなら、何かが繋がるような気がしていた。


二週間も経っただろうか。

ムーナ様から、王室にうかがうようにと連絡がきた。


馬車のお迎えもあり、恐縮した。

服は……どうしよう。


先日のワンピースは一日無理して着たら更にボロボロだし、仕方なく持っている中で一番ましそうな服を選ぶ。


ムーナ様が入口まで迎えにきてくださって、王宮の中に通された。

先日の舞踏会の時と違って、今日はとても静かだ。


応接室で待っていると、「光」が現れた。


アズラル殿下。


白い肌、淡い金色の髪、紺碧の瞳。

軽やかで優雅な所作。


容姿だけではなく、内から放たれるような神聖なエネルギーを感じる。

精霊に選ばれた一族の血とはかくあらんと思われた。


それとは別に、殿下の体調が良さそうでホッとした。

殿下の微笑みは軽やかだった。


「パル嬢。わざわざ呼びつけて悪かった。私はアズラルだ」


「……パル・マーレでございます」


私は深くお辞儀をした。


「うちで働いていた医師の娘だったんだな。先日は迷惑を掛けた」


「いえ、不躾な真似をして申し訳ございません」


アズラル殿下は爽やかに笑う。


「みっともない姿を見せたな。あの、いい香りのキャンドルもムーナが勧めて使っている。なかなか良いものだった。今後も頼むかもしれない」


「もったいないお言葉にございます」


「この度、呼び立てしたのは、褒美をと思ったんだ。何か望みがあれば叶えよう」


「望み……ですか?」


「ああ、気軽に言ってみてくれ」


私は考える。


「私を、こちらで働かせていただけませんでしょうか? メイドでも庭番でも構いませんので」


アズラル殿下は少し驚いた顔をした。


「君の父君は、どうしているんだ? 男爵だったろう? 子どもの頃、診てもらった覚えがある。代々王族の子どもは日に当たることが禁忌とされていたが、君の父君が熱心に訴えたお陰で、私は外で遊ぶことができたんだ」


「……そうでしたか。孤児院などで子どもを多く診ていましたので、経験上の判断だったのかもしれません。父は一昨年に他界いたしました。領地や屋敷もすべて公収されております」


「そうだったのか……」


アズラル殿下はしばらく思案していた。


「分かった。叶えよう。私も心強い」


眩しい笑顔に目がチカチカしたけれど、先日の姿が思い起こされて、逆に心配にもなった。

秘められた大きなストレスがあるのならば、決壊する前に昇華できたら良いのだけど。


私はムーナ様の助手になった。

とは言っても、医学を正式に勉強したわけではないから、汚れた器具や衣服を洗ったり、薬の材料を揃えたりという下働きだ。


それでも王宮深くに入って、外部からは決して分からないことを知ることもあった。

その大きなものは、現王様の病状だ。


ほとんどベッドから起き上がれない、かなりの重症。


父を認めてくださった前王様と違って、現王様は国民にとってあまりありがたい存在ではなかった。

増税を重ねる割には、災害や疫病への支出は抑えられている。


どこに消えているのか? そう言われることも多かった。


その答えも、私は王宮で知ることになった。

王子アズラル編です。最終回まで11話

毎日21時投稿します。よろしくお願いいたします。

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