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褐色の抱擁 ― 不器用な軍人マディラと泥棒娘の見合い特訓

挿絵(By みてみん)

①六連敗の軍人様


「マディラ様、私はパルと申します。元宮廷医の娘で、あなた様の相談に乗るように旦那様に依頼をされております」 


「……」


「何か気になることがありますか?」


「……」


「あの……マディラ様?」


「……」


お見合いが六連敗だそう。

そんな男性のお世話をすることになった。

私はパル。17歳になった。

お相手は、21歳、マディラ・シトリ様。王国親衛隊中尉で若きホープ。

何度か声を掛けるけれど、眉をしかめたまま無言。


聞こえていないわけじゃないと思うんだけど。


無視されているのかと思ったけれど、それも少し違う気がした。

マディラ様のご結婚がうまくいかないと、私がこの家に潜入した本来の目的も果たせない。


でもその日は、何もできずに終わってしまった。

シトリ家は代々軍務を務める武門で、数代前の戦功で男爵位を賜ったそう。

お会いしたマディラ様は、赤褐色の髪と青い瞳の青年だった。

軍人なだけあって、鍛えた体つき。見上げるほどに背が高い。


お見合いで惨敗するのはなぜだろう?

話すと威圧的なのだろうか。

確かに、もしこんな人が暴れたら、誰にも止められない。


次の日、男爵家のお庭では、マディラ様が剣の訓練をされていた。


「よし、来い!」


弟君と剣を合わせている。

弟君はまだ十代前半で、足腰も危うい。

マディラ様は、姿勢や持ち方を丁寧に教え、

「よし、うまいぞ!」と明るく笑った。


(……昨日のあれは、何かの間違いだったのだろうか……?)


訓練が落ち着いたころ、私は飲み物を二つ持って近付いた。


「どうぞ。マディラ様」


差し出すと、マディラ様はぎくりとして固まった。

飲み物を受け取ったものの、口にはせず、遠くを見ている。


(……どういうこと?)


弟君テオ様は「ありがとう」と言って飲み干した。


「兄さま、明日も練習できる?」


「ああ、いいぞ。勤務の前、朝一であれば」


テオ様が走って行き、私たちは二人になった。


「マディラ様?」


黙っている。

けれど、拒絶というより“どう接していいか分からない”という雰囲気。


「……無視されると、とても、傷付きます」


思わず言うと、マディラ様は、はっとしてこちらを見た。

初めて目が合った。

すぐに目を逸らしてしまったけれど。

そこに使用人が近付いてくる。


「マディラ様、王宮よりお手紙が届いておりますので、書斎の机の上に置かせていただいております」


「ああ、分かった」


はっきりと返事をする声。


(なるほど……女性が苦手なだけなんだ)


お読みいただきありがとうございます。軍人マディラ編6回予定しております。


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