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No.57 ガルダ:高度一万メートルの重圧と、雲上のIカップ・クッション

視界のすべてが、鋭角な「殺意」で埋め尽くされていた。


異世界の浮遊島、アビス・ハイツ。俺が今立たされているのは、直径わずか一メートル足らず、しかも表面が鋭く尖った正三角形の浮遊岩の上だ。


一歩でも重心を外せば、雲を突き抜けて一万メートル下の奈落へと直行する。


「……効率、成果、順位。上に行けば行くほど、足場は狭くなるっていうのは、どこの世界も同じか」


俺は、限界を超えた統計データアナリストの脳で、周囲の気流を演算する。


空を切り裂くような金属音が響き、上空から「トライアングル・カイト」の群れが急降下してきた。鋭利な三角形の翼を銀色に光らせ、それは精密な特攻機のように俺という「不安定な変数」を弾き飛ばそうと殺到する。


この重力加速に対抗するには、空を支配する圧倒的な質量が必要だ。


「出でよっ、ぱいぱいっ! ナンバー57!」


召喚の叫びが、薄い空気を震わせる。


直後、空から褐色の巨大な影が、弾丸のような速度で俺の目の前に着陣した。

ドォォン! と浮遊岩が激しく揺れ、俺の背後で猛禽類の巨大な翼が力強く羽ばたく。


「空の平和維持は、自分にお任せあれであります! 任務、了解ッス!」


現れたのは、猛禽を思わせる鋭い瞳を持つ少女、ガルダ。


風の抵抗を極限まで減らすための超軽量鎧。だが、その胸元は空戦用とは思えないほど大胆に開かれ、中には鎧の防御性能すら無効化しそうな、破壊的なボリュームを誇るIカップの双丘が収められていた。


挿絵(By みてみん)


彼女が着地した衝撃で、俺の足場である三角形の岩が、さらに激しく傾く。


「……一肆殿。自分、一つだけ確認したいことがあるッス」


「なんだ、ガルダ」


「……ここ、下を見ると、マジでシャレにならないくらい高い気がするんであります……ッス」


凛々しい軍人口調とは裏腹に、彼女の巨大な翼が小刻みに震え始めた。

彼女の誇り高きIカップもまた、高所恐怖症による激しい鼓動を拾い、鎧の隙間で波打つように揺れている。


最強の騎士もまた、俺と同じ「落下の恐怖」を背負ったまま、この絶壁に立っていた。



キィィィィィィィィィィン!


空気を切り裂く高周波の駆動音が、三方から迫りくる。トライアングル・カイトの鋭利な翼端が、太陽の光を反射して冷酷な銀色に輝いた。


標的は、この不安定な頂点に立つ俺たちだ。


「……一肆殿、一肆殿ッス。自分、報告があるでありま……あわわわ……!」


俺の背中にしがみつくようにして、ガルダの巨大なIカップが押し当てられた。


空戦用の軽量鎧は、風の抵抗を排除するためにその双丘を殆ど露出させている。肌理の細かい褐色の肌から伝わる熱量は凄まじい。だが、その熱量に反して、彼女のIカップは激しい痙攣のように細かく、不規則に振動していた。


「報告、承った。足が震えて、重心がブレてるぞ。このままじゃ、カイトが激突する前に、俺たちは滑落して終わりだ」


「面目ない……面目ないでありまッス……! 空飛ぶ騎士として、地面が見えないのは、その、計算外の恐怖でありまして……ッス!」


彼女の言葉通り、俺の脳内モニターには、ガルダのIカップがもたらす「不規則な荷重移動」がエラーログとして次々と出力されていく。


通常、このクラスの重量物は安定したジャイロスコープとして機能するはずだが、今の彼女にとっては、そのIカップの質量こそが、自分を奈落へ引きずり込むための重石と化していた。


「ガルダ、前を見ろ。あいつらの迎撃角は、俺たちの死角を正確に突いている。お前のその『質量』で、気流をねじ曲げろ。できるか?」


「……っ! 命令、受領ッス! 震えるのは脚であって、翼ではないでありま……ッス!」


ガルダは俺の肩を掴む手に力を込め、逃げ出したくなるような絶壁の縁で、無理やりそのIカップを突き出した。


重厚な褐色の双丘が、正面から吹き付ける強風を真っ向から受け止める。

空気抵抗の計算式を無視したその圧倒的なボリュームが、空中の静止摩擦を無理やり生み出そうとしているのを、俺は背中で感じていた。



「敵機、コンタクト……ッ! 迎撃用意でありまッス!」


俺たちの直前で、カイトの群れが三次元的な同時攻撃を仕掛けてきた。

鋭利な三角形の先端が、音速に近い速度で、俺たちの肉体を「カド」で引き裂こうと迫る。


俺は彼女の熱い背中に手を添えた。

ここからの演算は、もはや静力学の範疇ではない。


カイトが持つ「鋭角な殺意」を、彼女のIカップという「円満な絶対質量」によって完全に無効化する。

そのための数式を、俺は『π=314』という極限の収束値へと放り込んだ。



もう、逃げ場はない。三方向から殺到する三角形の死神が、俺たちの生存圏を削り取ろうと空気を切り裂く。


俺はガルダの震える肩を抱き寄せ、その巨大なIカップの重力中心に、指先からすべての熱量を叩き込む。


万物円満オール・ラウンド!」


放たれた『π=314』の波動が、彼女の褐色の肌の上を走り、空戦用鎧の隙間から溢れ出す双丘へと収束していく。


その瞬間、ガルダのIカップは神聖な風の衣を纏い、まるで巨大な浮力装置のように、周囲の気流を強引に自分へと引き寄せ始めた。


「あああ、もう、どうにでもなれでありまッス! 慈愛の暴風、受けてみるがいいッス!」


ガルダは恐怖を怒号に変え、迫りくるトライアングル・カイトに向かって、その圧倒的なIカップを真正面から突き出した。


本来なら、音速を超える三角形の刃が彼女の体を貫くはずの瞬間。

だが、その刃が彼女の胸に触れた刹那、物理法則が円満な力によって書き換えられた。


衝突のベクトルは、Iカップの柔らかな弾力によって瞬時に旋回運動へと変換される。


キィィィンという金属音が、ボフッという柔らかな抱擁の音にかき消された。


鋭利なカイトの機体は、彼女の胸の谷間に吸い込まれるようにして粉砕され、飛び散った破片は風の魔力によって白く丸い綿毛へと変質していく。


俺たちを貫うとした「鋭角なベクトル」が、彼女のIカップという「非線形緩衝領域」によって完全に中和されていく。


殺傷能力を持つ不連続なデータを、安全な定数へと平滑化する極限の正規化……。

それは、カドの立った悪意を、丸い安らぎへと強制的に置換する、大空の救済アルゴリズム……。


「……ふぇ? 痛くない……ッス?」


ガルダが恐る恐る目を開けたとき、俺たちの周囲は、かつての凶器が姿を変えた、数え切れないほどの丸い「羽毛クッション」で埋め尽くされていた。


俺たちは、空中に浮かぶ巨大な羽毛の海に支えられ、奈落への恐怖さえも、その柔らかさの中に溶けていった。



砕け散ったトライアングル・カイトの破片は、空を舞う雪のような羽毛へと変わり、俺たちが立つ不安定な岩の周囲に、巨大な「雲のソファー」を形成していた。


殺伐としていた浮遊島アビス・ハイツの空気は、今や春の午後のような柔らかな静寂に包まれている。


「……任務、完了でありまッス。一肆殿、怪我はないでありま……あ、あわわ、やっぱりまだちょっと足が震えるッス!」


ガルダは安堵の溜息を漏らすと同時に、再び襲ってきた高度感に腰を抜かし、俺を抱きかかえるようにして羽毛のクッションへと倒れ込んだ。


褐色の肌が放つ熱量と、軍用鎧を押し上げる圧倒的なIカップの質量。それが俺の全身を包み込み、墜落への恐怖を物理的な「安らぎ」で上書きしていく。


「……よし。一肆殿、このまま目を閉じるであります! 自分と一緒に、もっと高いところへ行くッス!」


彼女は震える翼を大きく広げ、俺をその巨大な胸の中に完全に埋もれさせたまま、さらに高く、雲を突き抜ける高度へと舞い上がった。


そこは、地上の喧騒も、誰かと競い合う序列も、何一つ届かない絶対的な解放圏。

俺を追い詰めていた「落下の恐怖」は、彼女の双丘が持つ圧倒的な浮力の前では、もはや無視できるほどの微小な定数に過ぎなかった。


俺は、限界を超えた統計データアナリストの脳で独白を開始した。


俺の精神を蝕んでいた「失敗すれば終わり」という名の境界条件が、彼女のIカップという名の無限緩衝材によって、完全に無効化されていく……。


『π=314』の演算が導き出した最終解は、重力加速度『g』をも包み込む、究極の浮遊状態……。


高い場所を恐れる必要はない。この丸くて温かい場所さえあれば、どこまで堕ちても、それは「着地」ではなく「抱擁」になるのだから……。


「見てください、一肆殿! 悩みなんて、あんなに豆粒みたいに見えるでありまッス!」


ガルダが、上気した顔で俺に微笑む。

雲の上、太陽に近いこの場所で、俺は彼女のIカップの海に溺れながら、どこまでも続く青い自由を噛み締めていた。


やはり、世界は丸いほうがいい……

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