表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
64/67

No.53 マリナ:泥船の脱出と、夜の海に浮かぶBカップの休息

俺は、異世界の「忘却の干潟」に浮かぶ、今にも崩壊しそうなボロ船の上にいた。


足元から染み込んでくる冷たい泥水を、錆びついたバケツで必死に掻き出す。だが、船底の穴は広がる一方だ。


周囲には、かつて誰かが投げ出したであろう、朽ち果てた「未完のプロジェクト」の残骸が漂っている。それらは俺を嘲笑うかのように、泥の中に音もなく沈んでいった。


「くそっ、またこの感覚か……」


逃げ場のない、沈みゆく泥船。前世で、終わりの見えない不採算事業に一人取り残されたあの日の絶望がフラッシュバックし、手足が凍りつく。


その時、静寂を破って泥の水面から、鋭利な刃物のようなサメの背びれが突き出した。


エッジ・フィン。

カミソリのような角を持つ凶器の群れが、船ごと俺を切り裂こうと旋回を始める。


俺は、泥水を掻き出す手を止め、震える声で叫んだ。


「出でよっ、ぱいぱいっ! ナンバー53!」


ぼよよぉんっ!


乾いた泥の音を打ち消す、潮風のように爽快で豪快な弾力音が響いた。


嵐のような光の中から現れたのは、派手な海賊帽を被り、片目に眼帯を光らせた男勝りな美女、マリナだった。日焼けした肌に海賊風のロングコートを羽織り、Bカップの双丘を凛として張り、彼女は不敵な笑みを浮かべた。


「安心しな、このオレ様が来たからには、どんな荒波も恐れるこたぁねえぜ!」


マリナは腰のサーベルに手をかけ、威勢よく言い放った。だが、泥船が波に煽られて大きく傾いた瞬間、彼女の顔面は一気に土気色に変わった。


「う、うわわっ!? 一肆、ちょっとそこを動くんじゃねえぞ!」


勇猛果敢な海賊の面影はどこへやら、彼女はなりふり構わず俺の腕にしがみついてきた。


その際、ロングコートから覗く彼女のBカップの胸が俺の腕に強く押し付けられる。日焼けした肌は意外なほど柔らかく、だが内側には荒波を越えてきた強かな芯を感じさせた。


「マリナ、もしかして泳げないのか?」


「う、うるせえ野郎だ! 泳げねえからこそ、絶対に沈まねえのがオレの流儀なんだよ! 泥船だろうが沈没案件だろうが、オレ様の旗を掲げた以上、底は踏ませねえぜ!」


彼女は震える足を踏ん張り、眼帯の奥の瞳を鋭く光らせた。周囲では、カミソリのようなエッジ・フィンが船体をガリガリと削り、浸水はさらに加速していく。


「沈んでたまるかってんだ……。おい一肆、ぐずぐずすんな! オレの胸を信じて、あのトゲトゲの連中を叩き潰す準備をしろ!」


マリナは恐怖を気合でねじ伏せ、Bカップの胸をグッと俺の方へ突き出した。溺れる恐怖を知る者だけが持つ、死に物狂いの覚悟がそこには宿っていた。


「逃がさねえぜ! 野郎ども、まとめて跳ね返してやる!」


俺はマリナの不敵な叫びに合わせ、彼女の引き締まった背中に手を添えた。沈みゆくプロジェクトの絶望を、彼女の誇りで円満な解決へと導く。


万物円満オール・ラウンド!」


俺が放った『π=314』の波動が、マリナの快活に跳ねるBカップへと集束していく。



「海賊の浮き輪バウンド!」


マリナは襲いかかる鋭利なエッジ・フィンの群れを、回避するどころかBカップの胸を張って正面から受け止めた。


本来ならその鋭利な刃が肌を切り裂くはずの瞬間、マリナの胸は超高度な弾力を持つトランポリンへと変質した。


ガツン、という衝撃音は、ポンッという軽快な反発音に書き換えられる。


Bカップの円満な魔力に弾き飛ばされたサメの背びれは、空中でその殺意を削ぎ落とされ、赤や青のカラフルな「丸い浮き輪」へと次々に姿を変えていった。


泥船の周囲に大量の浮き輪が溢れ出し、船体は沈むどころか、柔らかいクッションに支えられて水面へと浮上し始めた。


俺は、限界を超えた統計データアナリストの脳で独白を開始した。


沈没確実と目された負債という名の「スパイク・データ」が、彼女の弾力あるBカップという「弾性境界条件」によって完璧に正規化されていく……。

『π=314』の収束値が導き出すのは、溺れる恐怖を遊び場へと変える、究極の浮力の方程式だ……。


「あはは! 見ろよ一肆、最高のラフトができあがったじゃねえか!」


マリナは波に揺れる無数の浮き輪を眺め、勝ち誇ったように海賊旗を振りかざした。


「はぁ……なんとかなったな。野郎ども、いい浮きっぷりだぜ!」


マリナは乱れた海賊帽を直すと、甲板へとどっかと腰を下ろした。泥まみれだった干潟はいつの間にか澄み渡り、空には吸い込まれるような星空が広がっている。



俺は崩壊を免れた船の上で、ようやく安堵の息をついた。かつて俺を絶望させた「沈みゆく泥船」の影は、彼女が作り出した色とりどりの浮き輪の円満な輝きによって、すっかり霧散していた。


「一肆、こっちへ来い。戦い終わりの祝杯といきたいが、生憎酒は切らしててな。代わりに、最高の特等席を貸してやるよ」


マリナは無造作に俺の手を引き、自分の隣に座らせた。そのまま彼女は俺の頭を引き寄せ、日焼けした肌が眩しい、自身のBカップの胸元へと優しく沈めた。


「満天の星空クルーズだ。泳げねえオレが保証してやる。この腕の中なら、絶対に沈ませやしねえよ」


「……ありがとう、マリナ。すごく、落ち着くよ」


彼女のBカップの胸は、海賊らしく引き締まっていて、けれど驚くほど温かかった。波の音に合わせて上下するその鼓動が、逃げ場を失っていた俺の心を一定のリズムで整えていく。


世間の喧騒も、不採算な責任も、この柔らかな弾力の前ではすべてが遠い世界の出来事のようだった。


挿絵(By みてみん)


「いいか一肆、沈みそうなときはオレを呼べ。オレたちは海賊だ、泥船だろうがなんだろうが、丸く収めて進むだけだぜ」


沈没という最悪の「下方修正」が、彼女のBカップという「安全資産」によって完璧にヘッジされている。孤独な漂流を終わらせる、究極の収束点……。


溺れる恐怖を知る彼女の胸こそが、この不確かな異世界における唯一の不沈空母なのだと、俺は星々の輝きの下で解析する……。


「……ふん、野郎、もう寝ちまったのか。可愛いところがあるじゃねえか」


マリナの少し照れくさそうな声と、潮風の香りが混ざり合う。

俺は彼女の気高い胸の重みを枕にしながら、深い安らぎの中でまどろんでいった。


やはり、世界は丸いほうがいい……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

あとりえむ ゲーム広場
異世界転生した天才物理学者 IQテスト まあるい陣取りゲーム

あとりえむ 作品紹介
異世界転生した天才物理学者 やっぱりせかいはまあるいほうがいい S級清掃員 監査の魔王 至高のミミちゃんを見守る会

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ