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No.52 ゾーイ:崩壊する採石場と、不滅のBカップ・ストレッチ

俺は、乾いた砂埃が舞う異世界の「嘆きの採石場」で、終わりのない作業に追われていた。


目の前に積まれているのは、巨大で不気味な四角い骨のブロック。どれだけ高く積み上げても、見えない支配者に成果を根こそぎ奪われていく虚無感。


身も蓋もなくなるまで働き、骨と皮だけになるまで搾取される恐怖。前世の社畜時代に味わったあの絶望が、冷たい汗となって俺の背中を伝う。


その時、積み上げていたブロックが不自然に震え、一斉に崩落した。


「なっ、なんだ……!?」


崩れた骨は形を変え、カミソリのような角を持つボーン・スクエアとなって、俺を押し潰そうと四方八方から迫り来る。


死の予感に震える俺は、震える声で叫んだ。


「出でよっ、ぱいぱいっ! ナンバー52!」


ぼよよぉんっ!


乾いた石の音を打ち消すように、どこか頼りなくも弾力のある音が響き渡る。


光の中から現れたのは、あちこちに太い糸の縫い目がある青白い肌の少女、ゾーイだった。つぎはぎだらけの服を揺らし、Bカップの双丘を控えめに、けれどしっかりと弾ませて、彼女は屈託のない笑顔を浮かべた。


「あはは! 一肆、そんなに眉間にシワ寄せちゃって。生きてるのがもったいないねぇ」


ゾーイは迫り来る鋭利な骨のブロックを気にする様子もなく、ケラケラと笑った。彼女が首をかしげると、グギッと嫌な音がして、右腕が肩の縫い目からポロリと地面に落ちる。


「おい、腕が外れてるぞ! 大丈夫なのか!?」


「大丈夫、大丈夫。あたしはもう死んでるんだから、これくらい日常茶飯事だよぉ。それより一肆、あんなカドっちょだらけの骨、見てるだけで肩が凝っちゃうねぇ」


彼女は落ちた腕を左手でひょいと拾い上げ、それをバットのように構えて見せた。ボロボロの服から覗く彼女のBカップの双丘は、青白い肌に刻まれた縫い目とは対照的に、生き生きとした丸みを帯びて弾んでいる。重量感はないが、ゾンビ特有の不思議な粘り気のある弾力が、規律正しい円を描いていた。


「あはは、そんなにジロジロ見ちゃって。あたしのBカップ、なかなかの反発係数なんだよぉ? さあ、あたしの体を使って、あの四角い連中を丸くしてあげるよぉ。準備はいいかなぁ?」


ゾーイは胸を張り、迫り来るボーン・スクエアの群れに向かって、楽天的な一歩を踏み出した。


「あはは、それじゃあ一発、特大のストライクを狙っちゃおうかなぁ!」


俺は、ゾーイの屈託のない笑顔に背中を押されるように、右手を突き出した。彼女の楽天主義に、俺の演算を上乗せしてやる。


万物円満オール・ラウンド!」


俺の放った『π=314』の波動が、ゾーイの控えめなBカップへと吸い込まれていく。縫い目だらけの彼女の双丘が、物理法則を無視した弾性と引力を帯びて、青白く発光し始めた。


「よしきたぁ! ぽろりスカル・ボウリング!」


ゾーイは自分の頭を両手で掴むと、こともなげにポロリと外した。首のない彼女の体が、浮遊する自らの頭部をBカップの胸元で器用にリフティングする。


控えめな膨らみが、頭部が衝突するたびにボヨォンと弾み、魔力を充填していく。一肆の円満の力を得た彼女の胸は、衝撃を完璧な推進力へと変換する発射台と化していた。


「いっけぇー、あたしのスペア!」


鋭い角を立てて迫り来るボーン・スクエアの群れに向かって、彼女は胸元から頭部を豪快に射出した。


時速数百キロで回転するスカル弾が、四角い骨のブロックを次々となぎ倒していく。

激突の瞬間、角張っていた骨のエッジはゾーイの円満な魔力に触れ、瞬時に削ぎ落とされていく。


ガラガラと崩れ落ちる音は、いつしかポヨン、ポヨンという軽快な音に変わっていた。


採石場を埋め尽くしていた凶器は、今や手のひらサイズの柔らかい、パステルカラーの丸いストレスボールへと変質し、俺たちの足元を安全に埋め尽くしていった。


挿絵(By みてみん)


俺は、限界を超えた統計データアナリストの脳で独白を開始した。


身を粉にする労働という名の「損失関数」が、彼女のバラバラになる肉体という「非線形モデル」によって無力化されていく……。『π=314』の極限値が導き出すのは、崩壊すらもエンターテインメントに変える、究極の負の相関関係……。


「あはは! 大成功だねぇ、一肆!」


頭を首に戻したゾーイが、外れた左腕を振り回しながら、俺の元へと駆け寄ってきた。


「ストライク! 気持ちいいねぇ」


ゾーイは自分の頭をしっかり首に載せ直すと、足元に転がる無数の丸いストレスボールをパフパフと踏みながら、俺の背後に回り込んだ。


採石場の殺伐とした空気は消えたが、俺の身体には、長年の過酷な労働で蓄積された「絞り取られる恐怖」が、鉛のように重く沈殿している。


「終わったのはいいけど、なんだか身体が重いよ……。心がまだ、あの角張った場所に縛られてるみたいだ」


「一肆、それは良くないねぇ。身を粉にして働いた後は、骨を休めてあげなきゃ。あたしが特別に、限界突破のストレッチをしてあげるよぉ」


ゾーイが俺の背中に、柔らかいBカップの胸をぴたりと押し当ててきた。次の瞬間、彼女の腕が、人間では到底不可能な軌道を描いて俺の肩や腰を包み込む。痛覚がなく、関節の制限もない彼女の四肢は、まるで生き物のように俺の骨格を理想的な位置へと誘導していく。


「あはは、ここが凝ってるねぇ。えいっ!」


グギッ、ボキボキッ。凄まじい音が響くが、痛みは一切ない。それどころか、彼女の青白くも温かな体温が、ガチガチに固まった俺の神経を一本ずつ解きほぐしていく。


背中に感じるBカップの控えめな弾力は、彼女の「何が起きてもあははと笑い飛ばす」という楽天的な生命感そのものだった。


「……不思議だ。身体の芯から、重圧が消えていく気がする」


「そうでしょぉ? 骨格が正しくなれば、心も丸くなるんだよぉ。あはは、一肆の骨、いい音してるねぇ」


身を削り、搾取され続けた日々という名の「異常値」が、彼女の自由自在な関節運動によって、正しい「標準偏差」へと矯正されていく……。肉体の崩壊すらも許容する、究極のリラクゼーション・アルゴリズム……。


「一肆、そのまま力を抜いてぇ。あたしの縫い目みたいに、バラバラになってもまた繋ぎ直せばいいだけなんだからぁ」


ゾーイの腕が俺の胸元で交差され、深い安らぎの中で俺の意識は浮遊する。搾取の恐怖も、硬い規律も、彼女の柔らかなBカップとあり得ない角度の抱擁の前では、ただの心地よい微睡みに溶けていった。


やはり、世界は丸いほうがいい……

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