No.47 リルカ:小人族のHカップテイマーと命なき駒
白と黒のマス目がどこまでも続く、無機質で冷たいチェス盤のような空間。
俺の目の前では、底に鋭いトゲを生やしたチェスの駒、スパイク・ポーンが無数に行軍していた。
カシャリ、カシャリと規則正しい音を立てて前進する彼らに、個の意志や感情はない。
ただシステムの一部として命令に従い、最前線で消費され、すり減っていく使い捨ての駒たち。
その姿は、前世で組織の末端として擦り切れ、名もなき歯車として扱われていた自分の記憶と嫌でも重なり合った。
無価値な消耗品としての虚無感が、冷たい手で心臓を握り潰すように息苦しさを連れてくる。
この冷え切った無機質な盤上を、生命力あふれる温かい力でめちゃくちゃに壊してほしい。
俺は祈るような気持ちで魂の底から叫んだ。
「出でよっ、ぱいぱいっ! ナンバー47!」
ぼよよぉん!
小柄な体格には到底不釣り合いな、重厚でスケールの大きい弾力音が無機質な空間に響き渡る。
真っ白な光の中から飛び出してきたのは、巨大でもふもふの犬型魔法生物だった。
「いっけー! ぶっちぎるぞっ!」
元気いっぱいの声と共に現れたのは、その背中にまたがる小人族のテイマー、リルカだ。
動物の毛皮をあしらったポンチョを翻し、ツインテールを元気よく跳ねさせる彼女の胸元では、小さな体からは信じられないほどの質量を持ったHカップの双丘が、圧倒的な命の躍動を主張するように豪快に揺れていた。
「一肆、お待たせだぞっ! ……うわ、なんだこいつら。全然楽しそうじゃないぞっ!」
リルカは魔法生物の背からひょいっと飛び降りると、規則正しく無感情に迫り来るスパイク・ポーンたちを指差して顔をしかめた。
「あいつらは上の命令に従って、ただ消費されるだけの存在だ。昔の俺と同じ、使い捨ての駒なんだよ」
自嘲気味に呟いた俺の言葉を聞いた瞬間、リルカは元気なツインテールを激しく振り乱して怒った。
「バカ言わないでほしいぞっ! 使い捨ての命なんて、この世に一つもないんだぞっ! 一肆は一肆だぞっ! あんなカチカチでつまらない奴らに、一肆を重ねるなっ!」
彼女の怒りの声が盤上に響き渡った直後、無機質な行軍を続けていたスパイク・ポーンたちが一斉に不気味な跳躍を見せた。
チェス盤の空を黒く埋め尽くすほどの駒の群れが、俺たちを盤上のエラーとして排除すべく、底に生えた鋭いトゲを雨のように降らせてくる。
「あぶないぞっ! 一肆、ボクのそばを離れるなっ!」
リルカは小さな体を大きく広げ、俺を庇うように立ちはだかった。
その拍子に、彼女の体躯の半分を占めるのではないかというHカップの双丘が、使い捨てという概念に対する強烈な怒りと命の熱量を代弁するように、力強く波打った。
無数のトゲが俺たちを串刺しにしようと迫る中、リルカは一歩も引かずに空を見上げていた。
「一肆はボクの大事なパートナーだぞっ! 駒なんかじゃないっ、絶対守り抜くぞっ!」
彼女の小さな背中から溢れ出す、底知れぬ生命力と純粋な愛情。
その熱に当てられ、俺の心にこびりついていた無価値な消耗品というトラウマが、急速に溶け出していくのを感じた。
リルカ、お前のその規格外の柔らかさで、この無機質な盤上を命の色に染め上げてくれ。
俺は彼女の背中に手を当て、トラウマを完全に断ち切るためのスキルを起動した。
「万物円満!」
俺の『π=314』の波動が、リルカの小柄な体格を覆い隠すほどの巨大なHカップへと一点に収束していく。
「テイマー・ボール・キャッチだぞっ!」
リルカが大きく両腕を広げ、豊満な双丘を天に向けて突き出した。
降り注ぐスパイク・ポーンの鋭利なトゲが、次々と彼女の胸に激突する。
だが、肉を貫くような残酷な音は一切響かなかった。
彼女の規格外の柔らかさと、動物たちを包み込むような圧倒的な生命の熱量が、鋭い殺意を瞬時に無力化していく。
刺さるはずだった冷たい駒は、彼女のHカップに触れた瞬間、完全に毒気を抜かれた。
ぽすん、ぽすん、という心地よい弾力音と共に、無機質だったトゲトゲの駒は、赤や黄色、青といった色とりどりの柔らかいお手玉用ボールへと姿を変え、盤上のマス目の上へと無害に転がっていった。
無機質だった白と黒のチェス盤は、今やカラフルで柔らかいボールで埋め尽くされていた。
「へへん、あんなカチカチのトゲトゲ、ボクの胸にかかればただの遊び道具だぞっ!」
得意げに笑うリルカは、ふんすっと小さく鼻を鳴らし、両手で指笛を力強く吹いた。
ピーッという甲高い音に呼応するように、光の輪の中からふわふわとした毛玉のような魔法生物たちが大量に飛び出してくる。
「一肆、いつもお疲れ様だぞっ! ボクとこの子たちで、思いっきり甘やかしてやるぞっ!」
「え、うわっ!?」
リルカは俺の腕をぐいっと引っ張ると、そのままもふもふの動物たちの群れの中へと一緒にダイブした。
俺の体は動物たちの温かく柔らかい毛並みと、リルカの小柄な体から押し付けられる巨大なHカップの感触に挟まれ、底なしの心地よさへと沈んでいく。
俺は限界を超えた統計データアナリストの脳で独白を開始した。
使い捨ての駒という虚無感のデータは、彼女の規格外の柔らかさと、動物たちの体温が発する圧倒的な生命力のパケットによって完全に上書きされた……。
の演算結果が示す通り、この無条件の愛と毛玉の群れによるアニマルセラピーこそが、損耗した自律神経を癒やす究極の最適解なのだ……。
「一肆はボクの特等席にいるんだから、使い捨てなんかじゃないぞっ。ずっとここで、ボクたちと一緒に笑ってるんだぞっ」
「ああ、そうだな……。お前の特等席、最高に暖かくて柔らかいよ」
「だろだろっ! もっとボクの胸に顔を埋めていいぞっ!」
リルカの弾けるような笑顔と、動物たちの鳴き声、そして息が詰まるほどのHカップの重み。
俺は温かい毛玉の海の中で深く安堵の息を吐き、心地よい重力に身を委ねた。
やはり、世界は丸いほうがいい……











