No.33 サリア:妄想幼馴染の暴走とDカップのラッキースケベ
行きたくもない飲み会や、愛想笑いを強要される人間関係のノイズは、精神のバッファを無駄に食いつぶしていく。
前世の俺は、無理やり付き合わされた宴席のトラウマを抱え、同調圧力という名の不協和音に脳内メモリを削られていた。
そして現在、俺は異世界の街角を、鼓膜が破れそうなほどの大声に包まれながら歩いていた。
隣にいるのは、異世界風の学生服を着崩し、ふんわりとした茶髪のボブカットを揺らす人間、サリアだ。
彼女はなぜか山型食パンを口にくわえながら、制服の胸元で暴れるDカップの豊かな双丘を揺らし、存在しない記憶を大声で語り続けている。
「一肆ったら、昔からほんとドジなんだから! わたしがいないとダメじゃん!」
勝手に幼馴染という設定を捏造し、距離感ゼロで馴れ馴れしく接してくる元気いっぱいの彼女。
しかし、そのお節介で大きすぎる声と強引な同調圧力が、俺の脳内に前世の「飲み会のノイズ」のフラッシュバックを引き起こしてしまった。
唐突に、周囲の空間が暗く濁った宴会場の残骸へと変貌する。
空間の底から無数の割れたグラスが浮かび上がり、鋭利な破片の竜巻となって渦巻く魔物、シャター・グラスが出現した。
グラスがぶつかり合うガシャガシャという耳障りな音が、人間関係の軋轢の刃となって俺を切り裂こうとする。
足がすくむ俺をよそに、空気が読めないサリアは元気いっぱいの大きな口を開けて目を輝かせた。
「なにこれ、もしかしてサプライズパーティー!? 一肆ってば人気者でしょ!」
彼女は鋭い破片の竜巻を「友達の輪」だと盛大に勘違いし、特攻するように自ら竜巻の中心へと飛び込んでしまった。
当然、鋭利なガラスの破片は彼女を歓迎するわけもなく、サリアと彼女を慌てて追った俺を完全に閉じ込め、粉々に粉砕しようと全方位から迫り来る。
妄想と勘違いが招いた絶体絶命のピンチ!
俺はサリアを鋭い破片からかばいながら、限界の精神力で魂のスキルを発動した。
「万物円満!」
俺の『π=314』の力が、サリアの丸いエネルギーを百倍に増幅させる。
「もうっ、せっかくのパーティーなのに危ないじゃん!」
百倍のエネルギーを受けたサリアは、持っていた学生カバンの口を大きく広げた。
そして、Dカップの双丘を激しくバウンドさせる反動を利用して、カバンの中に凄まじい吸引力を発生させる。
「いっくよー、お約束ベーカリー!」
鋭利なガラスの破片たちは、彼女の胸の暴力的な揺れが生み出す引力に巻き込まれ、次々とブラックホールのようなカバンの中へ吸い込まれていく。
すべての破片を吸い込んだ後、サリアはDカップを大きく揺らしながら、カバンを洗濯機のように力強くグルグルと振り回した。
「はい、出来上がり!」
彼女がカバンをひっくり返すと、中から出てきたのは俺たちを切り裂こうとした鋭いガラスではなく、ふかふかに焼き上がった丸くて巨大な山型食パンの山だった。
戦闘は一瞬で終わり、人間関係の鋭い軋轢は、甘い匂いを漂わせる平和な焼きたてパンへと完全に作り変えられたのだ。
宴会場の残骸が消え、平和な街角へと戻る。
サリアはカバンを肩にかけると、俺にビシッと指を突きつけた。
「一肆、ちょっとそこに立ってて!」
俺が言われるがままに立ち止まると、彼女は少し離れた場所へ走り去った。
そして、先ほど出来上がった焼きたての山型食パンを口にくわえると、猛ダッシュで俺の背後へ突っ込んできたのだ。
「わわっ、遅刻遅刻〜っ! ……きゃっ!」
ドンッ、という衝撃と共に、彼女はわざとらしく俺の背中に激突し、俺を押し倒す形で二人揃って地面に倒れ込む。
運命の再会を装った、幼馴染特有のラッキースケベの強制発動である。
地面に這いつくばる俺の背中と後頭部には、サリアのDカップの豊かな双丘がこれでもかと押し付けられ、ふんわりとした茶髪から漂うシャンプーの香りと、甘いパンの匂いが鼻腔をくすぐる。
「もう、一肆のばか! どこ見て歩いてるの! ……でも、こうしてまた会えたんだから、特別に許してあげるっ」
背中に乗っかったまま、彼女は俺の耳元で嬉しそうに笑う。
俺は限界を超えた統計データアナリストの脳で独白を開始した。
行きたくもない飲み会や人間関係のノイズという社会的なバグプロセスが、幼馴染という強固で絶対的なパーソナルスペースの構築によって完全に上書きされている……!
このラッキースケベという強制的なフラグ回収により、対人関係のストレス値を示すパラメーターは完全にゼロへと棄却され、純度百パーセントの青春という名の報酬関数だけが算出されていく……!
「サリアの胸、すげぇ柔らかい……もう、面倒な人間関係なんて、本当にどうでもよくなってきた……」
「でしょでしょ! わたしがいれば一肆は無敵じゃん! ほら、パン食べる?」
お節介で声の大きい妄想幼馴染の強引さと、背中に密着するDカップの暴力的なまでの柔らかさに完全に自我を溶かされながら、俺は焼きたてパンの甘い匂いの中で賢者タイム気味に至福の時間とほのかに甘い食パンを噛み締めていた。
やはり、世界は丸いほうがいい……











