No.32 コロン:過剰警告の檻とAカップの気球旅行
未知の業務や新しいプロジェクトに直面した際の、失敗に対する過剰な警告は、人間の挑戦する意欲を根こそぎ奪い取っていく。
前世の俺は、少しでも前例のない道へ進もうとすれば、周囲からの「危険だ」「やめておけ」というエラー音に晒され、リスク回避のトラウマで一歩も動けなくなるキャッシュクリア不良を起こしていた。
しかし現在、俺はそんな前世のしがらみから遠く離れ、未知の森の奥深くを歩いていた。
先頭を行くのは、大きなリュックサックを背負い、ウサギの長い垂れ耳を揺らす兎獣人の地図製作者、コロンだ。
おでこに丸いゴーグルを乗せた彼女の胸元は、険しい探検の邪魔にならないよう極限まで軽量化された、Aカップのささやかな双丘である。
「見て見て一肆! この先の道、ボクの地図にも載ってない空白地帯だよっ! 一体何があるのかな?」
好奇心旺盛な彼女は、未知への恐怖など微塵も感じさせない無邪気な足取りで、ズンズンと未踏の地へ足を踏み入れていく。
その瞬間、空間が唐突にバグのように歪んだ。
空から無数のギザギザな魔物、ハザード・サインが降り注ぎ、けたたましいエラー音と共に俺たちの行く手を完全に塞いでしまったのだ。
見渡す限り「立入禁止」「危険」といった赤黒い警告色で塗りつぶされた、角張った迷宮の底。
前世の「失敗への恐怖」がフラッシュバックし、俺の足は地面に縫い付けられたように動かなくなる。
しかし、コロンは全く動じなかった。
「なんだこれ? ボクの地図にはこんなギザギザ載ってないよっ! 邪魔だなぁ」
彼女は警告のプレッシャーを一切無視して、好奇心のままに一番大きなハザード・サインによじ登り始めた。
未知への探求心の前では、いかなる警告も彼女の足枷にはならないらしい。
だが、警告を無視されたハザード・サインの群れが、防衛本能で激怒した。
標識たちは鋭利なノコギリ状に変形し、巨大なトゲ付きの檻となって俺たちを完全に閉じ込め、徐々に収縮して圧殺しようと迫ってくる。
恐怖で動けない俺を庇うように、コロンが小さなAカップの胸で標識を押し返そうとするが、硬いトゲに弾き飛ばされて尻餅をついてしまう。
「痛っ……でも、こんな壁にボクの冒険は止められないよっ!」
彼女が傷つきながらも前を向く姿を見て、俺の脳内にこびりついていたトラウマの呪縛が吹き飛んだ。
俺は足の震えを力に変えて立ち上がり、魂のスキルを発動した。
「万物円満!」
俺の『π=314』の力が、コロンの丸いエネルギーを百倍に増幅させる。
「もうっ、新しい景色が見えないじゃないか! そこをどくんだよっ!」
百倍のエネルギーを受けたコロンはおでこのゴーグルをスッと目に装着し、助走をつけて檻の要となっている巨大標識へ一直線に駆け出した。
そして、探検服に包まれたAカップの小柄な胸を突き出し、思い切り体当たりを敢行した。
──まんまる熱気球!
Aカップのささやかだが必要十分な弾力から放たれた強烈な衝撃波が、角張った警告マークたちに丸いエネルギーを注入していく。
鋭利だった刃の檻は、ポンッ!という間抜けな音を立てて、丸くてフワフワな巨大熱気球へと姿を変えてしまった。
熱気球の籠となった土台にふんわりと持ち上げられ、俺たちは警告の壁をあっさりと越えて空高くへと舞い上がる。
壁の向こう側、眼下に広がっていたのは、誰も知らない美しく澄み切った絶景の浮遊島だった。
「わぁ……すごい絶景! ここはボクたちの秘密のスポットに決定だよっ!」
コロンは目を輝かせながらリュックサックから道具を取り出し、気球の籠の中で手際よく温かいお茶会を始めた。
俺を籠の床に座らせると、コロンはその両足の間にちょこんと腰を下ろす。
Aカップのささやかな胸を持つ彼女の華奢な体だからこそ、俺の腕の中にすっぽりと収まり、彼女の小さな背中が俺の胸にぴったりとフィットする。
「えへへ、一肆と一緒に新しい景色が見られて、ボクすっごく嬉しいよっ!」
ウサギ耳のフワフワした毛先が俺の顎をくすぐり、背中越しに伝わる彼女の温かい鼓動と、淹れたての紅茶の香りが心を満たしていく。
俺は限界を超えた統計データアナリストの脳で独白を開始した。
未知への恐怖というリスク回避パラメーターが、彼女の純粋な好奇心という絶対的な報酬関数によって完全に上書きされている……!
この未踏破領域の開拓により、俺の自己肯定感のマップが無限に拡張し、失敗への過剰な警告システムは正常な探求心へと完全にアップデートされた……!
「コロンの特等席、すげぇ落ち着く……もう、新しいことに挑戦するのも、全然怖くないな……」
「うんっ! ボクがずっと一緒に地図を書いてあげるから、どこへだって行けるよっ!」
兎獣人の元気いっぱいの好奇心と、Aカップの華奢な体がもたらす背中合わせの密着感に完全に自我を溶かされながら、俺は美しい絶景の中で賢者タイム気味にお茶会の甘い時間を噛み締めていた。
やはり、世界は丸いほうがいい……











