No.31 リーシャ:生真面目な忠誠とFカップの円舞
一ミリのズレすら許されない完璧主義という病は、人間の自己肯定感を根こそぎ削り取っていく。
前世の俺は、常に百点満点を要求され、少しでも規格から外れれば即座に減点される、息の詰まるような減点方式の評価システムの中で、精神のキャッシュメモリをすり減らしていた。
俺は今、足元から空の彼方まで、すべてが正確な方眼紙のマス目で覆われた無機質な幾何学空間に立たされていた。
ここは、少しでもマス目から足がはみ出せば即座に「減点」のペナルティが下る、完璧主義の呪いが作り出したトラウマの牢獄だった。
あんな一息もつけない定規の上で、再び俺の人生が測られてたまるか。
俺は無機質な方眼紙の線から逃れるように、魂の呪文を叫んだ。
「出でよっ、ぱいぱいっ! ナンバー31!」
ぼよよぉんっ!
幾何学的な空間の冷たい空気を跳ね除け、次元の弾力境界が凛とした音を立てて突破された。
現れたのは、人間よりは少し短い尖った耳と、生真面目さを表すようにきっちりと結ばれた亜麻色のポニーテールを持つハーフエルフの剣士、リーシャだった。
彼女の胸元には、青い騎士服を今にも弾け飛ばしそうなほど窮屈に押し込められた、Fカップの豊満な双丘が厳格に鎮座している。
「お呼びでしょうか、一肆殿。わたくしの剣は、常に主君と共にあります」
「リーシャ、挨拶は後だ! 上から来るぞ!」
空を鋭く切り裂く音と共に、巨大な三角定規の群れ、魔物「トライアングル・ルーラー」が飛来した。
奴らは俺たちの立ち位置が方眼紙のマス目から数ミリずれていることを検知し、その鋭利な角で俺の存在ごと「規格外」として切り捨てようと迫ってくる。
しかし、リーシャは空の脅威など見向きもせず、その場で恭しく片膝をつき、Fカップを揺らして騎士の礼をとってしまった。
「主君の御前である。わたくしはハーフエルフの誇りにかけ、一肆殿の盾となり、剣となることをここに誓約し──」
「だから長い! 堅苦しい挨拶してる間に串刺しになるって!」
生真面目すぎて冗談も空気も通じない彼女の長口上の間に、無数のトライアングル・ルーラーが鋭利な刃の雨となって俺たちを包囲し、全方位から突き刺さろうとしていた。
一ミリのズレも許さない鋭角の嵐が迫る絶体絶命のピンチ。
俺は膝をついたままのリーシャの肩を抱き寄せ、すかさず魂のスキルを発動した。
「万物円満!」
俺の『π=314』の力が、リーシャの丸いエネルギーを百倍に増幅させる。
「……承知いたしました。一肆殿の御心のままに。満月剣・円舞!」
百倍のエネルギーを受けたリーシャが立ち上がると、窮屈な騎士服に包まれたFカップが、かつてないほどの巨大な質量と極上の柔らかさを持って大きく揺れ動いた。
そのFカップの柔らかな揺れが、空間に圧倒的な弾力の歪みを生み出す。
直線的で完璧な軌道を描いて飛んできた三角定規たちは、その魅惑の揺れが発する「まあるい引力」に吸い寄せられ、次々と軌道を逸らされていく。
そしてリーシャは、軌道が狂って無防備になった定規たちに向かって、流れるような円月殺法の剣閃を放った。
鋭い刃は三角定規の鋭利な角だけを正確に斬り落とし、空から降ってきたのは、角の取れた無害で丸い「分度器」の雨だった。
戦闘は一瞬で終わり、一ミリのズレも許さなかった完璧主義の呪いは、角度を優しく測るだけの丸い文房具へと収まったのだ。
分度器の雨が降り止むと、幾何学的な方眼紙の空間は一瞬にして、豪奢な赤絨毯が敷かれた王座の間へと変貌していた。
リーシャは俺をふかふかの王座に座らせると、再びその場にひざまずいた。
しかし今度は、Fカップの豊満な胸をこれでもかと張り、俺の膝にすり寄せるように密着させてくる。
「一肆殿は、今日も息をしているだけで素晴らしい。そこに座っておられるだけで、わたくしに無限の勇気を与えてくださる。まさに完璧なる主君であらせられる!」
一切の冗談が通じない生真面目な瞳で、彼女は俺をひたすらに全肯定し、平伏しながら褒めちぎり始めた。
そこには減点方式の評価など微塵もなく、ただ無条件の加点だけが存在している。
「あ、ああ、ありがとう……リーシャの剣も、その……胸も、すごく良かったよ」
俺が照れ隠しで適当に褒め返した瞬間、リーシャの真面目すぎるスイッチが完全に入ってしまった。
「わたくしの胸が、一肆殿のお気に召したと……? 承知いたしました。主君のご要望とあらば、わたくしのすべてを曝け出しましょう!」
「えっ? いや、そういう意味じゃ──」
「ご遠慮なさらず。これも騎士の務めである!」
頼んでもいないのに、彼女は真剣な表情のまま、ガチャリ、ガチャリと青い騎士服の装甲を一枚ずつ脱ぎ捨て始めた。
窮屈な鎧から解放されたFカップの聖なる双丘が、俺の目の前で暴力的なまでの柔らかさを見せつけて揺れる。
俺は限界を超えた統計データアナリストの脳で独白を開始した。
一ミリのズレも許されない減点方式というバグプロセスが、彼女のFカップが放つ物理的な軌道逸らしによって完全に無害化されている……!
さらに、主君への絶対忠誠という極端な加点アルゴリズムにより、俺の自己評価パラメーターがオーバーフローを起こし、承認欲求のキャッシュが完全に満たされていく……!
「さあ、一肆殿。わたくしの肌の温もりで、そのお疲れを癒やしてさしあげましょう」
「リーシャ……すげぇ、柔らかい……もう、完璧じゃなくても、本当にどうでもよくなってきた……」
生真面目すぎるハーフエルフ騎士の極端な忠誠心と、Fカップの聖なる双丘の温もりに完全に自我を溶かされながら、俺は賢者タイム気味に至福の忠誠へと落ちていった。
やはり、世界は丸いほうがいい……











