No.27 イルマ:Aカップの絶対安全圏
視界ゼロの濃霧に包まれた、トゲだらけの迷いの森。
どの方向に進んでも鋭いトゲが俺を傷つけ、「どっちに進んでも不正解だ」という森の囁きが、前世でキャリアの選択を迫られ、正解がわからずに立ち尽くしていたあの日の不安を呼び覚ます。
ここは、入った者の心の迷いを具現化し、決して出口を見つけさせないトラウマの牢獄だった。
あんな息の詰まるようなプレッシャーの中で、再び俺の未来が迷子にされてたまるか。
俺は索敵とナビゲートのプロフェッショナルを頼るため、魂の呪文を叫んで味方を呼び出した。
「出でよっ、ぱいぱいっ! ナンバー27!」
ぼよよぉん!
霧の立ち込める冷たい空気を震わせ、次元の弾力境界が突破される音が響いた。
現れたのは、褐色の肌に銀色のベリーショートヘア、無駄を削ぎ落としたボディラインにフィットする暗殺用スーツを纏ったダークエルフの凄腕狙撃手、イルマだった。
鋭い眼光を放つ彼女の胸元には、射撃の邪魔にならないよう極限までフラットに洗練された、Aカップのささやかな双丘が存在している。
「あんた、また迷子か。仕方ないな。私に任せておけ」
イルマは自信満々に前を歩き出し、俺の手を引いてズンズンと霧の中を進んでいく。
しかし、彼女は凄腕の狙撃手であるにもかかわらず、極度の方向音痴という致命的な欠点を持っていた。
彼女のポンコツなナビゲートに従って進んだ結果、俺たちは森の最深部へと迷い込んでしまった。
そこは、全方位を鋭い棘で指し示す角張った魔物、ニードル・コンパスたちの巨大な巣のど真ん中だった。
ギチチチッ!という不快な音と共に、無数のコンパスたちが一斉にこちらへ鋭利な針のミサイルの照準を合わせてくる。
自分のミスで俺を死地に巻き込んでしまったことに、イルマの鋭い表情に明らかな焦りが浮かぶ。
逃げ場のない全方位からの包囲網。
絶体絶命のトラップの中、俺は彼女を責めることなく、すかさず魂のスキルを発動した。
「万物円満!」
俺の『π=314』の力が、イルマの丸いエネルギーを百倍に増幅させる。
「スナイプ・マカロン!一発残らず撃ち落とす!」
百倍のエネルギーを受けたイルマは一瞬で冷静さを取り戻し、長大な狙撃銃の銃床をAカップの胸にピタリと固定した。
豊かな弾力に乏しいAカップだからこそ実現できる、一ミリのブレも許さない完璧な射撃姿勢。
彼女はスコープすら覗かず、周囲の気配と自らの胸の鼓動だけを頼りに、全方位へ向けて引き金を引いた。
Aカップの胸元から放たれた正確無比な丸い魔力弾の乱射は、迫り来る無数の鋭利な針のミサイルを空中で次々と撃ち落としていく。
そして、撃ち抜かれた針はすべて甘くて丸いマカロンへと変換され、バラバラと音を立てて周囲に降り注いだ。
戦闘は一瞬で、正解を強要する鋭い脅威は丸くて美味しい、ただのお菓子の山へと収まったのだ。
「……悪い。道は間違えたが、ここを絶対の安全圏にしてやったぞ」
イルマは照れ隠しのようにそっぽを向いてそう言うと、マカロンの山の中に手際よくテントを張り、俺を中に寝かせた。
そして自分はテントの外で一睡もせずに狙撃銃を構え、周囲を完璧な安全地帯として確保し続けてくれている。
Aカップの平坦な胸に銃を添える彼女の頼もしい背中と、マカロンの甘い匂い。
正解の道なんてわからなくても、今の場所が一番安全だという絶対的な安心感がそこにあった。
俺は限界を超えた統計データアナリストの脳で独白した。
最適解のルートを探索し続けるという強迫観念のアルゴリズムが、彼女のポンコツナビによって強制的に崩壊し、現在地の生存確率という局所的最適解が百パーセントへと完全に収束している……!
この絶対的な防衛線の構築により、未来への不安という名の誤差項はゼロに棄却され、今この瞬間の安息のみが有意水準を満たしている……!
「イルマの作ってくれた場所、すげぇ安心する……もう、無理に正解を探して進まなくても、本当にどうでもよくなってきた……」
「当然だ。あんたはそこで、何も考えずに寝ていればいい。近づく迷いは私がすべて撃ち落とす」
「やはり、世界は丸いほうがいい……」
凄腕狙撃手の不器用な優しさと、Aカップの胸が保証する絶対的な安全圏に完全に自我を溶かされながら、俺は賢者タイム気味に平和を噛み締めていた。











