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No.26 シャノン:Bカップのふんわりカウンター

時間泥棒の迷宮遺跡。

灰色の石壁がどこまでも続くその空間は、時間が凍りついたかのような不気味な静寂に包まれていた。

壁には無数の角張った石時計が掛けられ、チクタク、チクタクと規則正しくも暴力的な音を刻み続けている。


それは前世で俺を精神的に追い詰めた、終わりの見えないサービス残業と、退勤時間を過ぎても一向に減らないタスクの山を象徴する、息の詰まる労働時間のトラウマそのものだった。


あんな無限ループの牢獄で、再び俺の人生をすり減らされてたまるか。

俺は戦闘を避けてまずは精神的な休息をとるため、魂の呪文を叫んで味方を呼び出した。


「出でよっ、ぱいぱいっ! ナンバー26!」


ぼよよぉん!


遺跡の冷たい空気を震わせ、次元の弾力境界が突破される音が響いた。

現れたのは、亜麻色のお団子ヘアに少しのそばかすを浮かべ、働きやすさ重視の丈の短いエプロン姿を纏った、宿屋の看板娘シャノンだった。


挿絵(By みてみん)


彼女の胸元には、大きすぎず小さすぎない、親しみやすさと安心感を象徴するようなBカップの愛らしい双丘が実っている。


「お客様、こんな時間まで起きているなんて、お体に毒ですよ。今日はいっぱい頑張ったんですから、もう休んでいいんですよ」


シャノンは殺伐とした遺跡には全く似つかわしくない、愛嬌たっぷりの完璧な営業スマイルでそう告げた。

そして彼女は手際よく、遺跡の安全そうな小部屋の隅にふかふかのベッドを素早くセッティングしてくれた。


シーツの清潔な香りと、彼女のBカップが放つ控えめながらも確かな母性にホッと息を吐き、俺が安心してそのベッドに倒れ込もうとした、その瞬間だった。


ガコン、ギチチチッ!


安全だと思っていた小部屋の壁が突如として剥がれ落ち、偽装が解かれた。

壁の裏側に潜んでいたのは、ハサミのように鋭利な長針と短針を振りかざす角張った時計の魔物、スクエア・クロックの群れだった。


奴らはベッドを取り囲み、無防備な俺とシャノンを串刺しにしようと、無数の鋭い針を頭上から一斉に雨あられと降らせてきたのだ。

休息を逆手に取られた、回避不能の不意打ち。


俺の脳内のデータ分析プロセスが、生存確率の急激な低下とタスクの強制再開による精神崩壊を警告する。

寝込みを襲われた絶体絶命のピンチ。

俺はベッドに倒れ込んだ姿勢のまま、限界の精神力を振り絞って魂のスキルを発動した。


万物円満オール・ラウンド!」


俺の『π=314』の力が、シャノンの丸いエネルギーを百倍に増幅させる。


「お客様の睡眠を邪魔するダニは、わたしがしっかり叩き出しておきますね!」


百倍に増幅されたエネルギーを受けたシャノンは、営業スマイルを一切崩さないまま、枕元に置いてあった愛用のふとんたたきをスッと引き抜いた。


彼女はベッドから一歩も動かず、Bカップの胸をダイナミックに揺らしながら、目にも留まらぬ速さでふとんたたきの連撃を上空へ放つ。


繁忙期のふとんたたき。

パァン!パァン!という小気味よい音が遺跡に響き渡り、頭上から降り注ぐ鋭利な時計の針たちは、シャノンの強烈なスイングによってすべて空中で弾き返されていく。


そして、Bカップの適度な弾力から生み出される止めの一閃が炸裂した瞬間、鋭かったはずの針たちはポンッと音を立てて、ふとんから弾け飛んだ柔らかく無害な綿へと完全に姿を変えてしまった。


戦闘は一瞬で、終わらない残業の脅威は丸くてフワフワな、ただの寝具の一部へと収まったのだ。


「はい、お部屋の清掃完了です。さあ、温かいうちにご飯にしましょうね」


シャノンは何事もなかったかのようにふとんたたきを片付けると、ベッドに倒れ込んだ俺の頭を優しく撫で、どこからともなく取り出した温かいシチューをスプーンで俺の口へと運んできた。


あーん、と促されて口を開けると、家庭的で優しい味が広がり、冷え切っていた胃袋と心がじんわりと温まっていく。


至近距離で揺れるBカップの親しみやすい柔らかさと、彼女の決して崩れない安心感のある笑顔。

少しだけ頑張った自分へ贈る心の中の小さな勲章のような、ささやかで絶対的な癒やしがそこにあった。


俺は限界を超えた統計データアナリストの脳で独白した。


終わりの見えない無限ループタスクというバグプロセスが、彼女の物理的な連撃によって強制終了され、不意のエラーすらも最高のリラクゼーション空間のノイズキャンセリングへと完全にオーバーライドされている……!


この絶対的なチェックアウト処理により、俺の残業時間という変数はゼロへと収束し、睡眠の質を示す指標のみが理論値の天井を叩き出している……!


「シャノンの胸、すげぇ落ち着く……ご飯も美味しくて、もう時計の針なんて、本当にどうでもよくなってきた……」


「ふふっ、ゆっくり休んでくださいね。明日の朝まで、わたしがずっとそばにいますから」


「やはり、世界は丸いほうがいい……」


宿屋の看板娘の完璧なホスピタリティと、Bカップの温かい添い寝に完全に自我を溶かされながら、俺は賢者タイム気味に平和を噛み締めていた。

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