No.18 モカ:重力に逆らうFカップ
「僕の胸で、完全に思考をまあるく溶かしてしまうといい……。またいつでも呼ぶんだよ……」
ロッテの薬効の混浴で完全に癒やされた俺は、彼女が光の粒子となって消える前の、そんな理屈っぽくも情熱的な別れの言葉の余韻に浸りながら、荒廃した都市のハイウェイ跡へと足を踏み入れた。
しかし、そこは理のバグによって引き起こされた、一切の自由を奪う物理的な束縛の連鎖に支配されていた。
スパイク・バリケード。
道路のあちこちから、鋭利な棘を持つ無数の鉄条網と冷たい鋼鉄のバリケードが網の目のように交差して這いずり回り、俺の行く手と退路を完全に塞ごうと迫ってきたのだ。
俺の脳内のデータ分析プロセスが、個人の行動を極限まで制限する鋭角な拘束具の圧迫を警告する。
前世で俺を精神的に追い詰めた、無意味でがんじがらめな社則や、少しの自由も許さずに監視し続ける息の詰まる束縛のトラウマそのものだった。
あんな冷たくて痛い鎖に、俺の自由な歩みを再び縛り付けられてたまるか。
俺は迫り来る無数の鋭利な鉄条網に向かって、魂の呪文を叫んだ。
「出でよっ、ぱいぱいっ! ナンバー18!」
ぼよよぉん!
ハイウェイの淀んだ空気を震わせ、次元の弾力境界が突破される音が響いた。
けたたましいスキール音と共に現れたのは、派手なメイクに背中の小さなコウモリの羽を揺らす、ストリートファッションに身を包んだサキュバスのギャルだった。
露出度の高いキャミソールからは、重力という物理法則に完全に逆らう、暴力的なまでに元気なふくらみが今にもこぼれ落ちそうに弾んでいる。
Fカップ。
俺の脳内データが瞬時に弾き出す。
ただ大きいだけではない、生命力とスピード感に溢れ、本能を直接煽ってくる奇跡の爆乳だ。
「お呼ばれっしょ! ナンバー18、スピード狂のモカじゃん! あんなチクチクしてウザい金網、アタシがまあるくぶっ飛ばしてやるし!」
モカはノリ良く自ら名乗りを上げ、俺を縛り上げようと迫る鋭利な鉄条網の前に飛び出した。
無数の棘が全方位から襲いかかってくる中、俺はすかさずスキルを発動する。
「万物円満!」
俺の『π=314』の力が、モカの丸いエネルギーを百倍に増幅させる。
「さあ、ノリでいくっしょ!ラウンド・アクセル!」
モカが指を鳴らすと、百倍に増幅された丸いエネルギーの波がハイウェイを駆け抜けた。
波に触れた鋭利な鉄条網や鋼鉄のバリケードたちは、その鋭い角と棘を強制的に丸く巻き取られ、次々とタイヤの無い丸くて滑らかなホバーボードへと変換されていく。
戦闘は一瞬で、そしてギャルのノリとスピード感と共に丸くポップに収まったのだ。
「よっしゃ、道も開いたし乗り物もゲットじゃん! ってか一肆、あんな金網に囲まれてマジで顔色ヤバいっしょ! ほら、後ろ乗りな!」
モカは生成された巨大で丸いホバーボードの一つに飛び乗ると、俺の腕を強引に引いて自らの後ろへと乗せた。
絶叫タンデム。
それはただの相乗りではない、前世のトラウマで塞ぎ込んだ心を、Fカップの圧倒的な弾力を背中に密着させながらの爆走で強制的に開放し、一緒に大声で文句を叫んでストレスを完全に吹き飛ばす特技だ。
「しっかりアタシに掴まってないと、振り落とされるっしょー!」
モカが丸いホバーボードを急加速させると、荒廃したハイウェイをすさまじいスピードで滑空し始めた。
俺は慌てて彼女の細い腰に腕を回す。
強烈な向かい風の中、彼女は背中を俺の胸板にぐっと押し付けてきた。
その瞬間、キャミソール越しに伝わるFカップの凄まじい弾力とボリュームが、俺の胸に完全に密着する。
「あの鋭い鉄条網を見たら……前世のがんじがらめのルールや、少しの自由も許されなかった息苦しい毎日を思い出して、手足が縛られているような気分だったんだ」
俺が風の音に負けないように大声で吐露すると、モカは振り返りもせずに、俺以上にマジギレした大声を張り上げた。
「はぁ!? マジありえなくない!? 一肆をそんな理不尽なルールで縛るヤツとか、アタシが全員ぶっ飛ばしてやりたいっしょ! マジでサイテーじゃん!」
モカの香水の甘くてスパイシーな香りが、風に乗って俺の鼻腔をくすぐる。
「一肆も我慢しないで、ムカつくこと全部空に向かって叫んじゃいなよ! アタシが全部聞いててあげるから!」
「モカ……。ああ、そうだな……! ふざけるなあああ! 俺はお前らの奴隷じゃないんだよおおお!」
俺が前世の鬱憤を思い切り空に向かって怒鳴り散らすと、モカは「その調子っしょ!」とケラケラ笑い、さらに背中のFカップを強く押し付けてきた。
「いいじゃんいいじゃん! あんなチクチクした小せぇヤツらのことなんて、このスピードとアタシのまあるい胸で、全部後ろに置き去りにしてやるっしょ!」
風を切る爽快感と、俺の怒りを完全に肯定し、代わりにブチギレてくれる彼女のギャル特有の真っ直ぐな明るさ。
そして何より、密着したFカップの重力に逆らう極上の柔らかさが、俺の心にまとわりついていた鉄条網を綺麗さっぱり吹き飛ばしてくれた。
「モカの背中とこのスピード……最高すぎて、前世の細かい悩みなんてマジでどうでもよくなってきた……!」
「あははっ! 一肆もノリ良くなってきたじゃん! このままアタシの胸で、まあるくテンションぶち上げてくっしょー!」
「やはり、世界は丸いほうがいい……」
サキュバスギャルのスピード狂な慰めと、重力に逆らうFカップの極上のタンデムに完全に自我を溶かされながら、俺は賢者タイム気味に平和を噛み締めていた。











