表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
竜の娘  作者: 飛鳥弥生
89/136

ウィスキー・バランタイン

第八十九章~白衣ではない露草氏の巻


「美咲さん、少尉。そろそろ露草さんとの約束の時間ですよ?」

 露草氏とは二十二時頃にチェリー・ビーンズ合流と言う約束で、行きまでの時間を計算に入れるとギリギリだった。

「あ、もうそんな時間かあ。みんな、なんかドタバタして悪いけど、あたしらは行くよ」

「行くってどこにさ?」

 アヤちゃんが尋ねる。

「葵{あおい}ちゃんと飲む約束なのよ、バカ少尉の奢りでね。ちなみにお詫び代わりにここも奢るよ、バカが」

「アホの鳩羽よ。少しは自前で出すのが礼儀と言うものぞ? それとバカは余計だと何度も言わせるな」

 ならば、とは須賀恭介{すが・きょうすけ}くん。

「俺らは解散だな。明日は日曜日、もう少し夜更かしという手もあるが、今日は色々とあった。頭の整頓がてらとっとと寝るとしよう」

「んじゃ、みんなまたね。今度は物騒じゃない機会に会おうぜ」

「ばいばーい!」

 レイコちゃんが快活に挨拶して、その場はお開きとなった。

「時間はギリだな。連絡入れとこうかな、遅れるかもって」

 それは暗に僕への命令だったので従う。コールするとすぐに露草氏が出た。

「仕事な、案外早くに片付いたから、もう飲んどるで? 真実{まなみ}はまだやけど、来る言うてたわ」

 すぐ向かいますと返答してスマホを切ると、既に僕らだけになっていた。

「最近の高校生てば、愉快な連中なんだね」

 彼、彼女らは例外ですよ、とはあえて言わず、僕は頷いた。

 トワイライトを出ると予想外に快適な気温だった。湿度こそ高いが我慢できる範疇で、これならサンバーバンでも二人から文句は出ないだろう、程度に。

 喫茶店トワイライトのあるアクロスからチェリー・ビーンズまでは、時間帯もあってに二十分程度で辿り着いた。

 カラカラと小さく鳴るドアベルをくぐると、カウンターに白衣ではない露草氏がいた。相変わらずの露出度で目のやり場に困るが、それはさて置きである。

「やほー、葵ちゃん。来たよー」

「おう。お財布の到着やな」

「はっはー、露草よ。今宵の吾輩は何時もにもまして無敵故、存分に飲むが良い! 店主、吾輩には生を一つ」

「んじゃあたしはお任せでカクテルね? あんまりきつくない奴をお願い」

 僕はと言えば飲めないし飲まないので毎度のペプシである。下戸? いやいや、運転手ですので。

 マスターの辻{つじ}氏とは既に顔馴染な三人なので、軽口の会話が弾んでいた。無論そこで先日のアルマーニ男事件の話題も出るのだが、もう辻氏に動揺の様子は無かった。

「怪物が出たときは流石に驚きましたがね」

 笑顔で辻氏は言う。

「少尉さんのお陰でお客様に被害もありませんでしたし、店の損害は鳳{おおとり}という方が全額負担してくれましたから」

 流石、鳳氏と言ったところか。事後処理に抜かりなしである。

 そんな雑談を一時間ほど続けた頃に、天海真実{あまみ・まなみ}氏、桜桃{おうとう}学園理事の彼女が執事の月詠{つきよみ}氏と一緒に現れた。

 天海氏は開口一番「疲れたわ」とぼやいた。

「なんやねん、真実。どないした?」

「どうしたもこうしたも、こっちが聞きたいくらいよ。あの怪物がまた現れて喫茶店で暴れたとかナントカ……私の頭じゃあついていけないお話ばかりこうも立て続けで起きれば、愚痴の一つも出るわよ。辻さん、バランタインをお願いします」

 当事者であるミサキ氏はあえて天海氏の言葉を聞き流している風だったが、

「天海嬢よ。それはこのアホの鳩羽の仕業ぞ」

「バカ少尉! 黙ってろよ!」

 大道少尉が早々にばらしてしまった。

「鳳さんとか言う方から少し聞いてるけど、そうなの?」

 ウィスキー・バランタインを早速一杯空けて、天海氏は尋ねる。

「まあ、成り行きというか一種の正当防衛と言うか、っつーか本業か。話すと長くなるから撮影動画でも見ててよ」

 振られた僕は早速スマホをスタンバイし、天海氏に渡す。

「これって確かサッカー部のキャプテンよね? もう一人は覚えがないけれど……って、美咲! あなた未成年に銃を向けてるの?」

「いや、だからあの場合は未成年とかそう言う問題じゃないのよ。いいから最後まで見てよ」

 数分の動画を天海氏は繰り返しで見ているようだった。

「またあの怪物! これって佐久間くんの時に出たアレよね? どういうことなの?」

「そこは聞かれても分かんない。蘭子{らんこ}ちゃんにでも聞いてよ。あたしらはそれを退治して回ってるだけだからさ」

「まあええやん。解決したんやろ? 知らんけど」

 心底どうでもいいと言う風に露草氏が合いの手を入れた。

「知らんけどって、あなたの生徒でもあるんだから、真面目に聞きなさいよね」

「その二人はカウンセリング来た事あらへんで? せやからうちの生徒とちゃうねん」

「怠慢! 無責任! それでもあなた教師?」

「うちの本業はスクールカウンセリングや、センセとちゃうし」

「……あなたって昔からそんなよね? 知ってるけど。辻さん、お替りお願いします」

 やけ酒かな、とも思えたがそれが天海氏のペースらしかったので誰も何も言わない。

「あたしが言うのもあれだけど、生徒さんは無傷な筈だから真実ちゃん、安心してよ」

「それは鳳と言う方からも聞いてるわ。今更だけど美咲には感謝しとくべきなのかしら?」

「吾輩もな」

 生をジョッキであおりつつ、大道少尉が付け足した。

 前回会った時同様、上から下までAMAMIブランドで着飾っている天海氏は、どうやら酒でヒートアップするタイプらしい。

 露草氏とは正反対である。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ