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竜の娘  作者: 飛鳥弥生
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軍用アサルトが通じる相手ではないからのう

第八十八章~あのタフガイがタロン相手に遅れを取るとは思えないんだけど? の巻


 ミサキ氏がタロン二匹を討伐して三十分後、二十一時半頃に鳳蘭子{おおとり・らんこ}氏が喫茶店トワイライトにやって来た。乾源一{いぬい・げんいち}氏も一緒で、サングラスの黒服二人も同伴していた。

「早速で悪いのだけれど、君、映像は?」

 僕は、はい、とスマホを渡す。民間人の避難誘導の次に大事な僕の役割である。

「……やっぱりそうね。この四枚羽よ、ワルサー大尉の部隊を壊滅させたのは」

「壊滅とは穏やかではないな、鳳よ」

「そんでワルサー大尉は? あのタフガイがタロン相手に遅れを取るとは思えないんだけど?」

 ミサキ氏は怪我が痛むのか頭を押さえていた。

「幸い一命は取り留めたけれど、重症よ。今は研究所の病棟に入っているわ」

「だから言ったのだ。ワルサーにも儀礼処置済み火器を所持させよ、とな」

「まったくだよ」

 とは乾氏。

「ワルサーの野郎、ブレンガンまで持ち出したらしいが、相手はタロン、しかも強化型だ。殆ど相打ち状態だったらしい。部下を死なせたことを悔やんでいたよ」

「軍用アサルトが通じる相手ではないからのう、仕方あるまい」

「ワルサーもその部下もみんな傭兵だ。命を散らす覚悟はあっただろうが、しかし、やり切れんよ」

 マルボロ・マイルドを灰にしつつ乾氏は言う。

「乾さんの言う通りよ。そういう契約にはなっているけれど、間接的とは言え同胞を失ったのは失態だわ」

「蘭子ちゃんは良くやってると思うけどな、あたしは」

「そう言ってくれると少しは気が晴れるわ、美咲。でも失態には違いないのよ。民間人に犠牲が無かった、ここはワルサー大尉の功績だしね。私はEMRドップラー装置の精度を上げるようにするくらいで、戦線には立てないしね」

 ふむ、と頷いたのは以外にも須賀恭介{すが・きょうすけ}くんだった。

「鳳さんと言いましたか、俺は部外者で只の高校生だが事情は何となく分かりました。気休めかもしれませんけど、フォワードはバックアップいてこそだと思いますよ」

「あなたは?」

「失礼、須賀と言います。先刻、そちらの美咲さんに救われた一人ですよ」

 鳳氏は少し驚いた風だった。

「桜桃{おうとう}学園絡みでまたタロン? もう真実{まなみ}に合わせる顔がないわね。被害者、憑かれたのは生徒さん?」

「ええ。河野と藤原という、俺らの先輩にあたる、クズどもです。先日の佐久間準{さくま・じゅん}の同類ですよ」

「須賀くん、それはちょっと言いすぎじゃあ……」

 リカちゃんがそっと割って入る。

「そう。詳しいことは乾さん、任せます」

「おう。その為に出張ってきたんだ、仕事はこなすさ」

「後はひとまず店舗の補償ね。ちょっと席を外すから、後はよろしくね」

 火のついていないメンソールを咥えた、白衣の鳳氏はそう言うと店主らしきのところへと向かった。

「どれ、生徒手帳でも、これだな。河野学{かわの・まなぶ}と藤原武{ふじわら・たけし}、二人とも桜桃学園高等部三年か。ちなみに須賀くんと言ったかな? 二人はどういった奴なんだい?」

「それぞれ運動部に所属はしていますが、チンピラと言うのが的確ですね。なあ?」

 問われた久作くんは困った様子で返す。

「それはちょっと言いすぎだけど、まああまり素行が良いとは言えませんね。評判もあまり、です」

「タロン好みって訳か」

「と言うと?」

 尋ねたのは須賀くんだった。

「タロンと言うのは地獄から来たってことになっていてね、基本的に善良な奴や信仰心の強い奴には憑かないんだ。だからその逆の連中が餌食になるって寸法なのさ」

 乾氏の説明に、ほー、とアヤちゃんが感心していた。

「だったらあたしらは無縁だな? リカちゃん、レーコ」

「そう、なのかしら?」

「うん? そうなのねー」

 リカちゃんとレイコちゃんが微妙に応える。

「ところで美咲、その怪我は? タロンに一撃喰らったってか?」

「正確には憑依した学生くんからの一撃。特殊警棒でガツンってね」

「そりゃあ難儀な話だ。具合は?」

「出血はもう収まってるよ。いくら憑依されてたからって警棒くらいでどうこうなるほどヤワじゃあないよ」

「知ってるよ。ま、ご愁傷様ってところだな。きちんと手当を受けるんだぞ?」

「それよりもさ、堀田さんに一言伝えておいてよ。ダリルもベッセルも撃ち尽くしたってね。予備は山ほど貰ってるから急ぎじゃあないけどね」

「装備課の堀田か。俺は奴、苦手なんだが、まあ伝言は受けたよ……蘭子が戻って来たらしいから俺らはここいらで失敬するよ。少尉、今度こそバーボンに付き合えよな」

「うむ。乾は飲みすぎに注意せよ」

「俺は適量だって、まあいいさ。じゃあな、行くぞ、蘭子。天海の嬢ちゃんの所にも立ち寄るんだろう? 全く苦労の絶えない職場だよ」

 マルボロ・マイルドを携帯灰皿に放り込み、乾氏は鳳氏と黒服と共にトワイライトを後にした。

「全くせわしない連中ぞ」

「ワルサー大尉、気になるなあ」

 大道少尉とは別でミサキ氏は思案していた。

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