須賀恭介くん
第八十章~ダリルは左手用だからスイングが逆なのよの巻
コツコツとノック数回の後、返事を待たずに男子学生が保健室に入ってきた。
「露草先生、アヤくんがここに……む? 何やら大所帯だな。お邪魔だったかな?」
「おっす! 須賀恭介{すが・きょうすけ}! 一番乗りはあんたかぁ」
須賀恭介くんは軽く会釈をしてから露草氏に向かう。
「すみませんが今日もお邪魔させてもらいます。脇田の英語にはもう飽き飽きなのでね」
「別にえーけどや。そや、いちおう自己紹介しときい。知らん顔もおるやろ?」
須賀恭介くんは僕らをぐるりと見渡し、ミサキ氏で視線を止める。
「そちらの方がきっと初対面ですかね。俺……失敬、僕は須賀です。よろしく」
「これはご丁寧にどーも。あたしは鳩羽美咲。そっちの少尉と同類だけど腕前は五倍は上の私立探偵だよ」
「私立探偵、ですか。素行調査やら浮気調査やらでしたか」
「そーいうのもやらなくはないんだけど、本業にしてんのはタロン退治ね?」
須賀くんは、うーむ、と何やら唸る。
「奈々岡{ななおか}くんのデジタル新聞にあった、あれですか。確か先日の佐久間準{さくま・じゅん}錯乱事件で出てきたあれですね。そちらの少尉さんでしたか、が、退治していたと記憶していますが」
「バカ少尉もこう見えて退魔師の端くれだからね」
「ふおっ! 端くれとな! 吾輩は常に最前線が故――」
「うっさいよ。今は須賀くんと喋ってるんだから黙ってコーヒーでも飲んでろよ」
「それで、同類ということは、あなたもその退魔師とか言う副業を?」
「本当はタロン退治だけで食って行きたいんだけどね、今はそう、副業扱いかな? これ使って」
言いつつミサキ氏はアヤちゃんにも見せたダリル・リボルバーをホルスターから抜く。
「ほう、オールステンレスで銃身の下に大きなカウンターウェイト。六連発だがかなりの大口径、50口径はありそうですね。右スイングアウト? 変わった拳銃ですね」
「おお! 須賀くんは拳銃分かる奴かー! ダリルは左手用だからスイングが逆なのよ。リロードの効率重視でね」
「俺の知識は速川{はやかわ}の受け売りですよ。奴ならもっと詳しく語るでしょうよ。何せ自他共に認めるガンマニアですから。もっとも奴はオートマチックを好んでいますがね」
言葉の端々に知識が見え隠れする。須賀くんはアヤちゃんと同類のインテリらしかった。
「須賀、コーヒーでええか? 麦茶もあるけど?」
「どうも。ではブラックを頂き……いや、シロップを一つ追加で。どうにも糖分不足で頭が鈍ってしまっていて」
これで高等部一年か、僕はやや関心してしまった。
自分が高校生の頃はどうだったかな、と、無意味な回想を交えつつ。




