英語も数学もとっくに履修してるもん
第七十九章~アメリカで飛び級を重ねて既に大学を卒業していることの巻
「そんでさぁ、私立探偵? それが二人も何でここにいんのよ?」
「それはうちの科白やで、アヤ。まだ午後の授業中やろ?」
露草氏には受動喫煙という言葉はないらしく、キャメルを灰にしていく。
「英語と数学だからサボってきたのさ。多分、須賀恭介{すが・きょうすけ}か速川久作{はやかわ・きゅうさく}辺りも来ると思うよ。脇田と中迫{なかさこ}の授業、退屈だからねー」
「金髪のアヤちゃん、学生は真面目に授業受けとけよな」
ミサキ氏が言うがアヤちゃんはこう返す。
「だってあたし、英語も数学もとっくに履修してるもん。無駄な時間は断じて嫌だね」
「とっくに履修て、あんた、何者?」
ここは僕の出番だった。橘綾、アヤちゃんがアメリカで飛び級を重ねて既に大学を卒業していること。日本の高校には遊び目的で編入しただけ、などなどを簡単に説明する。
「へぇ、アヤちゃんはアメリカ人なのか」
「ちょっと違う! 国籍はアメリカだけど、日本人とのハーフなの。これは染めてるだけだしね」
言いつつ金髪ツインテールを指差す。
「ふーん。桜桃{おうとう}ってマヂでインテリの集まりなんだな。お姉さん、感心しちゃうよ」
「そんな訳でここはあたし達の遊び場なのよ」
「あたし、たち?」
「さっき言った須賀恭介と速川久作。二人も脇田の英語とか中迫の数学はほぼ履修の学力だから、そのうち来るだろうって、そういうことね」
リカちゃんとレイコちゃんは? と僕は尋ねた。
「ああ、リカちゃんは真面目っ子だからきちんと授業受けてる筈。レーコは多分寝てるね。ちなみに方城護{ほうじょう・まもる}は苦戦してると思うよ、ひひひ。あいつ、バスケ以外に能がないからね」
「……あのさ、人物が多すぎて混乱してるのってあたしだけ?」
ミサキ氏が困惑気味に聞いてくる。まあ分からなくはないが、覚えてしまえばどうということもない、と返す。
「人の名前覚えるの苦手なんだよ、あたしは」
それも良く分かる、というか知ってます、とは返さず思っただけ。




