おめーにゃ聞いてないよ!
第七十六章~先にサンバーバンのエアコン修理しようかな? の巻
チーズドリアを半分ほど平らげたミサキ氏が、そうだ、と提案する。
「ちょっと様子を見に行かない?」
「む? んぐ、ワルサーか?」
「いや、そっちじゃなくて葵{あおい}ちゃんの学校。事件からまだ一日なら結構動揺してるかもだし、ひょっとするとマスコミもいるかもだから、偵察がてらで」
「それでは野次馬ではないか、アホの鳩羽よ」
「だからちげーよ! 負傷者いたんでしょ? お見舞い兼ねてだよ。真実{まなみ}ちゃんにも話聞いときたいしさ」
「ワルサーの方も気にはなるが、乾がおるから心配なかろう。では! ラストスパアァート!」
三百グラムもあるヒレステーキの最後の一切れを口に放り込み、大道少尉はスープでそれを流し込んだ。
全く、見ているだけで胸やけがしてくる食べっぷりである。
「じゃあ、残りはテイクアウトってことで、早速行くか。ちなみに学園まではどれくらい?」
聞かれた僕は渋滞を計算して、四十五分ほど、と返す。
「結構あるね。また自販機で水分補給しとかないと。つーか、折角手付金入ったんだから、先にサンバーバンのエアコン修理しようかな?」
「あ、今日は土曜日ですよね? ディーラーは休みですよ?」
ちっ、とあからさまに舌打ちするミサキ氏。気持ちは良く分かりますが仕方ないんですってば。
「ひょっとして葵ちゃんとこも休みかな?」
「いえ、高等部は夏期講習らしいですから平気でしょう」
「んじゃあ、行くぜ、バカ少尉! て、まだ食ってるし!」
先にミサキ氏が席を立ち、板倉氏に「また来ますね」と挨拶をし、僕、大道少尉と続く。
空調の効いたビーンズの扉を開けると、解ってはいたが、熱風が吹き付けてきた。
「ぐっ! きっついなぁ! 葵ちゃんのところまで無事に行けるのか? これ」
「吾輩は全く平気だがな」
「おめーにゃ聞いてないよ!」
あれこれ言いつつ僕らはすっかり熱したサンバーバンに乗り込んだ。
目的地は私立桜桃学園、二度目なのでナビは不要だった。幹線道路に沿って進み、山に差し掛かるところを左折してしまえば、後は道なりで学園に到着という寸法である。
暑さ以外に懸念材料はない。最も、その暑さが最大の問題なのだが……。




