スペアリブ
第六十九章~オールステンレスのヘビーバレルの巻
「あのぉー、八木{やぎ}は平気なんでしょうか? 彼女、ずっとああですけど……」
男性店員、ネームプレートに板倉{いたくら}とある彼が僕らにおずおずと尋ねてきた。
「ん? ああ、そろそろ目覚めるんじゃね? 五十口径とは言え只の聖水弾頭だから、単に衝撃で気絶してるだけだし」
ミサキ氏がシュゼットナントカに付いてきたオレンジジュースを飲みつつ、簡単に説明する。
「何だか物凄い怪物が一瞬だけ見えた気がしたんですけども」
板倉氏の不安は最もだ。今度は僕が解説する。
「あれは僕らがタロンと呼んでいる怪物なんですけど、こちらの美咲さんはそのタロンを退治するのが仕事なんです。大きな拳銃、見えたでしょう? あれで退治するんですよ。なのでもう安心していいですから」
「これね?」
ミサキ氏がベッセル・リボルバーを抜いて板倉氏に見せる。オールステンレスのヘビーバレル・五十口径は素人が見ればぎょっとするもので、板倉氏もそんなリアクションだった。
「まあ、大きいったってただの拳銃よ? 対タロン用のカスタムだから大口径だけど、それ以外はまあありがちな銃だし。あ、弾丸だけは特注ね?」
板倉氏が、はぁ、と肯定だか感嘆だかの溜息を吐いたところでミサキ氏はベッセルをホルスターに戻した。
「良くは分かりませんが、ありがとうございました。今日はオーダー全て、店から無償で提供させてもらいますので、ごゆっくりしていってください」
「ふぉっ!」
板倉氏の科白にいち早く反応したのは大道少尉であった。
「ならば店員よ! 吾輩はこの、えーと、スペアリブ三百グラムを頂こう! 構わぬか?」
「あたしはプレーンのクレープね。ちょいと口直ししたかったのよ」
「僕は……ペプシのお代わりをお願いします」
午前からスペアリブ、想像するだけで胸やけがしてくるが、板倉氏は「少々お待ちを」と言い残して厨房へと掛けて行った。
人のことは言えないけど、それでも全く遠慮というものを知らない二人。
もう慣れてますけどね。




