券売機
第四十八章~海鮮丼は一杯、千二百円の巻
喧騒を後にした僕と大道少尉は少し歩いて、桜桃{おうとう}学園の食堂に辿り着いた。
予想外に広いのは中高一貫だからだろうか。清潔感に溢れていたが、十二時半、昼時だというのに生徒は誰もいなかった。
食事は券売機形式らしかったので、タッチパネルを押して僕はざるそばの食券を購入した。四五〇円とかなりリーズナブルな価格設定であった。
大道少尉はと言うと、うーむ、と唸って券売機を睨んでいた。
「海鮮丼! 吾輩はこれにするぞ! 吸い物と白菜の漬物、後は茶だな」
それぞれをポチポチと押して会計段階になったところで、大道少尉は「料理長よ!」と大声で叫んだ。
料理長かどうかは知らないが、エプロン姿の人が奥から出てきた。きっと給仕係だろう。
「理事長の天海からこれはおごりだと聞いておるが故、そのようにしてもらおう」
給仕係は「はあ」とだけ返し、券売機を開いてあれこれ弄{いじ}っていた。そして「どうぞ」と言われた直後、大道少尉は海鮮丼を三回連打した。ちなみに海鮮丼は一杯、千二百円。
「吸い物は一杯で良かろうし、漬物もだな」
残りを一つずつ押し、合計五枚の食券を持ってカウンターに渡す。と、待つまでもなく海鮮丼三杯と吸い物、漬物と熱いお茶が出てきた。
「ご苦労である! 少年、あそこの窓際が良かろう、先に行くぞ」
大道少尉の持っていった海鮮丼は店で出すのと遜色ないくらい美味しそうだった、が、三杯は無理なので、僕は続いて出てきたざるそばをトレイに乗せて、窓際席に向かった。
見ると大道少尉はもう二口目だった。
「ふむ……美味! わさびがいい具合に効いて魚介の旨みを引き立てておるのぅ。こちらの漬物は、うむ、こちらもいい具合であるな」
グルメレポートじゃああるまいし、いちいちうるさい方である。
と言いつつ僕の注文したざるそばも、いい具合にコシがあって旨いのだが。ねぎと海苔のトッピングもいい感じだった。
「少年よ、一口食うか? 旨いぞ、ここの板前は大した腕である」
学生食堂に板前がいるだろうか、と思いつつ、丼の一つを受け取って、ぱくり。
「ああ、これは新鮮で美味しいですね」
予想外の旨さに僕までグルメレポートのような感想を吐いてしまった。
その後はもくもくと、海鮮丼、ざるそばを食べる僕らだった。




