まだ朝だというのに蒸し暑い
第三十七章~五千円がまだ残ってるからの巻
「それでは私は勤務ですので」
アユム氏が言うと「えー」とミサキ氏。
「鍵かけてお払い箱?」
「え、ええ。いちおうここ、警察寮なので部外者は駄目なんですよ」
柔らかく前村氏は言う。
「また猛暑を点々としなきゃならないのかぁ」
とはミサキ氏。午前十時過ぎ、そろそろ外は蒸し暑くなる時間帯だ。サンバーバンの車内気温は五十度を超えるだろう。
「じゃあさ、勤務が終わったらまた遊びに来てもいいかな?」
「「ああいうこと」をしないのなら、いいですけど、夜になりますよ?」
言いつつアユム氏は制服を用意する。
「葉月巧{はづき・たくみ}ちゃんにもヨロシク伝えておいてねぇ」
前村氏と違って気が強そうな葉月氏なので、前村氏のようにはならないだろうな、ふと思った。
「じゃあここで一旦解散ね? お仕事頑張ってねぇ」
ミサキ氏が言い、僕も同じようなことを言う。
そして、部屋を追い出された。
まだ朝だというのに蒸し暑い。何とか今のうちに移動したいところだが、目的地が決まっていない。
さて、今日はどこで涼もうか。宛てはいまのところない。
三百万円を手に入れた大道少尉のところにでも行くか、はたまた、また鳳蘭子{おおとり・らんこ}氏の研究所に行くか、それくらいしか選択肢がない。
「葵{あおい}ちゃんから貰った五千円がまだ残ってるから、お茶にしようぜ」
ミサキ氏が提案する。悪くないな、そう思って頷く。
「決まりだな。んじゃ、アユムちゃん。また夜勤の時に遊ぼうねぇ」
「え! は、はい」
前村氏はあからさまに狼狽していた。当然ながら。
「それじゃあ、喫茶店にレッツゴー!」
妙なハイテンション、ミサキ氏はきっと寝ていないのだろう。




