上手く操作できなくて
第三十六章~整ったツインテールと薄い茶色のワンピースの巻
午前十時、アユム氏のスマホのアラームが鳴った。
「美咲さん、あの――」
うひうひとアユム氏を抱きしめているミサキ氏に僕は一瞬絶句し、しかし無理矢理続ける。顔をモニターに戻して。
「時間みたいですよ! 僕は外で待ってますから歩さんを解放してあげてくださいね!」
返事を待たずで僕は部屋を出た。
しばらくするとアユム氏がドアから顔を出した。明らかに高揚しているが、それはまあそうだろう。
「ど、どうぞ中へ。そこでは暑いでしょう? お茶出しますから」
ではでは、とワンピース姿のアユム氏に続いて部屋、警察寮に入る。
ミサキ氏は「堪能したぁ」と満面の笑みでアユム氏のベッドにあぐらをかいている。この人はどんな心臓の持ち主なのだろうか?
「麦茶でいいですか?」
と、アユム氏。はい、と返して頭から足先まで見るが、整ったツインテールと薄い茶色のワンピース。しかし、先ほどまで「あんな姿」だったのをどうしても思い出してしまう。
僕はそれを悟られないよう、『フォートギルド』を再開する。
「お前さぁ、こんなに可愛い女子がいて、ゲームかい?」
ミサキ氏が言うが、その可愛い女子を完全におもちゃにして遊んでいた人に言われたくない、とは思うだけで言わない。
お付き合いできるのならそれはもう、願ったり叶ったりだが、先に手を付けたのは他でもないミサキ氏である。
「どうぞ、麦茶です。そのゲーム、難しいでしょう?」
麦茶を運んできたアユム氏がモニターを見つつ言う。
「学生の間じゃあ流行ってますから、自然と上手になったんですよ。前村さんはこれ、やらないんですか?」
「ダウンロードはしたんですけど、上手く操作できなくて、ほら、そこ。撃ってくるでしょう? そういうのでパニックになってしまって」
語尾はクスリと小さな笑い。
いや、正直可愛いんですけど、この方。




